株式会社日立製作所は2026年9月24日、内閣府が主導する戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)第3期課題「サーキュラーエコノミーシステムの構築」において、再生材の利用拡大に向けた品質向上と品質評価装置の研究開発に取り組むと発表した。再生プラスチックの製造ラインで取得したセンサーデータや材料の分析データをAIで解析し、品質のばらつきや劣化の度合いを見極める技術を開発する。

SIPは、府省や分野の枠を超えて基礎研究から社会実装までを見据えた研究開発を推進する国家プロジェクトだ。同課題は2023年度から2027年度までの5年間で進められており、日立は後半2年間にあたる2026年度から取り組む。
欧州では2026年8月に発効したELV規則により、2036年9月以降に型式認証を受ける新型車に対し、プラスチックの25%以上を再生材とすることが義務付けられる。こうした需要に応えるには、自動車由来だけでなく、家電や容器包装など他分野由来の再生材も活用することが重要になる。
一方、再生プラスチックは、回収元や使用履歴、製造工程によって強度や流動性、劣化状態などの品質にばらつきが生じる。自動車や家電といった高品質用途で異なる業種由来の再生材を活用するには、品質や特性を把握したうえで用途に応じて使い分ける必要がある。しかし、従来主流だった抜き取り検査では、ロット全体の品質ばらつきを十分に把握することが難しかった。
研究開発は3つの柱で構成される。1つ目は、使用済みプラスチックを粒状原料(リペレット)に加工する工程で取得される製造条件やインラインセンサーデータを基に、品質のばらつきを予測する品質評価AIだ。インラインセンサーは生産工程を止めずに連続的に計測できるため、ロット内のばらつきを製造段階で網羅的に評価することをめざす。
2つ目は、オフラインで取得した材料分析データや特性評価データから劣化状態や品質変動の要因を解析する劣化診断AIで、診断結果を推論AIへフィードバックすることで品質予測モデルを継続的に高度化する。3つ目として、両AIの結果を活用し、品質や特性に基づいて再生材を分類するソーティングの仕組みを構築し、適材適所での利用を支援する。日立は、材料のデータとAIを組み合わせて特性を予測するマテリアルズ・インフォマティクスや、計測・分析技術、データ解析技術に加え、実世界で取得したデータから対象の状態を理解・予測するフィジカルAIの知見を生かすとした。
推進体制では、東北大学と物質・材料研究機構(NIMS)が、放射光施設などを使った詳しい分析や、さまざまな環境下での試験を行い、再生プラスチックがなぜ劣化するのか、なぜ品質にばらつきが出るのかを解き明かす役割を担う。日立は、これらの知見を生かした計測技術と、製造ラインを止めずに材料の状態を測るインライン計測システムの開発を担当する。そのうえで、NIMSと日立が共同で、トレーサー技術やデジタル解析基盤、フィジカルAIを活用し、再生材の品質を評価したり劣化の度合いを診断したりする技術を開発する。株式会社相田商会は材料や装置の提供を通じて実環境でのデータ取得と技術実証を行い、研究成果の有効性を検証する。
今後、日立は2026年度から2027年度にかけて品質評価AIの開発と精度検証を進め、2027年度以降は蓄積したデータを活用した劣化診断AIの開発に取り組む。まずは品質のばらつきが少ない工場内の製造工程由来の再生材を対象とし、将来的には使用済みプラスチック由来の再生材への適用拡大も検討する。インライン計測とAIを組み合わせた技術は、新材料の開発や量産立ち上げへの応用も期待されるという。
【プレスリリース】内閣府「戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)第3期課題」の「サーキュラーエコノミーシステムの構築」において、AI技術の研究開発を推進
【参照記事】戦略的イノベーション創造プログラム(SIP:エスアイピー)
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