環境省は6月10日、国連公海等生物多様性協定(BBNJ協定)の国内措置として、「公海等における環境影響評価の実施に関するガイドライン」を公表した。
このガイドラインは、これまで各国の管轄が及ばなかった公海や深海底における経済活動が、海洋環境に与える影響を事前に評価するための手続きを定めたもので、地球の共有財産(コモンズ)である海洋の生物多様性保全と持続可能な利用に向けた国内体制の第一歩となる。
BBNJ協定は、2023年6月に国連で採択された国際条約だ。国家管轄権外区域(Areas Beyond National Jurisdiction)、すなわち公海および深海底の生物多様性の保全と持続可能な利用を目的としており、その面積は地球の海の約3分の2を占める。同協定の柱の一つが、公海等での活動に先立ち、環境への潜在的な影響を評価する「環境影響評価(EIA)」の実施を義務付けている点だ。これは、資源開発などの経済活動がもたらす負の影響を未然に防ぎ、最小化するための予防的アプローチであり、持続可能な資源利用の根幹をなす。
今回公表されたガイドラインは、このBBNJ協定の規定を国内で実施するために、日本の事業者や関係行政機関が従うべき手続きを具体的に示したものだ。対象となるのは、実施に際して国の許可や認可、補助金交付などを要する活動や、特殊法人が業務として行う活動など、国がその実施可否を決定する活動だ。
ガイドラインでは、事業者が活動を計画した際、まず環境影響評価を実施する必要があるか否かを判断する「選別」の手続きから始まる。選別が必要と判断された場合、事業者は活動の概要や潜在的な影響に関する情報を所管官庁に提出。所管官庁は、活動が海洋環境に重大な変化をもたらす恐れがあるかなどを判断し、環境影響評価の要否を決定する。評価が必要となった場合は、評価の範囲を定める「範囲の選定」、科学的情報に基づく「評価の実施」、結果をまとめた「評価報告書」の作成、そして活動開始後の「監視および報告」といった一連のプロセスが定められている。
【プレスリリース】国連公海等生物多様性協定(BBNJ協定)の国内措置としての「公海等における環境影響評価の実施に関するガイドライン」の公表について
【関連資料】公海等における環境影響評価の実施に関するガイドライン[PDF 203KB](環境省より)
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