太陽石油と三井化学は9月30日、廃プラスチックのケミカルリサイクル由来製品の供給拡大に向けた協業の検討を開始したと発表した。三井化学の石油化学プラントでは処理が難しい廃プラスチック分解油の一部を、太陽石油の製油所設備で処理し、化学原料として三井化学に供給する新たなサプライチェーンの構築を目指す。

今回の協業検討では、廃プラスチックを熱分解して得られる油のうち、沸点が高く粘性が高い「重質分」の有効活用が核となる。通常、石油化学製品の基礎原料を製造するナフサクラッカーでは処理が難しいとされるこの重質分を、太陽石油の四国事業所(愛媛県今治市)にある製油所設備で処理する。その後、ケミカルリサイクル由来のナフサやプロピレンといった化学原料に転換し、三井化学に供給する計画だ。これにより、これまで利用が限られていた廃プラスチック原料の活用範囲を広げ、ケミカルリサイクル製品全体の供給量を増やすことを狙う。両社は今後、使用可能な廃プラスチック原料のさらなる拡大や、バイオマス製品の供給拡大についても協業の可能性を探る方針だ。

この連携は、石油精製業と総合化学メーカーという、石油化学コンビナートにおける異なる役割を担う両社の強みを生かしたものだ。太陽石油は2025年6月以降、四国事業所と本社でサプライチェーンにおける持続可能性を担保する国際認証「ISCC PLUS」を取得し、廃プラスチック分解油の受入設備建設を進めるなど、ケミカルリサイクルのインフラ整備を進めてきた。

一方、三井化学は2021年からバイオマス由来のナフサを、2024年3月からは廃プラスチック分解油を大阪工場(大阪府高石市)のナフサクラッカーに投入し、投入したバイオマスやリサイクル原料の量に応じて製品にその特性を割り当てる管理手法「マスバランス方式」を用いて、プラスチックや化学品の製造・販売をすでに行っている。今回の協業は、両社がそれぞれ培ってきた技術と設備を組み合わせることで、国内のケミカルリサイクルにおけるサプライチェーンをより強固で効率的なものにする取り組みだ。

【プレスリリース】太陽石油と三井化学、 ケミカルリサイクル製品の供給拡大に向けた協業検討を開始
【参照情報】廃プラスチック分解油等の受入設備建設について(2025年9月4日付 太陽石油株式会社プレスリリース)
【参照情報】日本初、バイオマスナフサを石油化学コンビナートのクラッカーに投入開始(2021年12月14日付 三井化学株式会社プレスリリース)
【参照情報】廃プラスチックの熱分解油を大阪工場クラッカーへ投入開始(2024年3月22日付 三井化学株式会社プレスリリース)
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