石坂産業株式会社とトヨタ紡織株式会社は3月27日、「建設系廃プラスチックの自動車部品への適用推進に関する協定」を締結したと発表した。これまで再資源化が困難とされ、熱回収(サーマルリサイクル)に回ることが多かった建設系廃プラスチックを高精度に選別し、高品質が求められる自動車部品へのマテリアルリサイクルを目指す。
この取り組みの背景には、EUを中心としたサーキュラーエコノミー関連規制の強化と、それに伴う日本の自動車業界全体の再生プラスチックの供給不足という課題がある。
欧州の規制強化が迫る「再生材利用の義務化」
現在、EUではPPWR(包装および包装廃棄物規則)においてプラスチック包装の再生材含有率の義務化が進められるなど、あらゆる産業で再生材の活用が「努力目標」から「義務」へと移行している。自動車業界においてもその波は押し寄せており、EUの「ELV(使用済自動車)規則案」は2026年3月現在、発効に向けた最終段階に入っている。
当初、欧州委員会は新車のプラスチックの25%を再生プラスチックとする案を提示していたが、その後の協議を経てこの数値は引き下げられ、段階的な目標値が設定される見通しとなった。しかし、数値の調整はあれど「再生プラスチックの使用が義務付けられる」という方向性に変わりはなく、グローバルで事業を展開するトヨタ紡織のような自動車部品メーカーにとって、高品質なリサイクル材の安定確保は市場競争力を左右する喫緊の課題となっている。
自業界由来の廃プラだけでは全く足りないという課題
こうした欧州の法制化の動きも踏まえ、日本の自動車業界(日本自動車工業会)は中長期ロードマップとして、新型乗用車における再生プラスチック採用率を「2035年に15%以上、2040年に20%」とする自主目標を掲げている。
しかし、この目標達成には供給量の確保という課題がある。業界の試算によれば、2040年時点の再生プラスチックの必要量(約22.8万トン)に対し、自動車業界内の廃車(自動車破砕残渣等)から回収できる量は遠く及ばず、約15万トンもの供給不足に陥るとされている。
加えて、欧州のELV規則案が提示した当初の「再生プラスチック25%」という目標においては、そのうち20%は廃車由来であることが求められているものの、それ以外は廃車由来ではなく他産業からの「オープンループ」を想定する必要がある。そのため、動脈産業(自動車メーカー等)側には、そもそもオープンループから再生材を安定供給できる静脈産業側の供給体制やパートナーシップをあらかじめ構築しておくことが強く求められているのだ。
この需給ギャップを埋め、グローバルでの競争力を維持するためには、自動車業界内でのクローズドループリサイクルだけでなく、他産業の廃棄物由来の再生材を大規模に調達する枠組みの構築が不可欠となっている。
「建設系廃プラ」活用が示す異業種・動静脈連携の可能性
今回の石坂産業とトヨタ紡織の協定は、まさにこの業界全体の課題である「他産業からの調達」と、製造業とリサイクル業が結びつく動静脈連携を体現する具体的なアクションである。
建設系廃プラスチックは多種多様な素材が混在しており、自動車部品のような高い品質基準を満たす形での再資源化は困難とされてきた。しかし、減量化・再資源化率98%という業界最高水準の技術を持つ石坂産業の高精度選別技術と、自動車の内外装部品を手掛けるトヨタ紡織の材料評価・製品化ノウハウを掛け合わせることで、この難題に挑む。
両社はすでに経済産業省の令和7年度「資源自律経済確立産官学連携加速化事業費(高度な再資源化が困難な領域における再生資源の用途拡大に向けた実証事業)」を通じた実証を終えており、今回の協定により、量産化・事業化に向けた技術および供給体制の検討を本格化させる。
今からオープンループを確立することが優位性を生む
高品質・低コスト・低カーボンフットプリント(CFP)を満たす再生プラスチックの安定供給網の確立は、日本の自動車産業が今後もグローバルで勝ち残るための生命線となる。
自業界の廃棄物だけでは賄いきれない再生プラスチック需要に対し、建設業界の廃棄物を自動車へ使用するオープンループ型の資源循環モデルを今から確立していくことが今後の優位性につながる。石坂産業とトヨタ紡織の取り組みは、サーキュラーエコノミーへの移行期において各産業が直面する再生材確保の課題を乗り越えるための、異業種連携の重要なモデルケースとして今後の展開が大きく注目される。
【プレスリリース】石坂産業とトヨタ紡織、建設系廃プラスチックの自動車部品への適用推進に向け協定を締結
【参照動画】「再生材活用促進に向けた自工会の取組みについて-2050年 長期ビジョンと中長期ロードマップ(含む 自主目標値)-」(YouTube)
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