持続可能な開発のための世界経済人会議(WBCSD)はこのほど、新イニシアチブ「Value Chain Carbon Transparency Pathfinder(バリューチェーン炭素透明性開拓組織)」を発足させた。WBCSDは、企業・認証策定機関・脱炭素専門家に同イニシアチブへの参加を呼びかけている。
2050年までにネットゼロを達成するには、まずすべての企業が炭素排出量を測定する必要があるとWBCSDはみている。世界的に企業はCO2排出量の削減を求められており、排出量を認識して追跡し、脱炭素化に向けて行動することが必須条件になりつつあるとしている。しかし、バリューチェーン全体で炭素やその他の温室効果ガス(GHG)排出量を測定することは、今のところほぼ不可能である。多くの企業が排出量の計算と削減に注力しているが、以下の3つの重大な課題があるとWBCSDは発表している。
- GHG排出量を計算して配分するための一貫した方法論の欠如
- GHG排出量に関する正確で詳細な製品固有データの欠如
- 組織間の排出量データ交換が限られている複雑なバリューチェーン
これらの課題に対処するべく、同イニシアチブは、正確で一貫性のある検証済みのバリューチェーン全体の製品レベルでの排出量データ共有を目指す。実現に向け、包括的方法論と技術インフラで気候変動対策を支援する構えだ。同イニシアチブの方法論は、既存の排出量報告基準に基づき、それを改善し、排出量データの一貫性・精密さ・統合性を高める。技術インフラは、企業レベルと業界レベルのソリューション間で一定の基準を設定し、すべての企業がネットゼロ達成に向けて、排出量データを大規模かつ安全に一貫性をもって交換できるようにするとしている。同イニシアチブは、パリ協定の目標達成に向け、炭素排出の透明性を必要な規模に拡大する鍵になるとWBCSDは認識している。WBCSDは、同イニシアチブを新しい分野に拡大し、炭素の透明性に取り組む業界横断的なエコシステムを構築する意向だ。
WBCSDのネットゼロ移行担当の上席課長であるJohn Revess氏は、「炭素の透明性は、企業・科学・技術のさまざまな専門家間の幅広い協働によってのみ達成できます。当イニシアチブは、すべての企業が炭素データを交換し、持続可能なカーボンニュートラル経済への移行加速を目指す幅広いエコシステムを構築します」と話した。
ユニリーバのサプライチェーン部門主幹であるMarc Engel氏は、「企業のGHG排出量の正確な測定と透明性のある報告は、企業戦略に統合される必要があります。ユニリーバは7万個の製品のCO2排出量公表に取り組んでいますが、これを実現するには業界で合意された方法論の確立が重要です。同イニシアチブに参加して、脱炭素化に貢献する基準を策定できることを嬉しく思います」と語った。
BASFのサステナビリティ責任者であるChristoph Jaekel氏は、「サステナビリティとデジタル化は、当社の企業戦略の中核要素です。カーボンフットプリントを計算することにより、当社製品の排出量に関する透明性をお客様に提供します。バリューチェーン全体に炭素の透明性をもたらすという同イニシアチブの使命は、最終消費財までのバリューチェーン全体の炭素排出量をお客様とともに削減することに役立ちます」と述べた。