世界資源研究所(WRI)は9月11日、世界のサーキュラーエコノミーへの進捗状況を分析した報告書を発表した。報告書は、現在の資源消費ペースが持続不可能であると警鐘を鳴らし、気候変動や生物多様性の損失といった地球規模の危機を回避するためには、2050年までに一人当たりの資源消費量を半減させる必要があると指摘している。

WRIは、環境と開発の接点にある重要課題について、客観的な情報と実用的な提案を提供するグローバルな研究機関だ。同報告書によると、世界経済は毎年約1000億トンの資源を消費しており、このままでは2060年までに資源採掘量が150%増加すると予測されている。

この過剰な資源採掘と加工は、世界の温室効果ガス排出量の55%以上を占め、気候変動、生物多様性の損失、汚染・廃棄物からなる「三重の地球的危機」を深刻化させる主な要因となっている。

報告書は、世界のサーキュラーエコノミーへの移行に関する9つの主要な発見事項を提示している。その中で、直接消費する資源に加え、生産過程で間接的に使用される資源も含めた「マテリアルフットプリント」は、世界平均で一人当たり年間12.6トンに達すると指摘。これを2050年までに5トン未満に削減する必要があるとしている。

また、資源消費には著しい不均衡が存在することも明らかになった。マテリアルフットプリントが最も高い国々に住む世界人口の上位25%が、世界の資源の52%を消費している一方で、最も低い国々の下位25%の消費量はわずか6%に留まる。国別の一人当たり消費量ではカナダが最も多く、米国、中国が続く。

サーキュラーエコノミー政策の先進地域とされるEUにおいても、2023年時点で生産プロセスに使用された材料のうち、リサイクル由来のものは12%に過ぎないという課題が浮き彫りになった。一方で、同報告書がOECDのデータを引用したところによると、加盟38カ国の都市ごみのリサイクル率は約35%と、徐々に増加傾向にある。しかし、EUが目標とする2030年までに60%のリサイクル率を達成するには、取り組みを10倍以上加速させる必要がある。

さらに、経済成長と資源利用の分離(デカップリング)が進んでいないことも問題視されている。1970年から2000年にかけては資源利用の効率化が進んだものの、2000年以降、世界の資源生産性(GDPあたりの資源消費量)はほぼ横ばいで、経済成長は主に資源消費量の増加によって達成されてきた。

報告書は、こうした現状を踏まえ、個人レベルでの消費削減、企業による耐久性や修理可能性を重視した製品設計、そして政府による循環型ビジネスを促進する政策導入など、社会全体での包括的なアプローチが不可欠だと結論付けている。

【プレスリリース】9 Key Findings on Global Progress Toward a Circular Economy
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