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エコシステム社会に必要な循環とコミュニティのあり方とは?~ESA設立記念シンポジウム開催 

エコシステム社会に必要な循環とコミュニティのあり方とは?~ESA設立記念シンポジウム開催
シンポジウム冒用で再撮するESA代表理事でアミタホールディングス代表取締役兼最高統合執行責任者の末次貴英氏(筆者撮影)

一般社団法人エコシステム社会機構(以下、ESA)はこのほど、設立記念シンポジウム「社会イノベーションの新メカニズム~ポストSDGsの答えはエコシステム社会デザイン~」を東京都内で開催した。当日は会場とオンラインを合わせて約500名が参加し、ESAが目指す「循環」と「共生」の両立に際して求められる考え方や産官学民連携のあり方などについて、研究者や企業・行政関係者らが講演・パネルディスカッションなどを行った。

今の4割の環境負荷で、我慢せずに暮らせる社会を作れるか?

ESAは、「循環」と「共生」をコンセプトに、人口減少・少子高齢化や新しい政策課題に直面する地方自治体と、新たなビジネスモデルの創出を目指す企業や研究者などの参画により、真の公民連携と社会的価値の創出を目指す団体として2024年4月に設立。エコシステム社会づくりを目指す地方自治体と企業などにとって今後重視すべき3つの課題領域(サーキュラーエコノミー、ネイチャーポジティブ、コミュニティ・ウェルビーイング)を設定した上で、それらに関わる理論構築や概念整理を行う「基礎研究部会」と、自治体を中心とした「地域イノベーション部会」、企業・団体を中心とした「未来プロジェクト部会」の3つの部会で連携しながら各地で実証プロジェクトの実装を目指す。

ESAの3つの機能(ESA提供)

シンポジウム前半では、法政大学名誉教授で江戸時代の生活文化を専門とする田中優子氏が、「未来のエコシステム社会へのヒントは、日本の足元にある~江戸4.0~」と題して基調講演を行った。この中で、田中氏は江戸時代を「技術と工夫の集中化、職人化の歴史で、欧州や中国から輸入したものは必ず日本化してきた」と評価。例えば、江戸時代に隆盛した木綿産業で使われた綿花の綿から種を落とす機械は日本発のもので、集めた種は絞って灯火の燃料に、さらに絞りカスは肥料として流通されていたという。田中氏は「江戸時代は全てが商品として取引され、最終的に土に入り、再び戻ってくるという完全循環型社会だった。エコシステム社会では、単に循環させるだけでなく、日本国内でいかに循環させるかということも鍵になる」と述べた。

また、ESAの基礎研究部会をけん引する東北大学名誉教授でOPaRL研究代表の石田秀輝氏は「生物多様性と窒素汚染、気候変動、マイクロプラスチックという4つの課題について2030年までに具体的な答えを出さないと文明崩壊にもつながりかねない」と危機感を示した。同氏は「肥大した人間活動を減らし、自然の修復能力以下で暮らせるようにしなければならない。日本で今の暮らしを維持するためには地球2.8個が必要な状態で、現在の4割の環境負荷で我慢することなく暮らせる社会を作ることが、次世代への私たちの責任だ」などとして、そのような暮らしができている鹿児島県・沖永良部島での研究成果などに基づきエコシステム社会に必要なビジネスや政策として打ち出したい、と意気込みを語った。

地域における共創型プロジェクトの推進に必要な3つの要素とは?

シンポジウム後半は「企業経営と自治体運営の新結合~社会イノベーションは構想から実証・実装フェーズへ~」と題して、循環と共生につながるビジネスや街づくりを推進し、すでにESAに加入している企業や自治体による取り組みが紹介された。

このうち、神戸市はプラスチック製の詰め替え容器の水平リサイクルを目指すプロジェクト「KOBE PLASTIC NEXT」をESA会員の民間企業と連携しながら進めている。同市環境局長の柏木和馬氏は「循環型社会を作る上で、市民の皆さんの協力は不可欠。これからも連携している事業者とともに回収拠点を拡大し、市民の皆さんの意識変容を促したい」などと話した。また、エコシステム社会を志向する街づくりを進めるために昨年8月にアミタと連携協定を締結した福岡県豊前市・総合政策課の郡司掛ひろみ氏は「これからの官民連携は、同じ目的のもとにお互いに参画できることだと思う」とコメント。ESA事務局長でアミタホールディングス執行役員の野崎伸一氏も「豊前市のもつ可能性を次世代に繋ぎ、域外の仲間との出会いの機会を作りたい」と応じた。

最後に、デジタル田園都市構想を推進するデジタル庁統括官の村上敬亮氏が、地域における共創型プロジェクトの推進に必要な3つの要素として▼デジタルを正しく使うこと▼自治体の横串を差すイニシアティブを作ること▼それに応える市民側のコミュニティを作ること――を挙げた。村上氏は「よく新規事業は自走までに3年と言われるが、地域での共創事業ではそれ以前にイニシアチブ形成とコミュニティ内の社会的調整にさらに3年かかる。最終的には事業化を目指していただいて良いが、時間がかかるので見守ってほしい」などと述べ、これまでの事業化プロセスとの違いに留意する必要性にも言及した。

ESAでは今後、企業・団体向けにオンライン活動説明会を9月から順次開催する。活動説明会への参加申し込みはこちら。

循環を切り口に多くの業種や地域が集うプラットフォームから、どのような日本初の循環経済、循環社会を先導する実践が生まれるか注目だ。

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