東京大学と清水建設の研究チームは、日本国内のカルシウム(Ca)の埋蔵量から使用、廃棄、循環利用に至るまでのライフサイクル全体を物質フロー分析(MFA)により定量化し、日本の都市が巨大なカルシウム資源の貯蔵庫となっている実態を明らかにした。研究成果は、コンクリートなど建設資材の循環利用を通じた脱炭素戦略の基盤となる可能性がある。

研究は、東京大学大学院工学系研究科の山下奈穂助教、丸山一平教授、村上進亮教授、鍋島憲司大学院生らと、清水建設の依田侑也主任研究員、矢野慧一研究員らによる共同研究として実施された。原料採取、カルシウム含有材料の生産・消費、都市構造物への蓄積、廃棄および循環利用までを対象に、2020年時点の日本におけるカルシウムのフローとストックを包括的に分析した。

その結果、日本国内には石灰石やドロマイトなど天然資源として約46億トンのカルシウムが埋蔵されている一方、建築物や道路など都市インフラには約55億トンのカルシウムが蓄積されていることが判明した。都市構造物に蓄積されたカルシウム量は天然資源の埋蔵量を上回っており、日本の都市そのものが巨大な資源貯蔵庫として機能していることが示された。

また、日本では年間約6,090万トンのカルシウムが社会に投入されており、そのうち約77%が建設分野で使用されていることも明らかになった。建設資材として使用されたカルシウムは建物やインフラとして長期間蓄積されるが、将来的にこれらの構造物が解体される際に回収・再利用することで、資源循環と脱炭素の両立につながる可能性がある。

カルシウムはセメント製造などで大量のCO₂排出に関わる元素でもある。研究では、石灰石の脱炭酸などCO₂排出量の多い工程に関連するカルシウムの流れを特定し、どのリサイクル技術がCO₂削減に効果的かを評価するための基盤を構築した。

今回の分析結果は、建築物から回収したカルシウムを再びセメント原料として利用する水平リサイクルや、コンクリートにCO₂を吸収させる技術の導入評価などに活用できるとされる。具体的には、高炉スラグからカルシウムを抽出するウェットカーボネーション、コンクリート中セメントペーストの再資源化、炭酸化コンクリートの混合材利用、完全骨材リサイクルなどの技術の可能性が示された。

研究チームは今後、得られたデータをもとに建設分野における資源循環と脱炭素を両立するシナリオの検討や関連技術の開発を進めるとしている。

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