味の素冷凍食品株式会社は3月18日、同社の環境への取り組みの進化について記者発表会を開催した。主力商品「ギョーザ」を製造する国内全4工場において、生産工程で生じた食品残渣を堆肥化し、再び原材料の栽培に活用する「資源循環スキーム」の導入を完了したことを発表した。また、農林水産省の「食料システム法」に基づく認定制度において、国内初・唯一となる4計画すべてでの認定を取得した。本記事では、同社による資源循環スキーム構築の裏側に迫る。

資源化から循環へ。泥臭いコミュニケーションで乗り越えた構築の壁

味の素グループは、「アミノサイエンスで人・社会・地球のWell-beingに貢献する」というパーパスを掲げ、事業活動を通じた環境負荷の低減と社会価値の創出を目指している。その象徴的な取り組みの一つが、味の素冷凍食品が展開する資源循環スキームの構築である。

同社は、自社工場で発生するキャベツの芯や成型不良品などを堆肥化し、パートナー農家に提供。その堆肥で栽培されたキャベツやニラを、再び「ギョーザ」の主要原材料として買い取るという、自社サプライチェーン内でのクローズドループを構築した。2023年に四国工場からスタートし、今年1月には国内全4工場への展開を完了している。

味の素冷凍食品_資源循環スキーム

一見スムーズに見えるこの取り組みだが、原材料部長の高橋政光氏は、その裏にあるネットワーク構築の難しさを語る。

「食品残渣を飼料や肥料にする(カスケード利用)だけであれば他社もやっていますが、それを自社の原材料として『循環』させるネットワーク作りは非常に困難です。その理由として、農家さんにとって新しい栽培方法への挑戦は高リスクであること、農地が離れていると輸送コストがかかり採算が合わないこと、賛同してくれる生産者とサプライチェーンを繋ぐのに膨大な時間と手間がかかることの3点が挙げられます」(高橋氏)

同社はこれらの本質的な課題を、現場での地道な連携と行政の巻き込みによって一つひとつクリアしてきた。第一に、輸送コストの課題に対しては、各工場の近隣で「残渣処理・堆肥化・栽培」が完結するよう、地域ごとのローカルな循環ネットワークを構築した。第二に、農家が抱える新しい堆肥導入のリスクに対しては、行政(宮崎県やえびの市など)と連携した「耕畜連携」の産地支援枠組みを活用。堆肥の成分分析や効果的な使用法の指導といった技術的サポートを導入し、生産者の不安を払拭した。

そして第三の課題である「手間と時間」については、同社の調達担当者が自ら生産地に足繁く通い、生育状況の確認だけでなく収穫作業を共に行うなど、現場に寄り添ったコミュニケーションを重ねた。さらに、循環原料を用いた商品でエリア限定パッケージの販売やイベント企画を行い、生産者のこだわりを消費者へ直接アピールするなど、単なる買い取りにとどまらない販売面での支援も実施している。

食料システム法に基づく4計画すべての認定を取得

こうした調達網の構築や物流の合理化といった取り組みが評価され、同社は農林水産省の「食料システム法」に基づく認定制度において、「生産者との安定的な取引関係の確立」「流通の合理化」「環境負荷の低減」「消費者に選ばれるための情報提供」という4計画すべての認定を取得した。4計画すべてでの認定は国内初にして唯一となる。

「認定取得は、社内で活動する社員の誇りやモチベーションに繋がります。また、対外的に発信することで、日本の食品産業の持続的な発展に寄与できると考えています」(戦略コミュニケーション部長 源田達章氏)

今後の展望

同社は今後、資源循環スキームの運用を継続するとともに、事業活動全般における環境負荷低減に向けたさらなる施策を推進していく。具体的には、国内工場におけるフリーザー用冷凍機の自然冷媒への転換を完了させたほか、新たな物流拠点の設置を通じた輸配送の最適化を進めている。

食品メーカーが一次産業と連携して環境課題に取り組む事例は増えているものの、多くは食品残渣の飼料化・肥料化といったカスケード利用(他用途への転用)にとどまっている。同社の取り組みは、自社工場の残渣を起点に地域の堆肥化業者や生産者、行政を巻き込み、主要製品の原材料として再び自社サプライチェーンに戻す「クローズドループ」を構築した点に特徴がある。

また、この仕組みを一過性の実証実験で終わらせず、主力商品を製造する国内の全4工場へとスケールアップさせた実績は、食品産業においてサーキュラーエコノミーを事業基盤として社会実装していく上での具体的なモデルケースといえる。

【参照サイト】味の素冷凍食品株式会社