東急電鉄株式会社と全国5社で構成する企業グループの古材日和グループは2023年11月、池上線池上駅の木造旧駅舎で使用していた古材を販売する実証実験を開始する。

東急線の駅改修工事などで発生する古材の循環を目指す。

2018年春から、東急電鉄は池上線池上駅改良および駅ビル開発(以下、池上駅改良)で確保した古材を駅と沿線で活用するプロジェクト「みんなのえきもくプロジェクト」を展開している。木造駅の記憶を未来に継承し、工事に伴う環境負荷低減(廃材処理時のCO2削減)に貢献することが目的だ。加えて、木材価格は近年高騰しており、古材は「環境配慮・資源の有効活用」という点で注目を集めていると東急電鉄はみている。

池上駅の木造旧駅舎(1959年当時)

実証では、国産古材を収集・加工・販売する古材日和グループの知見と技術を活用し、池上駅改良で確保した古材を古材日和グループの工場で駅舎の塗装や風合いを残した商品として加工し、販売する。商品名は「ステーションウッド」で、2023年11月から2024年10月まで、古材日和グループ東京ショールーム兼ショップ・古材日和グループ全国各店・古材日和グループ販売サイトで販売予定だ。

池上駅改良で確保した古材約40%の再流通が実証によって可能となり、「みんなのえきもくプロジェクト」などの活動と合わせて、池上駅改良で確保したすべての古材を循環できるとしている。実証では、古材流通の可能性と環境負荷低減効果も検証する。

加工前の旧池上駅駅舎の古材。当時の駅舎の塗装や釘などが残っている

建設業界は多くの天然資源を必要とする。建設資材の生産は世界の排出量の約11%を占めており、大きな環境負荷が指摘されている。建設廃棄物のリユースおよび効率的利用に向けて、現在さまざまな取り組みが進められている。

【プレスリリース】東急線の駅改修工事で発生した古材の再循環に関する実証実験を開始~歴史と想いが詰まった木造旧駅舎の古材「ステーションウッド」の販売を開始します~
【関連記事】米ボルダー市、解体した病院から回収した建設資材94%をリユース・リサイクル
【関連記事】ヘルシンキ市、建設廃棄物の効率的利用プロジェクトを開始。共有デジタルプラットフォームを使用
【関連記事】建設業界、2035年までに原材料使用量3割削減可能。英グリーン・アライアンス報告書
【関連記事】建材見本マーケットプレイス「Material Bank® Japan」、建材メーカー60社と運用実証開始
【関連記事】欧州環境機関、建設分野の気候変動緩和のための改修10戦略を発表
*冒頭の画像は、「ステーションウッド」から製作した天板。記事中の画像の出典:東急電鉄株式会社、古材日和グループ