神鋼商事株式会社と田口金属株式会社は6月13日、非鉄金属スクラップの高度選別リサイクル事業を行う合弁会社の設立検討について基本合意したと発表した。

これまで活用が難しかった廃自動車や廃家電由来の低品位スクラップから、付加価値の高い展伸材を回収する事業を目指す。合弁会社の設立は2026年4月1日を予定している。

今回の取り組みは、神鋼商事が2024年5月に発表した「中期経営計画 2026」におけるサステナビリティを軸とした新規事業推進の一環だ。2050年のカーボンニュートラル実現に向け、企業にはScope3を含むサプライチェーン全体でのCO2排出量削減が求められている。

特に、自動車や建材などに使用されるアルミニウムを製造する軽圧メーカーでは、バージン材に比べて製造時のCO2排出量が少ない再生原料、すなわち低炭素アルミニウム原料への需要が急速に高まっている。

しかし、アルミニウムのリサイクルには構造的な課題があった。従来、国内で発生するアルミニウムスクラップのリサイクルは、不純物の許容範囲が広い鋳物用合金へのダウングレードが主流だった。品質要求の高い展伸材として再生するには高精度な選別が必要となり、技術面とコスト面でのハードルから、飲料缶などを除き事業化は困難とされてきた。

また、高品質なアルミニウムスクラップの発生量自体が限られていることも、供給のボトルネックとなっていた。

こうした課題に対し、両社はこれまで十分に活用されてこなかった低品位のPCR(Post-Consumer Recycled)スクラップに着目。廃自動車や家電製品などから発生するこれらのスクラップを原料とし、高度な選別技術によって展伸材合金として再利用可能なレベルまで品質を高める事業への参入を目指す。これは、資源の有効活用と脱炭素社会の実現に向けた重要な一手となる。

本件は、1970年創業の金属リサイクル企業である田口金属をパートナーとすることで実現を目指す。田口金属が持つ集荷力と選別ノウハウに、神鋼商事が培ってきた資源循環事業の知見を融合させ、単独では参入が困難な新市場への進出を図る。

合弁会社という形態をとることで、変化の激しい市場環境においても迅速な意思決定を可能にし、事業拡大を加速させる狙いだ。将来的には、アルミニウムにとどまらず、レアメタルの再資源化にも取り組むとしている。

【プレスリリース】田口金属株式会社との合弁会社設立検討の基本合意について([PDF]166.68 KB)
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