BlueRebirth協議会は6月30日、使用済み自動車から取り出した素材を再び新車の製造に利用する「Car to Car」の実現を目指し、設立された。発起人はデンソー、東レ、野村総合研究所、本田技研工業、マテック、リバーの6社で、資源を加工して製品を生産する「動脈産業」と、使用済み製品を回収・再生する「静脈産業」が融合した新たなバリューチェーンの構築を目的とする。

近年、自動車産業では再生材の利用拡大が急務となっているが、従来の世界的な主流である、使用済み自動車(ELV)を破砕した後に材料を選別する手法では、不純物が混じりやすく高純度の再生原料を確保することが困難だった。また、自動車メーカーが求める高い品質基準と十分な供給量を満たす再生材を安定的に供給するための、動脈産業と静脈産業の連携も十分ではなかった。加えて、自動車リサイクル業界では、人手不足の解消に向けた自動化やデジタル化の推進も課題となっている。

これらの課題に対し、同協議会はロボットやAI技術を駆使して解体・選別を自動で行う「自動精緻解体」を中核技術と位置付ける。この技術は、変形した部品に対しても最適な解体経路を自律的に判断できる高度なシステムで、従来の手法では難しかった再生材の品質と量の確保を可能にし、同時にリサイクル現場の人手不足解消にも貢献する。

さらに、生成された再生原料の素性や環境負荷といった情報をデジタルプラットフォーム上に記録し、動静脈産業間で共有する。これにより、トレーサビリティが確保された高い信頼性を持つ再生材の安定供給体制を構築する計画だ。

日本の自動車リサイクルは、自動車リサイクル法に基づき世界でも高いリサイクル率を達成している。しかし、その多くは鉄などの金属資源の回収が中心であり、プラスチックなどを含む解体後の残渣(ASR: Automobile Shredder Residue)の高度利用や、自動車部品に再び利用する水平リサイクルは限定的だった。欧州ではELV指令により再生材利用率の目標が設定されるなど、資源循環は国際的な潮流となっており、今回の協議会設立はこうした背景に対応する動きでもある。

協議会は、2035年に向けて自動車リサイクル産業を、資源循環型の新たなバリューチェーンを担う「再生原料製造業」へと進化させることを目指す。今後は参画企業や研究機関と共に技術開発や実証実験を進め、関係各所への提言も行っていく。協議会の会長にはデンソーの武内裕嗣CTO・CDO、副会長にはリバーの松岡直人代表取締役社長が就任した。幹事会には発起人6社に加えトヨタ自動車も参画し、設立時点での構成員は約30社にのぼる。

【プレスリリース】自動車産業における再生材利用の拡大を目指し、BlueRebirth協議会を設立
【関連サイト】BlueRebirth協議会
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