経済産業省 産業構造審議会 イノベーション・環境分科会 資源循環経済小委員会 自動車リサイクルワーキンググループは9月5日、第60回会合を開催し、自動車リサイクル制度の施行状況の評価と今後の検討に向けた主な論点案を提示した。また、自動車リサイクル高度化財団や日産自動車株式会社によるリサイクル料金の余剰部分を活用した事業、および各業界の自主取り組みの進捗状況が報告された。

今回の会合では、自動車リサイクル制度の施行状況の評価・検討に関する報告書のフォローアップ状況が確認された。これは、自動車リサイクル法の施行から一定期間が経過し、制度の持続可能な運用とサーキュラーエコノミーへの貢献強化が求められている背景がある。提示された論点案は、今後の制度改善に向けた議論の基礎となるものだ。

【自動車リサイクル法施行20年目における評価・検討の主な論点】

自動車リサイクル法の施行から20年が経過し、法制定時の目標は概ね達成されていると評価される一方で、更なる制度の安定化、資源循環の推進、カーボンニュートラルへの対応、電動化の推進、車の使い方の変革といった環境変化への対応が必要とされており、以下の10項目が論点として提示された。

1. 制度の安定化・効率化

① 使用済自動車にかかる動向把握(オートオークション等における解体業者の取引動向含む):
新車販売の減少や円安による中古車輸出増を背景に、使用済自動車の引取台数が減少傾向にあり、解体・破砕業界にとって使用済自動車の入手が課題となっている。また、廃車ガラの輸出増加に伴い、法令違反が疑われるケースも存在するため、外国人事業者の国内市場参入動向や中古車・廃車ガラの輸出動向、法令違反が疑われる不適正な輸出状況、解体業者の仕入れ先であるオートオークションの取引実態等の把握・分析と、関係団体等との連携による対策検討が必要。

② 不適正な解体業者等の実態把握と対応の検討:
自治体による登録・許可業者への指導のうち、解体業者への指導件数が突出して多く、不適正なヤードでの無許可解体や部品の不適正保管が問題となっている。また、自動車リサイクルシステム(JARS)上の移動報告ミス・遅延も発生しており、解体業者の操業実態把握、自治体による指導・監督強化、廃棄物処理法と同様の許可基準に知識・技能要件を設ける等の規律強化が検討課題。

③ リサイクル料金の適切な運用と検証:
使用済自動車が海外に輸出される場合、リサイクル料金の取戻しができる仕組みがあるが、中古車輸出時のリサイクル料金の返還や利息の取扱いの再検討が意見として挙がっている。預託制度の法的性格を踏まえ、全般的な見直しを検討する際に合わせて検討すべき。

④ 不法投棄・不適正保管車両及び被災車両の適正処理:
法施行当初から約98%減少しているものの、近年約5,000台で横ばい傾向にある。更なる減少のため効果的な対応策の検討が必要。自然災害による被災車両の処理については、資源価値が低いことから所有者による撤去・処理が進まないおそれがあり、状況に応じた適切な対応が求められる。

⑤ 情報システムの効率的な活用:

自動車リサイクル促進センター(JARC)のJARSは、自動車リサイクルに関する情報を管理・運営しており、2026年1月に稼働予定の「システム大改造」を進めている。新機能を活用し、制度の円滑な運営、高度化、課題把握のための実態把握や分析を促進するため、蓄積された情報の有益な利活用を検討する必要がある。

2. 国内資源循環の推進

⑥ 自動車リサイクルの高度化:
ASRの再資源化率は近年95%以上で推移し、目標値70%を安定的に達成している。しかし、熱回収が約70%を占め、マテリアルリサイクルは約30%程度、プラスチックのマテリアルリサイクル率は1.5%(ASR中の硬質プラスチック換算で約4%)に留まっている。循環経済への移行に向け、解体・破砕段階でのプラスチック・ガラスの回収強化やASRリサイクルの高度化をさらに強化すべき。

⑦ 再生プラスチックの流通量拡大:
ASR削減と再資源化高度化のため、2026年4月より「資源回収インセンティブ制度」を開始予定。本制度は、解体業者等が使用済自動車からプラスチック・ガラスを回収した場合、ASR減量により捻出されるリサイクル料金を原資としたインセンティブを支払うもの。各地域の地理的特性や産業集積状況を踏まえ、国と関係団体が連携し、地域レベルでの関連事業者によるコンソーシアム形成を促す取組を推進する必要がある。

⑧ リユース可能な部品の流通促進:
循環型社会形成推進基本法に基づき、自動車リサイクル前にリデュースやリユースが推進されている。部品のリユースは解体業者で取り組まれているが、更なる促進のためには、リユース・リビルド部品の品質等の情報を利用者が入手しやすい環境整備が必要。また、易解体性・易リサイクル性を向上する環境配慮設計による回収拡大も重要。使用済車載用蓄電池についても、安全な使用を前提にリユース拡大が望ましい。

3. 変化への対応と発展的要素

⑨ 使用済自動車由来の車載用蓄電池の再資源化の推進:
使用済自動車の車載用蓄電池は解体業者に回収義務があり、自再協の共同回収スキームにより処理・再資源化されているが、電動車販売量が少ないため回収量は少量に留まる。事故車における発火リスクや、共同回収スキームに入っていない自動車製造業者製の電動車における解体業者の高額な費用負担が課題。2040年以降に見込まれる使用済電動車の本格的な発生や国内での再資源化等への対応を検討する必要があり、回収・運搬を含めた処理の安全性確保、リサイクル素材の再資源化の現状や見通しを踏まえ、関係団体と連携の上で今後の対応を検討すべき。

⑩ CN・3Rの高度化:
自動車リサイクルにおけるGHG排出量削減のため、環境省は2022~2024年度に「自動車リサイクルのカーボンニュートラル及び3Rの推進・質の向上に向けた検討会」を開催。GHG排出量を工程ごとに試算し、削減策を整理した。今後、CNに向けた関係者の着実な取組の実施が求められる。電動化の進展や使い方の変革により、LiBやセンサー等の電子部品、CFRP等の新しい部品や素材、ベースメタル・レアメタルのリサイクルが円滑に行われるよう、国内外のリサイクルの実態把握と効果的なリサイクルに向けた検討が必要。

報告された自主取り組みには、重金属4物質の削減、商用車架装物リサイクル、二輪車リサイクル、輸入車の重金属対応、使用済鉛蓄電池の回収・リサイクル、廃発炎筒処理システム、タイヤリサイクルなどが含まれる。これらの取り組みは、自動車産業全体での資源循環を促進し、環境負荷を低減するための重要な要素である。また、令和6年度の各自動車メーカー等のリサイクル率および収支の状況も報告され、制度の運用状況が具体的に示された。

【参照記事】第60回 産業構造審議会 イノベーション・環境分科会 資源循環経済小委員会 自動車リサイクルワーキンググループ
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