東レ、日東製網、舘浦漁業協同組合はこのほど、循環型社会の実現と海洋プラスチック問題の解決を目指し、「漁網to漁網 ポリエステルリサイクル」の共創・協働を開始した。

今回の取り組みでは、漁網製造時に発生する工程くずを原料の一部に使用したポリエステル原糸を東レが開発した。その原糸を用いて日東製網が漁網を製造し、舘浦漁協が経営する大型定置網漁業にて試験的に導入する。これにより、ポリエステル漁網の水平リサイクルによる循環型社会の実現を目指す。

海洋プラスチック問題が世界的な社会課題となるなか、漁業で使用される網やロープなどの漁具も環境配慮型素材・製品への切り替えが検討されている。ナイロン製漁網ではリサイクルの取り組みが進み、漁業への導入が始まっているが、ポリエステル製漁網のリサイクルは技術的に困難とされてきた。従来、漁網製造時の工程くずは産業廃棄物として処理されていたが、日東製網は糸くずおよび網くずを材質ごとに分別し、事業場から排出される産業廃棄物のリサイクルを拡大してきた。

東レは、日東製網から提供された工程くずを独自の技術によってリサイクルしたポリエステル樹脂を原料の一部に使用しながらも、バージン材料100%と遜色ない物性の漁網用原糸を開発した。この原糸を用いることで、従来の漁網と同等の品質を実現した「漁網to漁網 ポリエステルリサイクル」に成功し、この革新的な漁網は舘浦漁協が経営する大型定置網漁業に試験導入されることになった。

今後、「漁網to漁網 ポリエステルリサイクル」で製造された漁網の市場適合性や妥当性確認は、試験操業の結果を検証し、適宜適用範囲を見直した上で、2026年2月からの社会実装化(販売開始)を予定している。また、漁網の使用範囲および割合拡大に向けた実用化検討を継続する。東レと日東製網は、工程くずなどのプレコンシューマ材料から、使用済み製品などのポストコンシューマ材料を原料とする革新的な原糸と漁網の開発・製造を目指し、今後も共創・協業を進める方針だ。

東レグループは、「東レグループ サステナビリティ・ビジョン」を通じて、「資源が持続可能な形で管理される世界」の実現を目指している。今回の取り組みは、海洋プラスチック問題の解決や環境負荷低減を目的に、漁網製造時に発生する工程くずを循環資源として活用するもので、今後も持続可能な循環型社会や未来の海洋環境のために、革新的な技術で挑戦を続け、新たな価値を創造し続けるとしている。

日東製網は、廃棄物ゼロエミッション(リデュース)の推進に加え、CO₂排出量の削減にも貢献するものであり、漁網製造工程において発生するプレコンシューマ材料(工程端材)を循環資源として有効活用することで、持続可能な循環型社会の実現を目指すものだ。従来はナイロン素材を中心に再資源化を行ってきたが、今回新たにポリエステル素材にも対象を拡大し、より多様な製品への展開が可能になった。本リサイクル漁網は、定置網にて実際に使用されており、現場での有効性・実用性についても確認が進んでいる。漁網として使用される前のプレコンシューマ材料にとどまらず、漁業現場で使用された後のポストコンシューマ材料(使用済み製品など)まで対象を拡大し、「漁網to漁網」のリサイクル社会システムの構築を目指して、引き続き取り組みを推進する。同社は、カーボンニュートラル社会の実現と、深刻化する海洋プラスチック問題の解決に向けて、今後も漁業現場との連携を強化しながら、環境負荷の低減と資源循環の促進に取り組むとしている。

舘浦漁業協同組合の鴨川周二代表組合理事は、雨が降った後に海に出ると、ペットボトルやレジ袋、包装容器などが無数に漂っており、海は河川によって市街地と繋がっていることを実感すると述べている。近年、プラスチックのリサイクルや資源循環が進んでいるが、漁業用資材は塩分が付着し、付着物も多く、特にポリエステル漁網は技術的にリサイクルが難しく、全て産業廃棄物として処分されていた。今回、東レと日東製網の連携で「漁網to漁網」の水平リサイクルによる漁網が完成し、舘浦漁協の定置網に導入できたことは大変喜ばしく、日本中に広がることを願っている。漁業は豊かな海の恵みで成り立つ職業であり、末永く漁業を営み美味しい魚を届けるために、環境に配慮した漁法を積極的に取り入れたいとコメントしている。

【プレスリリース】循環型漁業を目指す「漁網to漁網リサイクル」へのポリエステル漁網の活用による取り組み拡大について
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