Subscribe Now

* You will receive the latest news and updates on your favorite celebrities!

Trending News

オランダ王国

The Netherlands

1) サーキュラーエコノミーの動向

オランダは、2008年の金融危機以降、特にスタートアップを推奨することで経済の立て直しを図ってきたこともあり、ヨーロッパの他の国と比べ、サーキュラーエコノミーにおいてもスタートアップの活躍が光る。

2050年までにオランダは完全サーキュラーエコノミー達成を目指す

2016年9月には、国として2050年までに完全なサーキュラーエコノミーへの移行を達成するという野心的な目標「Circular Economy in the Netherlands by 2050」を発表。2030年までには、国内で利用される資源のうち50%を循環する目標などを定めた。

迅速な移行を達成するため、国の行動指針として次の3つを設定した。

  1. できる限り新たなバージン資源を使わないこと、使う場合は可能な限り効率化して使用量を抑えること
  2. できる限り化石燃料などの枯渇資源を使わずにバイオマスなどの自然資源に移行すること
  3. 循環する仕組みのために新たな製造と設計のプロセスを開発すること

中でもバイオマス、食、プラスチック、製造産業、建築と一般消費財を重点分野として指定。

政府一丸となって取り組むのはもちろんのこと、サプライチェーンの多くが世界にまたがっており、問題となる廃棄物は必ずしもオランダ国内で処分されていない現状から、EUや世界の国々との連携の必要性を強調している。

オランダのサーキュラリティ

アムステルダム市に拠点を置くCircle Economyが2020年6月に発表した「The Circularity Gap Report the Netherlands(サーキュラリティ・ギャップ・レポート オランダ)」によると、オランダの国としてのサーキュラリティ(循環性)は24.5%だった。これは、年間で消費される建築・交通・食などの2億2100万トンの原材料のうち、約4分の1がバージン資源でなく二次原材料で賄われていることを意味する。2020年1月に発表された「Circular Gap Report」の中で明らかになった世界全体のサーキュラリティが8.6%だったのに対し、オランダは24.5%と約3倍だ。世界経済のサーキュラーエコノミーへの移行を牽引する国オランダとしての存在が改めて浮き彫りになった。この数字は、貿易国・先進国としては極めて高いといえる。

一方で、オランダが掲げる、2050年までにサーキュラリティ100%を達成するという目標からは75.5%のギャップがあり、リニア型の仕組みからの脱却には長い道のりがあることを意味する。

今回の調査結果によると、建築、農業、再生可能エネルギー、修理・再製造・リサイクルの領域においてサーキュラーエコノミー移行を強化することで、オランダの国としてのサーキュラリティを3倍に押し上げられ、1億2800万トンを超える資源消費を抑えることにつながる。これらの改善策を実施するためには購買専門家、建築プロジェクトコーディネーター、土づくり専門家、地元の修繕工などの分野で労働力を確保することがカギとなる。

(詳しくはこちらの記事で解説しています)

2) サーキュラーエコノミー推進組織・機関

オランダ国内でサーキュラーエコノミーを推進する主な政府・民間団体は以下の通り。

3) 先進的な企業、自治体の事例

企業

100%再生可能エネルギーで動くオランダ鉄道

一日約60万人が利用するオランダ最大の鉄道事業社NS(オランダ鉄道)は2017年、世界で初めて100%風力発電による再生可能エネルギーで走行する鉄道会社となった。

現在風が弱い日にバックアップ・エネルギー源として一部化石燃料に頼っているため、完全再生可能エネルギーへの移行を進める。

NSがサーキュラー化を進めるのは動力として利用するエネルギーだけではない。

電車が不要になった時には古いモデルを貨物列車として利用し、それでも使えない状態になったら今度は資源ごとに分けて、新しい製品につくり変える。現在、役目を終えた車両から出る資源のうち、実に96%は再利用され、新しい製品へと生まれ変わる。

座席部分はバッグに、電車の床部分は卓球台や卓上サッカー台に。天井部分は机へと作り変えられ、電気の配線や電気系統の管理に使われる部品は86%を新しく車両をつくる際に再利用される。

オランダ銀行大手ING・ABM AMRO・Robobankの三社合同「サーキュラーエコノミーファイナンスガイドライン」

オランダ銀行大手のINGABM AMRORobobankは2018年、三社合同で「サーキュラーエコノミー・ファイナンス・ガイドライン」を発表。金融業界においてサーキュラーエコノミーに関する共通理解を醸成し、サーキュラー思考を浸透させる目的で作られた同ガイドラインは、「Use of Investments(投資の活用)」・「Process for Project Evaluation and Selection(プロジェクト評価と選定のプロセス)」・「Management of Investments(投資マネジメント)」・「Reporting(報告)」の4分野で構成されている。投資の活用においては、サーキュラーエコノミー事業に投資するうえではビジネスモデル評価とインパクト評価の両方が重要だとしたうえで、対象となる代表的なビジネスモデルやインパクト評価の手順を紹介する。

電球ではなく「明るさ」というサービスを提供するフィリップスライティング(現:シグニファイ)

オランダを拠点とするシグニファイ(旧フィリップスライティング)は2010年、建築家のトーマス・ラウ氏とともに「明るさ」というサービスを提供する、新しい「製品のサービス化」のビジネスモデルを生み出した。同社は電球を売るのではなく、電球の所有権自体は自社で持ったまま、電球が切れたら交換して「明るさ」を提供し続ける。

この仕組みが素晴らしい理由はいくつもあるが、最も大きなものとしては、これによりシグニファイにとって壊れにくい、耐久性の高い製品を作り出すことに大きなメリットが生まれた点だ。製品自体の資源・エネルギー効率を高めることが仕組み上可能にした画期的なビジネスモデルとなった。

また、センサーを用いて外から自然光が入る時はエネルギーを使わないように光量を調節したり、人がいない箇所は明かりを消したり、無駄を省く方法を考えることにもつながった。

サーキュラーエコノミーに特化したインキュベーションセンター「BlueCity」

かつての温水プールTropicanaを改装してつくられたBlueCityは、サーキュラーエコノミーに特化したインキュベーションセンターだ。オランダ第二の都市ロッテルダムに根ざすサーキュラーエコノミーのエコシステム、インキュベーターとして、30社・約100名の起業家やスモールビジネスの拠点となっている。

BlueCity内の複数の起業家同士がウェイスト・ストリーム(廃棄物の流れ)を共有したビジネスを展開しており、「誰かの廃棄は誰かの資源」を体現する。それだけでなく、新たなウェイスト・ストリームの実験をするためのBlueCity Labも併設される。

BlueCityの改装工事自体もサーキュラー建築に基づいて、オランダの他の場所で不要となった資材を使って行われている。改装に必要となった資材の実に9割は再利用された資源を使っている。(BlueCityについては、Circular Economy Hubのこちらの記事をご覧ください)

資源ごみを持ち込むと地域通貨がもらえるアムステルダムの「Zero Waste Lab」 

アムステルダム市の資源ごみ分別率は27%と、オランダ全国の51%よりも随分と低い。これに危機感を募らせた起業家が立ち上げたのがZero Waste Labだ。

Zero Waste Labは廃棄されるごみの資源としての価値について啓蒙する目的で2016年にオープン。ここでは地元住民から資源を回収したり、アップサイクルして商品にして販売する。地元住民がごみを持ち込むと、地元のお店で使える通貨がもらえる仕組みだ。

持ち込み可能なのは役目を終えた紙・プラスチック・繊維・電池・ランプ・塗料・野菜・果物・電子廃棄物などで、回収してもらうことで発行される通貨を使えば、地元のお店でコーヒーや食料品、洋服や老眼鏡までを購入することができる。

プラスチックごみからつくる自転車道「プラスチックロード(PlasticRoad)」

世界的に問題となっているプラスチックの大量生産と廃棄を解決するため、オランダではZwolle市とGiethoorn市の二都市で全長30メートルのリサイクルプラスチックでできた自転車用道路「プラスチックロード(PlasticRoad)」をつくった。パイロット版として誕生したふたつのプラスチックロードは、それぞれ約21万8千個のプラスチックカップと50万個のペットボトルのフタからできている。

プラスチックロードの目的は、プラスチックゴミを道路建設に利用して、大量に捨てられたプラスチックを削減すること。それだけではなく、建設現場で構造パーツを組み立てるため道路の建設工期を短縮でき、CO2排出量を削減。軽量であるため地盤への負荷が少ないといったメリットも挙げられる。また、水はけの良い素材と構造で、オランダでたびたび問題となってきた洪水の防止にも効果的だ。

18か月間に及ぶ2つのパイロットプロジェクトによるテストと開発の結果、2021年第一四半期には市場に開放し、アスファルトやコンクリートに代わる素材として、自動車道や駐車場、道の舗装や学校の校庭などで幅広く実用につなげる計画だという。

Dutch Sustainable Growth Coalition

Dutch Sustainable Growth Coalitionは、前首相バルケネンデ氏がリーダーを務め、オランダに本社を置く、サステナビリティにおいて先進的な取り組みを行う多国籍企業8社が加盟する企業連合。エネルギー供給、持続可能な資源利用、食糧システムなどの分野における重要なイノベーションが、オランダに新たな未来の展望をもたらし、すべての人に持続可能な繁栄と機会を提供するとの考えのもと、官民が連携しサステナブルな取り組みを推進する。

加盟企業はロイヤル・フィリップス、ハイネケン、KLMオランダ航空、ロイヤル・ダッチ・シェル、ユニリーバ、AkzoNobel、DSM、FrieslandCampinaの8社で、アクセンチュアがファシリテーターを務める。

自治体

アムステルダム市:2050年までに100%サーキュラーエコノミー実現・ドーナツ都市計画の導入を発表

アムステルダム市は2015年、世界の自治体として初めてサーキュラーエコノミーへの移行に向けた可能性について詳細な調査を行い、その後2050年までに100%サーキュラーエコノミーを実現すると宣言。具体的な戦略として、サーキュラーエコノミー移行の5年計画「Amsterdam Circular 2020-2025 Strategy(アムステルダム市サーキュラー 2020-2025 戦略)」を公表した。

本戦略のなかで、アムステルダム市は2050年までに次のような目標を達成するとしている。

  • 2022年までに市の調達の全体の10%を循環型にすること
  • 2023年までに市の建築に関わる入札案件を循環型にすること
  • 2025年までに市の調達の50%を循環型にすること
  • 2030年までに一次原材料の使用は50%以下とすること
  • 2050年までに完全なサーキュラーエコノミーへ移行

(アムステルダム市サーキュラー2020-2025 戦略については、Circular Economy Hubのこちらの記事をご覧ください)

さらにアムステルダム市は2020年4月8日、新型コロナウイルス感染症拡大からの復興を目指す都市計画として、イギリスの経済学者であるケイト・ラワース氏が提唱するドーナツ経済のモデルを採用することを発表。世界的なショックからの復興を、これまでの「成長」によるものではなく、「繁栄」によって成し遂げるべきだと示した。(アムステルダム市のドーナツ都市計画についてはCircular Economy Hubのこちらの記事をご覧ください)

アムステルダム・ノードのサーキュラー地域開発

もともとアムステルダム・ノード(北部)に位置するBuiksloterhamは、アムステルダム中心地からアクセスの良い立地にありながら、造船所などの重工業地帯が廃業したあと土壌汚染などによって「使うことができない土地」となっていた。

この地域をより良い場所にするため、アムステルダム市は10年ほど「Manifest Circular Buiksloterham」を発表し、再開発に乗り出した。こうして生まれたのが、官民一体のサーキュラーエコノミーの実験区として誕生した「De Ceuvel」と、水に浮かぶ住宅コミュニティの「Schoonschip」だ。

De Ceuvelでは、土地の毒素を抜く植物を計画的に植えていく手法で最終的に土壌を回復させる計画だ。また、もとから置いてあったハウスボートをオフィスにアップサイクルし、入居者を募ることで賃料を取る。夏の間には若者が集まるおしゃれなカフェ・バーとしても賑わう。

Schoonschipは、水上に浮かぶ住宅デザインが目を引くが、それだけでは終わらない。太陽光パネルや雨水タンクが完備され、トイレの汚水を用いたバイオガスの仕組みの実装を進めるなど、環境負荷を最小限にし、エネルギーを自給自足するためのさまざまな工夫が凝らされたサーキュラー住宅だ。

2030年までにゼロ・ウェイスト達成を目指すロッテルダム市

オランダ第二の都市ロッテルダムは、2030年までにゼロ・ウェイストを達成し、2050年までに完全なサーキュラーエコノミーへの移行を目指す。2019年に発表したロッテルダム市のサーキュラーエコノミー戦略「Circular Rotterdam 2019-2023」のなかで、ロッテルダムは特に建築・プラスチック・消費財・ヘルスケアの4つのセクターにおけるサーキュラー化に力を入れる。さらに、サーキュラーエコノミーについての認知拡大とサーキュラーエコノミー型の雇用と経済の拡大の2軸で、目標達成へと向けて市内の企業や住民らと協業しながら進める計画だ。

オランダのサーキュラーエコノミー実現へと向けた取り組みは、IDEAS FOR GOODの欧州サーキュラーエコノミー特集でも多く取り上げておりますので合わせてご覧ください。

【参考】Circular Economy in the Netherlands by 2050
【参考】The Circularity Gap Report the Netherlands(サーキュラリティ・ギャップ・レポート オランダ)
【参考】サーキュラーエコノミー・ファイナンス・ガイドライン
【参考】Amsterdam Circular 2020-2025 Strategy
【参考】Circular Rotterdam 2019-2023
【参考】欧州サーキュラーエコノミー特集

【関連記事】オランダのサーキュラリティは24.5%。Circle Economyレポート
【関連記事】CEのインキュベーションセンター 「BlueCity」に学ぶサーキュラーエコノミーの始め方
【関連記事】アムステルダム市が公表した「サーキュラーエコノミー2020-2025戦略」の要点とは?