国連アジア太平洋経済社会委員会(以下、ESCAP)は5月5日、日本政府の協力のもと、東南アジア各都市の河川や海洋プラスチック汚染対策を目的とした新しいプロジェクト「クロージング・ザ・ループ」を発足した。
急成長を遂げている東南アジアの都市は、環境へのプラスチックごみ流出の60%を占めている。同地域で海洋へ流れ込んでいるプラスチックごみの75%は回収されなかったもので、残りの25%は各自治体の廃棄物システムからの漏出に起因する。海洋プラスチックごみの最大95%は世界の10大河川から流れ込んでいるが、そのうち8つはアジアの河川であるという事実からも、同地域での取り組みは必然の流れだ。
「海洋プラスチックの最悪の汚染地域となっているASEAN域内で、都市が廃プラスチックに取り組む最前線に立っています。海洋プラスチック汚染の拡大は、気候変動にも重大な影響を及ぼします。日本政府の強力な支援のもと、今回の革新的なプロジェクトは、問題への取り組みを加速させる良いタイミングとなりました」と、国連事務次長でESCAP事務局長でもある Armida Salsiah Alisjahbana氏はその意義を強調した。
同プロジェクトのパイロットシティには、クアラルンプール(マレーシア)・スラバヤ(インドネシア)・ナコーンシータンマラート(タイ)・ダナン(ベトナム) のASEAN4都市が選出された。
同プロジェクトは、パイロット都市のプラスチックごみ流出のマップやシミュレーションを作成し、スマート技術を活用したプラスチック廃棄物管理のさらなる強化によって、東南アジア諸国を支援する。スマート技術とは、リモートセンシングや衛星、クラウドソーシングデータアプリケーションなどといった革新的なもので、都市の集水域から河川に入るプラスチックごみの発生源と経路が検出される。その流れをモニター、評価、報告、そして持続可能な管理をしていく。一連の流れについては、ASEAN諸国の自治体関係者などへ研修が行われる見通しだ。
さらにサーキュラーエコノミーの実現へ向け、それぞれのプラスチックごみ削減に関する政策や投資戦略立案のツール、ノウハウも提供される予定だ。
プラスチックごみ問題に取り組む地域内協力の必要性は、日本の安倍首相がG20大阪サミット2019の声明の中でも認めている。「海洋プラスチックごみは、一部の国だけでは解決できない問題です。2050年までに海洋プラスチックごみによる新たな汚染をゼロにすることを目指す大阪ブルー・オーシャン・ビジョンをG20内で共有できたことは、問題解決に向けた大きな前進となりました」と安倍首相は述べている。
プラスチックごみ対策で遅れをとっている東南アジア地域だが、国を超えたプロジェクトでどれほどの効果を生み出していくか、注視していきたい。
【参照記事】New UN Initiative To Reduce Plastic Pollution From ASEAN Cities