食品分野におけるプラスチック容器包装資源循環タスクフォースは10月16日、農林水産省で第1回会合を開催した。このタスクフォースは、食品産業の持続的な成長に向けて、再生プラスチックの利用環境整備を長期的な視点で議論することを目的としている。初会合では、ケミカルリサイクルの課題や欧州の規制動向を踏まえた製品設計、現行のリサイクル制度の見直しなど、サプライチェーン全体にわたる論点が示された。

近年、プラスチックによる環境汚染問題への対応は世界的な急務となっている。特に欧州では、包装・包装廃棄物規則(PPWR)案でリサイクル材の使用義務化や、単一素材でリサイクルしやすい「モノマテリアル化」が目指されるなど、規制が強化される動きがある。こうした国際動向や国内のGHG(温室効果ガス)削減の要請を踏まえ、今回のタスクフォースでは、食品分野に特化したプラスチック資源循環のあり方が議論される。

会合では、再生プラスチックの利用を進める上での課題が多岐にわたることが確認された。特に、使用済みプラスチックを化学的に分解し、新品同様のプラスチック原料に戻す「ケミカルリサイクル」については、その重要性が強調された。食品容器包装は衛生面や品質面の要求が厳しく、物理的な再生手法であるマテリアルリサイクルには限界があるためだ。しかし、ケミカルリサイクルは大規模な設備投資が必要な装置産業であり、供給サイドが投資に踏み切れるような予見性、すなわち国による再生材利用目標の設定などが重要であるとの意見が出された。

製品設計も重要な論点となった。リサイクルコストに直結するため、可能な範囲でのモノマテリアル化や、リサイクルを阻害しにくいインクへの変更といった業界の取り組みが求められる。

また、現行制度の課題も指摘された。容器包装リサイクル法(容リ法)の下では、再生プラスチックの価格変動が大きく、事業者が安定的に調達しにくい状況がある。これにより、ボトルからボトルへと同質の製品に再生する「水平リサイクル」の割合が30%台に留まっているとの意見も出た。さらに、自治体によってプラスチックごみの回収範囲が異なるため効率的な回収が難しいことや、熱回収(サーマルリサイクル)されている容器包装を資源として循環させる必要性も議論された。

消費者理解の促進も課題として挙げられた。再生材とバージン材が混合される場合に、簿上管理によって再生材利用率を割り当てる「マスバランス方式」のような考え方について、消費者に正確な理解を促す官民の取り組みが必要との声が上がった。

タスクフォースは今後、リサイクル事業者からのヒアリングなどを通じて、再生プラスチックの供給能力や課題を把握し、食品業界における再生材利用の自主目標の有無や業界基準、サプライチェーン全体の課題整理などを進めていく方針だ。年度内に性急な「取組方向」をまとめるのではなく、継続して議論を深めていくことが確認された。

【参照情報】食品分野におけるプラスチック容器包装資源循環タスクフォース(第1回)議事要旨
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