JFEエンジニアリング株式会社はこのほど、施設園芸事業者向けの農業ビッグデータ活用サービス「AIアグリフォース」を開発し、提供を開始した。

「AIアグリフォース」では、2018年に同社が開発したプラットフォーム「Pla’cello」の機能を活用する。Pla’celloは、ITの専門知識を持たない社員でもAI・ビッグデータを容易に活用できるデータ解析ツールで、操業解析・予兆検知・需要予測・画像診断などを簡単に実施でき、データ解析関連業務に要する時間を最大90%削減するとしている。Pla’celloの活用により「AIアグリフォース」は、温度・湿度・日射量・CO2濃度などの温室環境に関する膨大なデータを収穫量やエネルギーコストと関連させて施設園芸事業者向けに提供すると同社は発表した。

(出典:JFEエンジニアリング株式会社)

加えて、同社のグループ会社Jファームで培った温室の環境制御に関する知見・技術と、「AIアグリフォース」を活用して見える化した農業ビッグデータを組み合わせ、施設園芸事業者のエネルギーコスト削減や収量増加などを実現する意向だ。Jファームは、スマートアグリシステムを採用した最先端の太陽型植物工場であるとしている。スマートアグリシステムは、ハイテク企業の蘭Priva社が提供する高度栽培環境制御システムによりハウス内の環境(温度・湿度・日射量・CO2・肥料など)を制御し、最適な栽培環境を創り出すことで高収量・高品質な生産物を栽培する方法だ。Jファームでは省エネ・環境負荷軽減を目指し、エネルギー利用の最適化を図っている。

現在、農業従事者の減少や高齢化などによる人手不足をはじめとする課題の解決に向けて、施設園芸分野のデータ活用に関するさまざまな取り組みが実施されている。農林水産省は2020年度に開始した「スマート農業総合推進対策事業」として、2025年までに農業従事者の多くがデータを活用した農業を実践するという政策目標のもと、行政や施設園芸事業者を支援している。支援事業は、農業分野におけるデータ連携・共有、ロボット技術安全性確保策検討、データ駆動型農業の実践・展開、スマートグリーンハウス展開推進などだ。農業・農村の持続的な維持・発展には、ロボット・AI・IoT・ドローンなどの先端技術を活用した「スマート農業」の実現が必要であると同事業実施要綱に記されている。また、同省は2021年5月に「みどりの食料システム戦略」を策定した。同戦略は、サプライチェーンの各段階における新たな技術体系の確立とイノベーションで、食料・農林水産業の生産力向上と持続性の両立を実現することを目指すものである。

同社は、アグリ分野での事業運営の知見・技術と最先端技術による持続可能な農業の推進を通して、SDGs達成に向けて貢献していく考えだ。現在の農業が抱える課題解決に向け、先端技術を活用したスマート農業の実現とともに、食と食料生産の大切さや農業従事者を増やすことを目的とした教育および支援についてのさらなる政策にも期待したい。

【プレスリリース】アグリ分野におけるAI活用~農業ビッグデータ活用サービス”AIアグリフォース”誕生~
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