金沢大学理工研究域生命理工学系の髙橋憲司教授らの研究グループは7月5日、津田駒工業株式会社と連携し、植物プラスチックを全自動で合成するロボットシステムを開発したと発表した。植物プラスチックとは、セルロースなど植物由来の高分子を化学修飾した樹脂のことだ。
このプロジェクトは2022年8月から始まり、2023年3月末に第一世代の試作機を完成。2024年3月末には、反応装置5個を連動させた合成ロボットシステムを完成させた。このシステムにより、年間で3,000種類の植物プラスチック素材が製造可能となるという。
合成ロボットシステムは、セルロースをイオン液体に完全溶解させた均一条件下で反応を行い、新しい誘導体を合成する。これにより、従来の不均一な条件での化学修飾方法では困難だったエステル化の置換度制御が可能となった。
今後の展開としては、3,000サンプル/年のペースで植物由来樹脂の機械的・熱的物性データを蓄積し、データベースに登録する。このデータは機械学習を通して新しい素材の開発に活用される予定だ。植物由来樹脂のデータベース構築・活用により、「石油資源に依存した社会」から「植物を資源とする循環型社会」への変革が期待される。
本研究は科学技術振興機構(JST)共創の場形成支援プログラム(COI-NEXT)の支援を受け、金沢大学のCOI-NEXTプロジェクトの一環として実施された。プロジェクトでは、社会循環が可能な素材、環境に優しい素材、消費者の行動変容を促す素材の開発を目指している。
津田駒工業株式会社は、石川県金沢市に本社を構え、繊維機械の製造・販売を行う企業。金沢大学との共同研究により、持続可能な社会の実現を目指した取り組みを進めている。
SDGs達成に向けてサーキュラーエコノミーの実現が期待される中、両者は植物資源の活用とサーキュラーデザインを通して持続可能な未来社会の構築を目指す。
【プレスリリース】植物プラスチック全自動合成ロボットシステムでDX を加速し、2050 年の未来を激変させる!
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