慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス(SFC)は、2026年秋をめどにキャンパス内の食堂やカフェ、キッチンカーでリユース容器を本格的に導入することを目指している。大学キャンパスでのリユース容器は米国、ドイツ、中国などで導入事例があるが、ITを活用し、店舗を横断して容器を循環させる仕組みのキャンパス全体での導入は、国内の大学では先駆的な取り組みとみられる。
SFCではこれまで、導入に向けて複数回の実証を実施。2026年1月からはキッチンカーと連携をした実証を行っており、今回株式会社カマン(神奈川県鎌倉市)が開発、飲食店やイベントでのテイクアウト向けに提供されているリユース容器システム「Megloo(メグルー)」をベースに、同社と学生が連携して新たに開発したシステムを導入した。

大学キャンパスでリユース容器システムを導入する狙いとして、和田直樹准教授は「これから社会で活躍するSFCの学生が、持続可能なライフスタイルを当たり前と感じられる環境をキャンパスで実現することで、これからの社会の変革と学生の活躍を後押ししたい」と説明する。さらに、キャンパス内での昼食需要を喚起しながら、大学の廃棄物処理費用の削減やカフェなどの事業者の使い捨て容器コストの削減につなげることで、キャンパス内経済の活性化も目指している。
実証実験の期間に実施した利用者アンケートによると、利用満足度が約9割に上るとともに、リユース容器の使用を通じて環境への意識が変わったと答えた学生が6割余にのぼったという。海外では、カリフォルニア大学ロサンゼルス校やボストン大学、ケント州立大学(いずれも米国)、南方医科大学(中国)などの大学のキャンパス内でリユース容器が導入されているが、日本国内の大学では初のケースとみられる。リユース食器システムを提供するカマンの善積真吾社長は「リユース容器はイベントなどでの導入が進んできていますが、限られたエリアと人間関係で完結している大学キャンパスはリユース容器を導入しやすい環境と言えます」と話す。

学生主導で導入を推進
これまでの実証実験は、和田准教授の研究室に所属する学生らが中心となって、キャンパス内の店舗やキッチンカーへの導入交渉や、リユース食器の回収場所の整備、学生向けのリユース食器システムのPRなどを担ってきた。プロジェクトリーダーの住友菜のはさん(環境情報学部4年)は「プロジェクトに関わるすべての関係者がハッピーになる仕組みをどのように構築すべきか、一番悩みました。環境は大切だけど、お金をかけてまでやることではないという意識が日本では強い中で、容器の返却時に環境効果を実感してもらう仕掛けをつくるなど、自分ごととしてもらうためにどうすればいいかを考えながら、さまざまな工夫を行いました」と振り返る。

徐昊然さん(同3年)は、貸し出しシステムの構築やデータ管理を担当している。最初に相談を受けた時、徐さんは「リユース食器を1つ使ったら90グラムCO2を削減できると聞き、モチベーションが上がりました。本格的に社会に実装できれば効果が高く、自分の努力が報われると思ったので引き受けました」と話す。「キャンパスで本格的に導入していくことになるので、今後はシステムのメンテナンスコストを極力ゼロに近づけて、ITスキルがあまりない人でも管理できるように改良していきたい」と意気込んでいる。

リユース容器導入の好事例となるか
今後は、慶應SFCキャンパス内の多くの飲食店とカフェ、キッチンカーのテイクアウト容器ほか、同じ敷地内に隣接する湘南藤沢中等部・高等部で提供されるお弁当容器としてリユース食器が本格的に導入されることになる。本格導入を控えて、和田准教授は「関わってくれるお店や大学事務室、ボックスのメンテナンスや洗浄も含めて運営体制をどのように構築していくか。リユース容器が標準であると店員さんから声掛けをしていただけるよう働きかけることもさらに必要」と認識している。その上で「学生担当とも連携して、新入生への案内に協力してもらい、SFCの文化としてリユース容器システムがあることを知ってもらおうとしています」と話す。
リユース容器の導入をさらに拡大させていくには、循環の輪を少しでも小さくするために近接エリア内で容器の提供から回収、洗浄のループを完結できる仕組みづくりが必要となる。加えて、混雑時に食事の提供側に説明などの負担をかけないサービス導線の構築も欠かせない。テイクアウト時の容器でリユース容器を選べる「本格導入」から、テイクアウト時の容器をすべてリユース容器とする「全面導入」につなげることができるのか――。 私たちの暮らしにテイクアウトが普及するとともに一気に表面化したテイクアウト時のごみ問題。リユース容器がその解決策として定着していくことになるかを占う上でも、今後の慶應SFCの取り組みの行方に注目したい。
【参考サイト】
How UCLA Dining Made Choosing Sustainability Effortless With Reusables.com
慶應義塾大学SFC 和田研究会





