ドイツのポルシェ傘下の経営・ITコンサルティング企業MHPは7月25日、Amazon Web Services(AWS)および他のパートナー企業と共同で、電気自動車(EV)用バッテリーのデジタルツインに関する新たなDIN規格「DIN SAE SPEC 91487:2025-08」を策定したと発表した。本規格は、デジタルツインの用語と特性を定義し、共通の基盤を整備することを目的としている。

新たに策定された「DIN SAE SPEC 91487:2025-08」(以下、DIN SPEC)は、研究開発機関やIoT・クラウドソリューションの提供者をおもな対象とし、国際的なパートナー間での情報共有や協働を促進する狙いがある。約2年半にわたり、PAS(Publicly Available Specification)プロセスを通じて共同作業グループによって策定された。

MHPのパートナー、クリスティアン・シュターペル氏は「このDIN SPECによって、MHPはデジタルツイン分野での専門性と、DIN規模での標準化を推進する力をあらためて示しました。今後も各分野で新たな標準策定を支援する信頼できるコンサルティングパートナーとして貢献していきます」とコメントしている。

また、シニアマネージャーのマルクス・シュッテン博士は「この取り組みは、自動車メーカーでのデジタルツイン開発プロジェクトから始まりました。当時は基礎的な標準化が進んでいませんでしたが、十分な知見と経験をもとに、現在ではこうした大規模プロジェクトを成功に導けるようになりました」と説明した。

MHPは本規格の発案者であり、共同作業グループのリーダーとしてプロジェクトを主導している。AWSは、ライブデータやフリート情報、AIを活用してEVバッテリーをモニタリング・分析する「レベル4 デジタルツイン」の成熟度モデルを基盤として提供した。

今回策定されたDIN SPECにより、企業は既存の標準を活用してデジタルツインの構築や関連サービスの展開をより容易に行えるようになる。加えて、法的文書で参照可能な形でデジタルツインを分類・体系化していることも特徴だ。さらに、SAE Internationalとの連携を通じて米国企業もアクセスできるようになり、今後はISO規格としての国際標準化も視野に入れて開発が続けられる予定である。

【プレスリリース】MHP and AWS develop new DIN SPEC
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