英国の非営利シンクタンク「プラネット・トラッカー(Planet Tracker)」はこのほど、プラスチック汚染の解決策としてリサイクルの推進に依存し過ぎている現状を問題視し、プラスチック廃棄物管理のアプローチを再評価すべきとした報告書を公開した。

「プラスチックリサイクルの欺瞞」と題した報告書は、プラスチック産業が長年にわたって世界のプラスチック汚染危機の解決策としてリサイクルを推進してきた一方で、世界全体ではプラスチックの91%がリサイクルされていないと指摘。業界として生産の継続的な拡大を可能にし、利益を守るためにプラスチック汚染の解決策としてリサイクルを熱心に推進しているとしている。

リサイクル万能思想に警鐘

また、プラスチック業界はリサイクルのシンボルと間違われる樹脂識別コード(RIC)はリサイクルシンボルとして誤って認識されることが多いが、リサイクル可能性を示すものではなく、原料のみを示すものだと言及。RICは政策立案者や規制当局、消費者を惑わし、プラスチックの循環性を信じ込まることにつながっていると主張している。

報告書はさらに、プラスチック業界による一連の戦略は世界のプラスチック汚染の責任を消費者と自治体、またはその下請け業者に転嫁することに成功してきたと主張。このような清掃費用を負担できる自治体はほとんどなく、多くの消費者は廃棄物回収手段を有していないと指摘している。

報告書は、金融業界の責任にも触れている。金融市場は現状ではリサイクル幻想に取り込まれ、プラスチック生産者に低い株式リスクプレミアムを割り当てているとして、投資家や金融機関、保険会社に対してプラスチック汚染に関連するあらゆるリスクを考慮しなければならないと警告。その上で、投資家と政策立案者に対して唯一の解決策としてのリサイクルを超えて目を向けるよう促すとともに、プラスチック汚染の解決における石油化学企業の役割に関する投資家声明を支持し、安全で環境に配慮した持続可能なプラスチックの生産への移行に向けて業界と協力するよう求めている。

プラネット・トラッカーのリサーチ・ディレクターであるジョン・ウィリス氏は「プラスチック業界の手口は、生産量の制限や代替材料の採用といった上流工程での対策から焦点をずらすことに成功している」と指摘。その上で、「生産者責任の拡大、税制、規制を含む上流の解決策を検討し、持続可能な道筋を作らなければならない。リサイクルだけでは既存のプラスチック廃棄物、ましてや増加するプラスチック廃棄物に対処することは不可能だ」と呼びかけている。

【プレスリリース、レポ―ト全文のリンク】
Plastic Industry’s Recycling Deception Exposed: Why action on plastic production is imperative