2025年11月26日、パシフィコ横浜ノースにて開催されたアジア・スマートシティ会議2025(Asia Smart City Conference / 以下、ASCC)において、横浜市における資源循環の現在地を伝えるセッションが実施された。

テーマは「横浜市資源循環推進プラットフォームがつなぐ企業連携と循環の可能性」。本セッションには、2024年10月、横浜市と市内の資源循環産業7者が連携協定を締結し発足した「横浜市資源循環推進プラットフォーム(YRCプラットフォーム)」から参画企業2社が登壇。同プラットフォームを軸に、市内で実践されている具体的な取り組み事例を通じて、サーキュラーエコノミーの実現に向けた官民連携および企業間連携の可能性について議論が交わされた。

市民参加を前提に進化してきた、横浜市の分別・資源循環モデル

横浜市ではこれまで、家庭ごみの分別方法や収集体制を段階的に見直しながら、市民参加型の資源循環モデルを構築してきた。

セッション冒頭では、横浜市資源循環局の大島貴至氏が、1970年以降の横浜市における資源循環施策の変遷を、写真やグラフを交えて紹介した。

2002年度から2010年度にかけて実施されたG30プラン(旧・横浜市一般廃棄物処理基本計画)にも言及し、分別区分の細分化によってリサイクル可能な資源を増やし、ごみ量(※)の削減を実現してきた経緯が語られた。制度運用においては「市民力」を重視し、市民の理解と行動を起点に、資源循環の仕組みを進化させてきたという。

※ ごみとして排出されるもののうち、資源物として排出されるものを除く量

横浜市のこうした取り組みは、単なる制度設計にとどまらず、地域に入り込みながら自由な意見交換を重ね、改善を続けてきた点に特徴がある。資源循環は行政サービスであると同時に、市民一人ひとりが「自分ごと」として関与する都市活動である——その認識が、セッションを通じて共有された。

横浜市資源循環局事業系廃棄物対策部長 大島 貴至氏
横浜市資源循環局事業系廃棄物対策部長 大島 貴至氏

海外都市との連携へ──横浜モデルの国際展開

横浜市はこれまで、ベトナムのダナン市やアフリカ諸国、フィリピンのセブ市などに対し、ごみ分別やリサイクルに関する知見や技術を提供してきた。特徴的なのは、一方的な技術移転にとどまらず、現地に赴いてのレクチャーや市民啓発、さらには資源循環のプロジェクトの実装までを含めた伴走型支援を行っている点だ。

国際協力については、行政が単独で進めるのではなく、技術力を有する市内企業の海外進出の機会としても活用しているという。これについて、株式会社グーン代表取締役 会長兼社長の藤枝慎治氏は次のように語った。

「横浜市は、セブ州およびセブ市と都市間協定を結んでいます。提携先からはさまざまな応援要請が寄せられると聞いていますが、多くの場合、最優先課題となるのが廃棄物処理です。ノウハウを持つ企業としてぜひ貢献したいと考え、手を挙げさせていただきました」

セブ市の事例では、設備設計から人材育成、さらには現地での事業化までを視野に入れた支援が行われているという。「技術を現地企業に還元していくべき」という考えのもと、現地企業とのジョイントベンチャーも設立したそうだ。

こうした取り組みは、都市間連携が一過性の支援にとどまらず、持続的な循環型産業の創出につながる可能性を示している。

株式会社グーン代表取締役 会長兼社長 藤枝 慎治氏
株式会社グーン代表取締役 会長兼社長 藤枝 慎治氏

サーキュラーエコノミーの実現は「連携」が鍵を握る

続いて、資源循環を「産業」として成立させるための課題と可能性について議論が行われた。廃棄物を排出する側の立場から見ると、一般的により安価な処理事業者が選ばれやすいという現実がある。リサイクルには費用がかかるためコスト面で不利になりがちであり、結果として焼却や埋め立てといった、より安価なリニア型の処理に流れやすい点が課題として挙げられた。

脱炭素やサーキュラーエコノミーの実現に向けては、家庭ごみだけでなく、事業系廃棄物の循環を高度化していくことが不可欠である。一方で、こうした取り組みを単独の企業努力だけで進めるには限界がある。そこで重要になるのが、業種や立場を超えて議論と実践を行う場として設立された、官民連携のYRCプラットフォームだ。

設立の経緯と目的について、同プラットフォームの幹事を務める藤枝氏は、次の四つのポイントを挙げた。

「一つ目は、廃棄物処理業が脱炭素社会の実現に向けた一翼を担うこと。二つ目は、地元の廃棄物処理業を新たな成長産業として育てていくこと。三つ目は、製造・販売を担う企業との連携の必要性。四つ目は、横浜市と連携し、地産地消型の資源循環を進めていくことです」

事業系ごみを扱う事業者と家庭ごみを扱う事業者が同じテーブルについて議論し、実証プロジェクトを通じて成果を積み上げていく点も、同プラットフォームの特徴の一つだ。こうした取り組みを継続的に積み重ねることで、新たな循環型産業の創出や、「メイドインヨコハマ」の資源循環として全国展開につなげていきたいと、藤枝氏は今後の展望を語った。

セッションの様子

企業連携がもたらす「共創」の具体的事例

日本では血液の循環になぞらえ、製品の製造販売を行う側を「動脈産業」、製品が廃棄物となったあとにリサイクルや処分を行う側を「静脈産業」と呼んでいる。

大島氏によると、近年は拡大生産者責任(EPR)の観点から、動脈産業側から廃棄物の有効利用や、不要となった自社製品の再資源化の相談が増えているという。一方、静脈産業でもこうした社会情勢をビジネスチャンスと捉え、リサイクル材の積極的な活用や新たなビジネスモデルの提案が活発化している。

YRCプラットフォームは、こうした動脈産業と静脈産業が相互にコミュニケーションを取り、つながっていくための場として設けられている。横浜市は、動脈企業のニーズを引き込みながら、静脈企業とのマッチングや協業の支援、公民連携による技術開発を後押しする役割を担っている。

セッションではその具体例として、みなとみらいの「ザ・カハラ・ホテル&リゾート 横浜」と、旭区の「よこはま動物園ズーラシア」の連携事例が紹介された。

ホテルのビュッフェで生じた未利用食品(果物)を、動物園の夜間開放イベント「ナイトズーラシア」において、動物のおやつとして活用したという。単発イベントであったため、食品ロス削減量自体は限定的だが、地域資源の循環や市民への啓発という点では高い効果があったと捉えて、今後は継続的な取り組みも視野に検討を進めているそうだ。

廃棄物を再エネや肥料へ。J&T環境が描く「循環のループ」

セッション後半では、YRCプラットフォームの参画企業である J&T環境株式会社の代表取締役社長・長谷場洋之氏が登壇した。同社は横浜市において、ペットボトルや廃プラスチックのリサイクル、食品リサイクルなど、多岐にわたる資源循環事業を展開している。

ASCCの会場となっているパシフィコ横浜では、展示会やイベントに伴い発生する廃棄物処理のオペレーションを2010年から同社が担ってきた。燃やせるごみについては焼却発電プラントで処理し、食品廃棄物についてはメタン発酵によるバイオガス発電を活用。得られた電力を「出したごみから得た再生エネルギー」として施設に売電する仕組みも紹介された。

また、横浜市内での連携事例として、みなとみらい21地区におけるペットボトルの「ボトル to ボトル」リサイクルについて言及。あわせて、地産地消の視点を重視した食品リサイクルの取り組みに触れ、近年では発電にとどまらず、副産物を肥料として農家に提供し、そこで生産された野菜や米をレストランで活用するなど、二つの循環を生み出す「ダブルリサイクルループ」を目指していると語った。

さらに、2022年のプラスチック資源循環法施行を受け、回収対象となるプラスチックの種類が拡大した点にも言及した。焼却からリサイクルへと舵を切る自治体の動きが全国的に広がる中、同社は川崎市内において、複数自治体のプラスチックを一貫して処理・リサイクルできる施設を2025年4月に新設。時代の要請に応える取り組みを進めていることが紹介された。

J&T環境株式会社代表取締役社長 長谷場 洋之氏
J&T環境株式会社代表取締役社長 長谷場 洋之氏

「高い価値のまま資源を循環させる」時代を目指して

セッションの締めくくりとして、各登壇者がこれからの資源循環のあり方と、横浜が目指すべき未来像について語った。

まず、藤枝氏は、単なるリサイクルを超えた「経済性」と「スタイル」の重要性を説いた。

「動脈産業側は再生されたものを使う努力、そして静脈産業側は使ってもらうための努力が欠かせません。公民連携においても、資金面を含めた実効性のある協力が求められます。活動を継続させるためには、何よりも経済的な優位性を追求することが重要です。クリエイティブな発想を取り入れ、クールに資源循環ができるスタイルを構築していきたいと考えています」

続いて、長谷場氏は、2050年のカーボンニュートラル達成を見据え、現実的なアプローチの必要性を語った。

「さまざまな手法がありますが、サーキュラーエコノミーの実現は、現実に根を下ろした地道な取り組みの積み重ねの上に成り立つのではないでしょうか。そのためには、政府や地方自治体、市民の皆さま、そして多様な企業が、これまで以上に密接に連携していくことが不可欠です」

最後に大島氏は、行政に求められる役割について次のように述べた。

「市に求められているのは、『橋渡し』の役割です。連携を続けていくことで、地元企業やスタートアップに新たなビジネスチャンスが生まれ、環境と経済の好循環が生まれることを期待しています」

セッションの最後には、サーキュラーエコノミーの国際的な潮流を牽引するサークルエコノミー財団CEO、Ivonne Bojoh氏がクロージングメッセージを寄せた。

「2050年に向けた次の25年は、製品の価値を下げない設計と仕組みを、いかに社会全体で積み上げていけるかが問われています」

従来のリニアエコノミーでは、製品は資源から生まれ、使用後に価値を失い、最終的に廃棄物となる。一方、サーキュラーエコノミーが目指すのは、製品が廃棄物になる前に価値を保ち、循環させることだ。

特に重要となるのが、グローバルに流通する製品が、使用後も高い価値のまま再利用・再資源化される仕組みづくりである。Bojoh氏は、今後はリサイクルの高度化に加え、修理や再利用を前提とした製品設計の段階からの循環が求められると述べた。

サークルエコノミー財団CEO Ivonne Bojoh氏
サークルエコノミー財団CEO Ivonne Bojoh氏

YRCプラットフォームがつないでいるのは、資源だけではない。持続可能な未来を信じる人々の想いと、それを現実にする技術力が交差し、この都市から日々、新しい循環のかたちが生まれ続けている。

これまで交わりのなかった企業がつながり、自治体や市民とのコミュニケーションを通してよりよい未来を考え、更新し続けること。その姿勢こそが、横浜発の資源循環モデルに、次の広がりを予感させている。大企業から地域のプレーヤーまで、多様な主体が関わりながら進める“価値を問い直す”挑戦こそが、これからの資源循環の核心となっていくだろう。