スターバックス コーヒー ジャパン株式会社(以下、スターバックス コーヒー ジャパン)は11月17日、東京丸の内エリアのスターバックス10店舗で容器のリユースシステム実証実験を11月22日より開始することを発表した。

同実証実験では、主にステンレスでできた貸出カップでドリンクを提供し、店舗に返却、外部パートナー企業による洗浄を経て再利用するシステムを検証する。同社は新たなリユース文化の定着を図りたい考えだ。

スターバックスは、「リソースポジティブカンパニー」を目指すマイルストーンとして2030年までに廃棄物を50%削減するグローバル目標を掲げており、今回の実証実験はそれを国内で加速させるものとして位置付けている。

今回の実証実験では、NISSHA株式会社(ハードウェア担当)とNECソリューションイノベータ株式会社(ソフトウェア担当)が開発した「Re&GO(リーアンドゴー)」のリユース容器プラットフォームを利用する。

利用の流れは次の通り。

  1. 顧客はRe&GoのLINEアカウントをお友だち登録。Re&Go LINEアカウントの「容器を借りる」をタップして、専用カップに付属されたQRコードを読み取る(容器の返却期限:利用日を含めた3日間)
  2. 店内外の好きな場所で利用
  3. 「容器を返却」をタップして、店頭のQRコードを読み取り、店舗内の返却場所にカップを返却。アカウントにはCO2削減量・すべての顧客が利用したリユースカップの総数・自身が利用したリユースカップの個数が示され、顧客の内発的なインセンティブにつなげる


同社によると、高い衛生レベルを保つため洗浄工程に最も注意を払う。一般的なホテル・レストランよりも高度な洗浄基準を設けているという。

Re&GOを開発したNISSHA株式会社とNECソリューションイノベータ株式会社は、同プラットフォームを通じて新たなリユース容器を利用する環境を整備するために、今回の実証実験でもビジネスモデルの有効性を確かめていくとしている。

今回、編集部では同社主催の体験会に参加。カップの貸出から返却までの一連の流れを体験した。アプリをダウンロードせずにLINEアカウントで利用でき、スムーズに利用できるように工夫されている。店舗内で大きな手間はかからない。

飲食店によるリユース容器システムに関するサービスは、海外を中心に一部で始まっている。新たな文化の定着に向けて大きく期待される一方で、現時点では普及に向けた次の3つのハードルを乗り越えなければならない。同社もこれらの点を克服すべく試行錯誤しながら挑戦を続けていくとしている。

1.全ライフサイクルで見た環境負荷削減コスト

こちらを一つの結果として多くの研究が進められているが、リユース容器が環境負荷を削減できるかどうかは、リユース容器の素材・利用回数・利用量・輸送・洗浄工程などさまざまな変数がある。カップ1個あたりの利用回数増加や、大規模に使用済み容器を回収できるかなどがポジティブ要因となる。

通常の容器利用と比較した場合の輸送や洗浄工程にかかる環境負荷の評価については、「多くの方が繰り返し使うことで、製造から利用までトータルで環境負荷を減らしたい」(同社サプライチェーン本部 サステナビリティ&資材購買部 部長 古川大輔氏)という考えのもと、今後実施していくという。これが、同社が今回の実証実験で特に配慮している点である。

今後、多くの顧客による利用が、環境負荷削減のプラス要因として寄与していくことが期待される。

2.顧客にとっての利便性やコスト

使い捨てカップを利用することに対する罪悪感を感じる消費者は多いものの、返却に手間がかかったり、コストに見合わなかったりするようであれば、実際のアクションにつながらない。これはリユースカップの利用における調査などが示している。

この点に関しては、編集部が体験した通り、初期動作と返却するための来店の手間以外は顧客の負荷を下げるべく周到にシステムが構築されている。オフィスが集まる丸の内エリアという地の利も好要因となりそうだ。さらに、環境負荷削減以外の顧客にとっての付加価値は、保温性や保冷性の高いカップが利用できること、タンブラーを持ち歩く必要がないことなどが挙げられる。

3.サービス提供者側のコスト

スターバックス コーヒー ジャパンのようなサービス提供者側には、システム構築・洗浄・輸送・リユースカップの製造など、これまでにないコストが発生する。この点は、利用者が増えていくことで投資回収・コストを相殺していけるようになる。

同実証実験は2022年5月31日まで。約25年前にアメリカのタンブラー文化を日本に紹介・独自に進化させ、一つのスタイルとして身近なものにしたスターバックス。今回の新たな挑戦も顧客の選択肢を増やす取り組みになる。上記3点に注目するとともに、新たなリユース容器の文化が定着することを期待したい。

実証実験店舗

・丸の内ビル店
・グランスタ丸の内店
・KITTE丸の内店
・丸の内オアゾ店
・丸の内新東京ビル店
・丸の内三菱ビル店
・大手町プレイス店
・大手町東京サンケイビル店
・新大手町ビル店
・皇居外苑 和田倉噴水公園店(2021年12月1日オープン予定)

【参照プレスリリース】繰り返し使えるカップを「借りて・返して・再利用する」循環型プログラム 実証実験を東京都内・丸の内エリアのスターバックス10店舗で11月22日(月)よりスタート 廃棄物を削減し、カップをリユースする文化の定着目指す
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*記事中の画像の出典:スターバックス コーヒー ジャパン株式会社