公益財団法人世界自然保護基金ジャパン(以下WWFジャパン)は6月1日、容器包装・使い捨てプラスチックを多く取り扱う企業5社と、サーキュラーデザインや環境問題の専門家、政府(環境省)、生活者とともに、持続可能なサーキュラーエコノミーへの転換に向けた対話イベント「プラスチック・サーキュラー・チャレンジ2025みらいダイアログ」を開催した。
増え続けるプラスチック生産量と自然環境への影響
冒頭、WWF ジャパン 三沢行弘氏(プラスチック政策マネージャー)より、バージンプラスチックの世界における年間生産量は2019年時点で4億トンに達しており、2030年には6億トン強になるという現状と未来予測が共有された。プラスチックの自然環境への流出が生物多様性を危機に直面させるリスクや、プラスチックの大量生産が招く地球温暖化の加速など、プラスチックが環境に与える影響を踏まえ、廃棄物を発生させないことを最優先することの重要性とサーキュラーエコノミーによる解決アプローチが提示された。
高付加価値化・循環化・資産化・脱物質化の重要性
イベント第1部の基調講演では、ゲストの水野大二郎氏(京都工芸繊維大学未来デザイン・工学機構教授/慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科特別招聘教授)より、サーキュラーエコノミーを成立させるためのデザイン理論や手法を総称するサーキュラーデザインについて、また企業に求められる役割について講演が行われた。水野氏は、サーキュラーデザインにみられる設計戦略は無数に存在し、完全なる循環を実現する手法は今のところ存在しないとしつつ、サーキュラーデザイン人材とデジタルデザイン人材の育成の重要性を指摘する。経済を線形から循環型にするだけでなく、その先にある、どうやってモノの生産量を減らしていくのか、モノを作らずにどのようにしてビジネスを回していくのか、が大切である点も強調された。
その後、大学院大学至善館教授 枝廣淳子氏、水野大二郎氏、日本航空、日本コカ·コーラ、WWFジャパンにて、持続可能なサーキュラーエコノミーへの転換により築くべき未来、企業はそれをどのように設計・実現できるのかについて、パネルディスカッションが行われた。
生活者や若い世代からの「持続可能なプラスチック・サーキュラー・エコノミー」転換への期待
イベント第2部冒頭で、WWFジャパンの特設サイト上で実施された、一般生活者から企業に対するリクエストが発表された。そこでは、生活者が買い物をする際などに、商品の品質を最低限保つのに必要な包装以上の過剰包装を撤廃してほしい、野菜・果物を含む商品を、包装やトレー無しで買えるようにしてほしい、といった、プラスチックを使わなくてすむように、商品や買い物方法を設計してほしいという声が多く寄せられている。
続いて、「『パッケージレスな未来』、『リユース/水平リサイクルに基づく未来』に向けた企業・政府・生活者の共創」をテーマに、次世代を担うユース2名(慶應義塾大学蟹江憲史研究室)から、環境省平尾禎秀氏、キリン、ネスレ日本、ユニ・チャームに疑問や提案・期待を投げかけ将来の展望やその実現に向けての共創の機会を考えるディスカッションが行われた。プラスチックのリサイクルを難しくしている要因のひとつに、素材が統一されていないことが挙げられるという解説に対し、統一した方がよい部分と、統一せず企業間で競争することによってより良い容器包装(ここではより軽量なペットボトル)が生まれる部分がある、など異なる立場からの意見も出された。
WWFジャパンは、企業から生活者に対して一方的な情報発信を行うというコミュニケーションのスタイルが今でも多く見られ、生活者のアイデアを企業が採用するという流れがあまり出来ていないという現状を指摘する。今後は生活者による発案が製品や販売・購入方法に採用されるような機会を作っていきたい、また、企業にもそのような機会を持つことを働きかけていきたいと述べている。
「プラスチック・サーキュラー・チャレンジ2025」とは
WWFジャパンの呼びかけで、2022年2月にスタートした企業プラットフォーム。2025年を重要なマイルストーンに据えた意欲的で包括的な自主コミットメントの下、持続可能なサーキュラーエコノミーへの転換により、プラスチックの大量生産・大量消費・大量廃棄からの脱却を図る。
<参画企業>計10社
キリンホールディングス株式会社、サントリーホールディングス株式会社、株式会社資生堂、日本航空株式会社、日本コカ・コーラ株式会社、日本水産株式会社、ネスレ日本株式会社、ユニ・チャーム株式会社、ユニリーバ・ジャパン・ホールディングス合同会社、ライオン株式会社
<後援>
環境省、消費者庁
【参考】プラスチック・サーキュラー・チャレンジ2025
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