環境省はこのほど、令和5年度「プラスチックの資源循環に関する先進的モデル形成支援事業」の公募採択事業を発表した。

2023年6月2日から約1カ月間、環境省はプラスチック資源の効率的な収集・リサイクルの推進に資する先進的モデル形成に取り組む地方公共団体を対象に公募を実施。公募した事業は、「(1)市区町村によるプラスチック使用製品廃棄物の分別収集・リサイクル」と「(2)地方公共団体が製造事業者等と連携して実施する使用済プラスチック使用製品の自主回収・リサイクル」についてで、(1)に10件、(2)に2件採択した。

2022年4月、「プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律」が施行された。同法は、特定プラスチック製品の排出抑制のほかに、市町村によるプラスチック使用製品の一括分別収集や、製造・販売事業者などによる自主回収と再資源化などを施策として定めており、今回の12事業はこれらの施策に沿うものとなる。

12件の地方公共団体名・事業名・事業の概要は、以下のとおり。

(1)市区町村によるプラスチック使用製品廃棄物の分別収集・リサイクル

  • 宮城県石巻市「プラスチック資源循環に係るリサイクル体制の可能性調査事業」:組成調査と簡易分析を通じて、中間処理施設および保管施設などの規模や処理能力などを調査し、最適な処理スキームと今後の中間処理施設などの設置に向けて検討する
  • 秋田県大仙市、美郷町「大仙・美郷エリアにおけるプラスチック資源循環モデル(仮称)の実現可能性検討事業」:既存のペットボトル回収スキームや一時保管施設などを最大限活用した複数自治体によるプラスチック資源循環モデルの早期実現に向け、大仙市大曲地区と美郷町全域において、焼却処理しているプラスチックごみを一括回収し、収集運搬の合理化を検討し環境性・経済性などを検証する
  • 茨城県石岡市「プラスチックの再資源化に関する実証実験事業」:拠点回収や回収したプラスチックの再商品化の実証や効果を把握し、プラスチックの地産地消モデルを形成する
  • 栃木県宇都宮市「宇都宮市プラスチック資源一括回収実証事業」:居住形態の異なる2地区のプラスチック資源排出量や周知効果を調査し、組成分析などの基礎データを収集するとともに、アンケート調査により住民理解度を把握する
  • 埼玉県さいたま市「さいたま市プラスチック回収先行地域実証事業」:指定法人ルートを活用した一括回収を想定し、簡易分析や住民へのアンケート実施などにより、高齢者世帯などへの周知方法や地方財政を圧迫しない費用対効果を踏まえた最適な分別処理方法を検討する
  • 富山県魚津市「新川広域圏プラスチック資源一括回収合理化検討事業」:新川広域圏事務組合で製品プラスチックを発電燃料処理している4自治体(魚津市、黒部市、入善町、朝日町)において、今後のプラスチック資源化処理に向けた最適な移行モデルを作成し効果を検証する
  • 兵庫県姫路市「プラスチック製容器包装及びプラスチック製品一括回収に向けた実証事業」:容器包装プラスチックと製品プラスチックを一括回収し、組成調査と効果検証を通じて、一括回収に向けた課題を明らかにする。特に、自治体区域内に再商品化事業者が存在しない場合において、どの程度選別作業を省略できるか検証する
  • 広島県呉市「プラスチック資源の分別収集に向けた実証試験」:回収したプラスチック資源の組成分析調査を実施し、一括回収への移行に向けた効果を検証する。中間処理(ベール化工程)における課題や事業者の受入体制の検討のため、同モデル事業の過年度業務で得たデータ・知見を活用し、他自治体にも参考になりそうな課題対策を検討する
  • 大分県佐伯市「持続可能な廃プラスチックリサイクル可能性調査事業」:容器包装プラスチックと製品プラスチックの一括回収の拠点回収実験を指定モデル地区にて実施し、効果検証と組成調査などを通じて、プラスチックの分別収集にかかる収集運搬・リサイクル処理の経費、コークスなど燃料の消費量、発電量への影響などの費用対効果を明らかにする
  • 鹿児島県鹿児島市「プラスチック資源循環推進事業」:容器包装プラスチックと製品プラスチックの一括回収や通常の中間処理施設と古紙業者での圧縮梱包、再商品化事業者での中間処理、再商品化を実施し、移行後における効果を把握し最適なモデルを検討する

(2)地方公共団体が製造事業者等と連携して実施する使用済プラスチック使用製品の自主回収・リサイクル

  • 東京都「みんなでボトルリサイクルプロジェクト」:自治体と日用品業界4社(ユニリーバ・ジャパン・サービス株式会社、花王株式会社、P&Gジャパン合同会社、ライオン株式会社)が協力して、自治体が回収した容器包装プラスチックを指定保管施設に運送し、効果を把握し検討する
  • 広島県「店頭における持続可能なプラスチック資源の循環モデル構築及び次世代型の回収拡大・効率化に向けたスキーム検証事業」:食品トレーなどの製造企業である株式会社エフピコと連携し、店頭回収の課題となっている店舗従業員の負担や回収方法の解決に向けて、効果の検証や店舗へのアンケートを踏まえ、最適な回収方法を検討する

【プレスリリース】令和5年度プラスチックの資源循環に関する先進的モデル形成支援事業の公募採択事業について
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