東京大学はこのほど、野菜や果物などの廃棄食材を乾燥後に粉砕し、水を加えて熱圧縮成形することで、建設材料としても十分な強度を有する素材製造の技術を開発した。

食品廃棄物は、日本では2018年に約600万トンの可食部(食品ロス)と約1,930万トンの不可食部が廃棄物処理されており(※)、高付加価値で活用する新たな方法が求められている。この課題解決に貢献するべく、東京大学は同技術の開発に至った。

熱圧縮成形における最適な温度は100℃前後、圧力は20MPa前後で、原料によって異なると東京大学は発表している。曲げ強度が18MPaの原料もあり、一般的なコンクリートの曲げ強度と比較して4倍の強度が確認された。木材に使われる耐水処理を加えることで、耐水性が求められる環境でも使用できるとしている。廃棄野菜や果物が熱圧縮成形により高い強度が現れる仕組みは検討中だが、熱圧縮成形において熱により食材中の糖類が軟化し、圧力により糖類が流動しすき間を埋めて強度が現れると予想している。

廃棄野菜・果物から製造した素材の例(左から玉ねぎの皮、製造温度が異なるいよかんの皮2種、茶葉、製造温度が異なるキャベツの外皮2種)

東京大学は、製造条件を調整して原料の香りや質感の維持・除去、および色の調整などを行い、粉末にした廃棄野菜や果物に塩・砂糖・コンソメパウダーなどの調味料を加えることで、強度を維持したまま味を向上させられることも確認した。これにより、建設材料程度の強度を有しつつ、使用後には食用としての提供を目的とした素材としても活用できるとしている。同素材製造技術を活用することで、廃棄野菜や果物の焼却・埋め立て・堆肥化による窒素過多を回避するとともに、本来必要とされる資源採取が不要となることから環境負荷低減が期待されることを明らかにした。

※:環境省の食品廃棄物等の利用状況等(平成30年度推計)
【プレスリリース】【記者発表】廃棄食材から完全植物性の新素材開発に成功
*冒頭の画像は廃棄野菜・果物から製造した素材の例(左からキャベツの外皮、いよかんの皮、玉ねぎの皮)。記事中の画像の出典:東京大学