花王株式会社(以下、花王)とライオン株式会社(以下、ライオン)は、東京都墨田区にあるイトーヨーカドー曳舟店と共同で使用済み詰め替えパック(以下、フィルム容器)の分別回収実証実験を実施している。両社はこのほど、2020年10月から2021年6月までの回収状況を発表した。

それによると、2020年10月30日から2021年6月15日までにフィルム容器約5,200枚を回収し、計画に対して約2倍の回収量となった。さらなる回収拡大に向けての課題として、両社は以下を挙げた。回収についての認知度を高め参加を促す啓発活動やフィルム容器の事前洗浄と乾燥を促す活動(効率的なリサイクルのため)、およびフィルム容器以外の混入を防ぐ働きかけ・仕組みの検討である。

両社は、こうした課題を解決するべく下記の取り組み(検討中・予定を含む)を進めていく意向だ。

  • フィルム容器の回収実施・事前洗浄と乾燥・活動目的や回収方法などについて周知を図り、店内掲示や資料配布などで情報提供する
  • フィルム容器以外の混入防止のため、回収箱に注意書きを追加している
  • 活動概念とフィルム容器の洗い方の説明動画を公開している
  • 回収フィルム容器を再生したブロックを使った作品や回収量進捗などを展示し、顧客にさらなる回収協力を促す
  • 再生樹脂からアート作品を創作し、地域住民への還元と環境教育への協力を検討する
  • 回収に関する情報提供の効果や協力に関する実態調査、および回収量・内容の状況と課題などを引き続き調査して改善を目指す
  • 地元の大学生・企業・墨田区役所とワークショップを開催して回収量増加や回収物の活用について意見交換し、生活者の理解と協力を推進することで資源循環型社会の実現を目指す

回収箱

同活動で回収したフィルム容器は花王の和歌山工場に設置したパイロットプラントで再生処理し、リサイクル技術の開発・検証を両社共同で進めていく考えだ。家庭から出る廃プラスチックの分別回収およびリサイクルの状況・課題を調査し、効果的な分別回収工程やリサイクルしやすい包装容器の設計などを検討して、リサイクル率向上と水平リサイクルの実現を目指すとしている。

リサイクルパイロットプラント

プラスチック製品・包装容器の消費者参加型の回収実証実験が多数の民間企業で実施されている。例えば、バンダイナムコグループ4社および花王とユニリーバ・ジャパンなども実施しており、実験結果の発表が待たれるところだ。また、環境省と経済産業省は2022年以降家庭から出るプラスチックごみ全般を一括回収する方針を決定しており、今後プラスチックの資源循環スキーム構築の開発が官民連携で進められていくことが予想される。

【プレスリリース】花王とライオンの協働によるリサイクル実証実験の進捗について
【参照サイト】花王・ライオンが協働してリサイクル実証実験を開始
【参照サイト】今後のプラスチック資源循環施策のあり方について
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*冒頭の画像はイトーヨーカドー曳舟店の使用済み詰め替えパック回収ボックス(赤枠部分)。記事中の画像の出典:花王株式会社