空間づくりを手掛ける株式会社船場は、環境や社会などに配慮した「エシカルデザイン」の普及に向け、サーキュラーエコノミー型事業モデルへの転換を進めている。約2年間かけ、施工現場における廃棄物の一次リサイクル率(現場排出時の分別率)を90%以上に高める仕組みを構築。資源循環型社会の実現に挑戦している。

同社は「気の合うエシカルな仲間たち(グッドエシカルカンパニー)」をビジョンに掲げ、2020年に全社横断型の「ゼロウエイスト推進室」を設置。自社の施工現場で排出している年間約6000トンの建設系廃棄物の削減および「一次リサイクル率90%超」を目標に掲げ、社内外を巻き込むエシカルデザイン活動を始動させた。

「オフィスや商業施設などさまざまな空間のあり方が変容している。特に建築・内装業では老朽化した建物の建て替えや、目まぐるしく変わる需要に対応する改装が増え、環境省によると、産業廃棄物の年間排出量3億7056万トンのうち、建設系廃棄物の搬出量は約7514万トンと約20%を占めている。それらに伴う資源の消費や廃棄物の問題は深刻」と同社は、エシカルデザイン活動の背景を説明する。

「活動を進めるうえで不可欠」と同社が重視したのは、これまで分断されていたサプライチェーン上の業界をつなぐことだった。「空間づくりは、林業などの資源を生む一次産業から建材メーカーなどの製造業、建築・内装業や、廃棄物処理などのリサイクル業が関わる。すべてのパートナー企業と対話し、各々が抱える課題を把握したうえで、業務工程を柔軟に再考した」という。

21年からは企業間連携で取り組む「資源循環型リノベーション」への挑戦を開始した。サプライチェーンを再構築し「つかう資源」と「すてる資源」を循環させ、新たな価値を生み出すエシカルデザインのフレームワークだ。その一環として、現場で発生する「混合廃棄物」を削減するため、重点8品目の分別を実践。施工会社、解体会社、リサイクル会社と、従来はそれぞれの立場で役割が分断されていた業種が垣根を越えて対話を重ねることで、資材の調達から施工、リサイクルまでの連携を進めた。結果、廃棄物の削減と一次リサイクル率90%超の当初目標を達成できた。

対話を重ねることで各社との関係性が深まったとして、同社は「分別・再資源化の詳細情報を可視化する仕組みの構築」を次の目標に掲げている。

一方で、「エシカルマテリアル」の研究開発にも取り組む。独自の選定基準と視点で集めた素材で、サプライチェーンにおけるネットワークを活用し、約100社の建材・原材料メーカーから情報を収集。使用後のリサイクル方法や、再生資源の研究・用途開発を実施している。21年に東京本社のオープンスペースに「エシカルマテリアル」ギャラリーを公開し、23年3月には関西支店にも開設した。

一般消費者へも積極的に発信する。21年から、エシカルな取り組みを発信するイベント「エシカルデザインウィーク」を開催。エシカルに対する意識の高まりが個人の生活レベルにも浸透しつつあるとして、23年は一般参加者向けのワークショップも多数企画している。

直近では「ETHICAL DESIGN WEEK TOKYO 2023」を11月16日~18日にSHARE GREEN MINAMI AOYAMA(東京都港区南青山1-12-32)で開催。エシカルデザインカンファレンスやネットワーキング(ビジネス交流会)、エシカルマテリアル、リプロダクト、ゼロウェイストなどの展示、アップサイクルワークショップなど多様なプログラムを予定している。入場無料。

同月には企業間連携のネットワークで建材を資源循環させる新たな取り組みを公開予定。「今後もエシカルを前面に、サーキュラーエコノミーの社会実装を目指していく」と意欲を示している。

産業は、さまざまな事業者で構成されている。資源循環型社会の基盤づくりには事業者間の連携が必須とされるが、同一の産業でも川上と川下はほぼ異業種であり、それぞれに長年の商習慣や商圏といった垣根がある。創業76年の老舗企業である船場が業界の枠を越えたパートナーシップ構築を呼び掛け、成果につなげたことは大きな前進と言えるだろう。

【プレスリリース】株式会社船場 資源循環型社会の実現に向けエシカルな仲間づくりを本格稼働 肝は業界の枠を越えた対話
【関連サイト】船場エシカルデザインについて
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*記事中の画像の出典:株式会社船場