インドの非営利団体Social Alphaのイニシアチブ「Techtonic-Innovations for Circular Economy」はこのほど、廃棄物を価値に変えることで循環経済を促進するインドの新興企業9社を表彰した。同イニシアチブは、同じく非営利団体Saamuhika Shaktiを通じてH&M財団(本拠スウェーデン)の支援を受け、雇用創出・公正な労働慣行・疎外されたコミュニティの自立支援を通じて社会的包摂を提供する点も評価して表彰企業を選定した。

同イニシアチブは、インドにおける廃棄物管理を加速させると同時に、ウェイスト・ピッカー(廃棄物の最終処分場等で有価物を収集する者)の収入増加・安定につながるイノベーションの発掘と支援を目的としている。表彰したイノベーションは、循環経済において環境スチュワードシップ(管理運用)と社会的責任の両立を重視した。

2024年の受賞者とソリューションの具体的な内容は、以下のとおり。

Canvaloop社のFlaxloopは、化学と機械の工程により、藁由来の農業廃棄物繊維をリネン(亜麻)に匹敵する品質の繊維に変える。農業廃棄物を利用することで、農家に副収入を提供し、ウェイスト・ピッカーにはバリューチェーンにおける研修と労働を提供する。

KOSHA.ai社のFibreSENSEは、繊維製品の素材構成を瞬時に特定できる携帯型デバイスだ。廃棄された繊維製品がリサイクルやアップサイクルのために適切に分別される。ウェイスト・ピッカーにスキルアップや選別・リサイクルにおける雇用機会を提供する。

Microbeworks Scientific社のMicroHuesは、微生物由来の天然で生分解性の繊維染料を提供し、水の使用や合成染料による汚染を削減する。同社は、ウェイスト・ピッカーをラボの技術者やアシスタントに育成し、業務に組み込むことを目指す。

Go Do Good社は、農産物廃棄物・羊毛廃棄物・海藻など再生可能な素材から、持続可能な容器包装・断熱材・インクやコーティング剤を製造する。技術開発と雇用機会を通じて農村地域、特に女性の社会的地位向上と経済的自立を促進する。

Banofi社は、バナナ作物の廃棄物から生分解可能な皮革を製造。従来の動物性皮革と比べ、水使用量・二酸化炭素排出量・有毒廃棄物を削減する。廃棄物調達先である小規模農家の収入増と農作物の焼却削減に貢献。バリューチェーンにおいてウェイスト・ピッカーのスキルを向上させ、雇用機会を提供する。

Bintix社は、家庭用の乾燥廃棄物を収集・タグ付け・分析する技術を活用し、廃棄物の分別・トレーサビリティ・リサイクル効率の向上を目指す。ウェイスト・ピッカーのスキルアップや労働条件の改善を提供し、有害廃棄物との接触を最小限に抑え、地位向上を図る。

NovoEarth社は、鶏肉産業から排出される副産物、鶏の羽毛を原料とするケラチンタンパク質から生分解性ポリマーを製造。バリューチェーンにおいて、ウェイスト・ピッカーはスキルアップが可能で、社会的包摂と雇用機会を提供する。

Sunbird Straws社は、オープンキッチンや埋立地で燃やされるココナッツの落ち葉から生分解性のストローを作り、プラスチック汚染を削減する。女性の雇用と生計向上の機会を提供し、農村部や都市部の女性の失業対策に取り組んでいる。

Angirus社のWricksは、プラスチックや産業廃棄物から変換した耐久性のある建材。建設業の汚染削減を目指す。ウェイスト・ピッカーをサプライチェーンに組み入れ、公正な雇用と尊厳ある労働条件を提供し、社会的公平性を育み、生活を向上させる。

【参照記事】Nine startups awarded to boost inclusive circularity
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