BASFジャパン、興人フィルム&ケミカルズ、TOPPAN、J-オイルミルズの4社は6月19日、ケミカルリサイクルしたポリアミドを用いた食用油向け業務用容器の開発で協業を開始したと発表した。使用済みプラスチックを原料とし、マスバランス・アプローチを活用することで、これまでリサイクルが困難だった複合素材の包装材における循環型モデルの構築を目指す。
バリューチェーン連携で複合包装材の循環へ
今回の協業は、化学メーカー、フィルムメーカー、包装材メーカー、食品メーカーというバリューチェーンを横断する4社が連携し、日本初となるケミカルリサイクル由来のポリアミドを使用した食用油向け業務用容器「BIB(バッグインボックス)」を開発するものだ。まずは2026年3月までに、このリサイクル素材を用いたBIBの供給スキームを確立することを短期目標に掲げている。
協業の核となるのは、ケミカルリサイクルとマスバランス・アプローチという2つの手法だ。
ケミカルリサイクルは、使用済みのプラスチックを化学的にモノマー(分子レベルの原料)まで分解し、新たなプラスチックを製造する技術だ。汚れや異物が付着していたり、複数の素材が混ざっていたりして物理的な再生(メカニカルリサイクル)が難しいプラスチックも原料にできる利点がある。
一方、マスバランス・アプローチは、リサイクル原料と化石由来のバージン原料を製造工程で混合する場合に、投入したリサイクル原料の量に応じて、生産される製品の一部に「リサイクル由来」という特性を割り当てる管理手法だ。これにより、既存の複雑な製造プロセスを大幅に変更することなく、リサイクル材の利用をサプライチェーン全体で促進できる。割り当ては第三者機関によって認証され、トレーサビリティを担保する。
リサイクル困難な複合包装材の課題
協業の対象となるBIBは、プラスチック製の内袋を段ボール箱に入れた液体容器だ。特にリサイクルの対象となる内袋は、酸素や光による内容物の劣化を防ぐバリア性や、輸送に耐える強度を確保するため、ポリエステル、ポリアミド、ポリエチレンといった複数の素材を貼り合わせた複合包材で作られていることが多い。
ポリアミド(PA)は、一般的にナイロンとして知られる高機能プラスチックで、強度や耐熱性、ガスバリア性に優れるため、食品包装の機能性を高める上で重要な役割を担う。しかし、こうした複合包材は素材ごとの分離が極めて困難なため、使用後はその多くが焼却か埋め立て処理されており、資源循環の実現が大きな社会課題となっていた。
今回の取り組みは、この課題に対し、ケミカルリサイクル技術を用いることで複合包材を資源として捉え直し、再び同じ包装材へと再生する「水平リサイクル」を含む循環システムの構築を目指すものだ。
この動きの背景には、日本政府が掲げる「プラスチック資源循環戦略」がある。同戦略では、2030年までに容器包装の6割をリユース・リサイクルすることなどが目標として設定されており、企業にはリサイクル手法の高度化が求められている。
各社の役割と今後の展望
本協業における各社の役割は以下の通りだ。
- BASFジャパン: 海外での商業実績があるケミカルリサイクルポリアミド「Ultramid® Ccycled®」を供給し、熱分解油の精製プロセスに関する知見を提供する。
- 興人フィルム&ケミカルズ: BASFから提供されたリサイクル原料を配合したポリアミドフィルムを製膜し、品質を管理する。
- TOPPAN: 供給された再生フィルムを用いて、液体充填用紙容器「TL-PAKⓇ」を製造・販売する。
- J-オイルミルズ: 最終製品ユーザーとして、自社製品に採用するBIBの最適な包材設計と、強度や内容物の品質保持に関する検証を行う。
4社は今後、容器包装材の調達や販売だけでなく、使用済み製品の回収スキームや熱分解プロセスの構築においても連携企業や団体を拡大していく方針だ。将来的には、事業所から出るごみだけでなく、一般家庭から排出されるプラスチック容器(PCR)への展開も視野に入れ、2030年までに水平リサイクルを含む循環型モデルの社会実装を目標としている。
【プレスリリース】日本初、リサイクル原料を用いて製造したポリアミドから食用油向け業務用容器の開発へ、4社で協業開始 ~ケミカルリサイクルを活用した包装材の循環型モデルの実現を目指す~
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※ 画像はプレスリリースより
