日本磁力選鉱株式会社、ダイキン工業株式会社、株式会社UACJは9月24日、空調機の熱交換器に使用されるアルミフィンの水平リサイクル技術を共同で実証したと発表した。空調機用アルミフィンの再生技術実証実験の成功は業界初だ。
従来、空調機の熱交換器には高純度のアルミ材が使われていたが、使用済みのアルミフィンには銅などの不純物が含まれるため、自動車エンジン部材などへのダウングレードリサイクルしか行われていなかった。ダウングレードされたアルミ材を元のグレードに戻すことは困難であり、リサイクル前後で用途を変えない水平リサイクルによる資源循環が模索されてきた。今回の実証では、アルミと銅の選別精度向上とアルミ材のプレス成形性改善により、リサイクルされたアルミフィンを用いた熱交換器の生産ラインでの製造に成功した。
アルミをリサイクルで製造する際の二酸化炭素(CO2)排出量は、新地金から製造する場合と比較して97%削減できるとされている。今回の水平リサイクル技術により、熱交換器用アルミフィンのライフサイクル全体におけるCO2排出量の大幅な削減に貢献する。
熱交換器は、空調機内で冷媒の熱をアルミフィンを通じて空気に伝える重要な部品だ。使用済み熱交換器のマテリアルリサイクルでは、シュレッダーで細断後、アルミ、銅、鉄などが選別されるが、選別されたアルミには銅やその他の不純物が含まれるため、高い加工精度が求められる熱交換器用フィン材への水平リサイクルは困難だった。
この課題に対し、リサイクルサイトを運営する日本磁力選鉱は、アルミと銅の高度選別技術を開発し、銅成分を当初の約3%から0.1%以下にまで低減することに成功した。素材メーカーのUACJは、銅などの不純物成分が含まれる場合に問題となるプレス成形性を改善したアルミ材を開発。最終的に、ダイキンがそのアルミ材を用いてフィンプレス成形から熱交換器製作までを行い、使用済み熱交換器から新しい熱交換器への水平リサイクルが可能であることを実証した。
今後、ダイキンの工場やアフターサービスで発生する産業廃棄物の使用済み熱交換器を対象に、再生アルミを活用した熱交換器の量産化を進める。その後、業務用空調機など、家電リサイクル法の対象外となる機器や部品へと回収・再生量を順次拡大していく計画だ。
日本磁力選鉱は1949年創業以来、スラグをはじめとする鉄鋼副産物のリサイクルを主軸に事業を展開している。廃家電や廃自動車分野では、独自の選別処理設備により高品位な非鉄原料を国内素材加工メーカーに提供し、スクラップの全量国内リサイクルを目指している。
ダイキンは世界170以上の国・地域で事業を展開する空調のリーディングカンパニーだ。2050年までに世界の空調台数が3倍になると予測される中、空調の使用に伴う電力需要の増大が課題となっており、安全・安心で快適な空気環境を提供しつつ、地球温暖化の影響を抑制することを使命としている。
UACJはグローバルに事業を展開するアルミニウム総合メーカーだ。「アルミでかなえる、軽やかな世界」をスローガンに、飲料缶、自動車、IT機器、空調、航空宇宙・防衛など幅広い分野にアルミニウム製品を提供している。アルミニウムの循環型社会構築に向け、リサイクルを推進している。
【プレスリリース】再生アルミを活用した熱交換器の量産化によりCO2排出量の削減を目指す 空調機用熱交換器のアルミフィン水平リサイクル技術を実証
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