Bioworks株式会社は11月19日、同社が開発した植物由来の合成繊維「PlaX(プラックス)」が、株式会社ゴールドウインの展開するブランド「THE NORTH FACE(ザ ノース フェイス)」と「NEUTRALWORKS.(ニュートラルワークス.)」で初めて採用されたと発表した。両社が共同開発をしたボアフリース(PlaXを使用)のアウターが、2025年秋冬コレクションとして発売された。
今回の製品化は、2022年から続く両社の約3年間にわたる共同開発の成果だ。ゴールドウインが求める高い品質基準、特にアパレル製品で重要となる染色性や堅牢度といった課題をクリアするため、両社は協業して糸の加工条件や設計の見直しを実施。テキスタイルメーカーや染工場の協力も得てテストを繰り返し、素材の改良を重ねてきた。
PlaXは、サトウキビなどを原料とする生分解性バイオマス素材の「ポリ乳酸(PLA)」に、Bioworksが独自開発した植物由来の添加剤を加えることで品質と機能を向上させた素材だ。ポリ乳酸は、カーボンニュートラルな素材として以前から注目されていたが、耐熱性や耐久性、染色性に課題があり、アパレル分野での本格的な普及は限定的だった。PlaXはこれらの課題を克服し、石油由来の合成繊維の代替として期待されている。
Bioworksによると、PlaXは環境負荷低減にも大きく貢献する。同社のライフサイクルアセスメント(LCA)分析では、ポリエステルと比較して、長繊維の製造にかかるCO2排出量を70%、短繊維では50%削減できるという。また、綿との比較では、原料から糸を製造するまでの水使用量を92%削減できるとしている。さらに、工業用コンポスト環境下で水と二酸化炭素に分解される生分解性を持ち、将来的には使用済み製品から同等の素材を再生産する「ケミカルリサイクル」への適合性も高く、資源循環の実現に向けた研究開発が進められている。
今回発売された商品は、「THE NORTH FACE」の「Extreme Pile Hoodie Jacket」と「NEUTRALWORKS.」の「SNOWMELT/ FULL ZIP FLEECE」の2製品だ。いずれも表地のフリース部分にポリエステル、アクリルと並んでポリ乳酸(PlaX)が17%使用されている。
ゴールドウインは、長期経営戦略の中で「循環型社会の実現」を重要課題の一つに掲げ、製品の廃棄ゼロや環境配慮型素材への転換を推進している。Bioworksは、今回の採用を足がかりにPlaXの採用拡大を進め、ファッション業界における環境負荷低減と循環型社会の実現に貢献していく方針だ。両社は今後も、素材開発と製品設計の両面から連携を深め、持続可能なものづくりを加速させるとしている。
【プレスリリース】植物由来の次世代合成繊維「PlaX」が、「THE NORTH FACE」「NEUTRALWORKS.」で初採用 Bioworksとゴールドウイン、PlaXボアフリースを共同開発
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