アムステルダムはオランダ王国の首都であり、最大の都市。面積約217平方キロメートル、人口約82万人で180を超える国籍の人々が暮らす。運河が張り巡らされ、その運河には2500を超えるハウスボートと呼ばれる船型の家が点在し実際に人々が暮らす。街なかにあるコーヒーショップで大麻を購入できること、「飾り窓」で有名な売春が合法の赤線地帯があること、さらに世界に先んじて2000年に同性婚を合法化したことなどは、自由で多様な街アムステルダムとしてのアイデンティティ形成に大きく寄与している。それでは、このアムステルダムにおけるサーキュラーエコノミーへの移行はどのような状況なのだろうか。
サーキュラーエコノミー変遷と動向
2050年までに100%サーキュラーエコノミー実現・ドーナツ都市計画の導入を発表
アムステルダム市は2015年、世界の自治体として初めてサーキュラーエコノミーへの移行に向けた可能性について詳細な調査を行い、その後2050年までに100%サーキュラーエコノミーを実現すると宣言。具体的な戦略として、サーキュラーエコノミー移行の5年計画「Amsterdam Circular 2020-2025 Strategy(アムステルダム市サーキュラー 2020-2025 戦略)」を公表した。本戦略のなかで、アムステルダム市は2050年までに次のような目標を達成するとしている。
- 2022年までに市の調達の全体の10%を循環型にすること
- 2023年までに市の建築に関わる入札案件を循環型にすること
- 2025年までに市の調達の50%を循環型にすること
- 2030年までに一次原材料の使用は50%以下とすること
- 2050年までに完全なサーキュラーエコノミーへ移行
さらにアムステルダム市はイギリスの経済学者であるケイト・ラワース氏が提唱するドーナツ経済のモデルを採用することを発表。都市の豊かさは、これまでの「成長」によるものではなく、「繁栄」によって成し遂げるべきだと示した。
ケイト・ラワース氏が考案したドーナツをアムステルダム市に適用した図(「Amsterdam Circular 2020-2025 Strategy」 P14より)
サーキュラーエコノミー移行のためのデータ活用
アムステルダム市では「マテリアル・モニター」を立ち上げた。これは、政策設計者と市民にサーキュラーエコノミーに関する目標達成の進捗を開示し、資源利用による社会・環境への影響を示すことを目的として運用されている。このマテリアル・モニターによって解明を進めるのは次の通りの現状と進捗だ。
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