アムステルダムには年間2000万人を超える観光客が押し寄せる。その多くがホテルに宿泊するため、市内のホテルでは合わせて1700万泊分も人が寝泊まりして飲食する計算だ。87万人都市のアムステルダムにとって、ホテル産業は資源循環や経済面で大きな影響があり、市の循環型経済を確立するための重要分野となっている。このアムステルダムで今、自治体の旗振りのもと、数多くのホテルが循環化のために集まる共同体「サーキュラー・ホテルズ・リーダーズ・グループ(オランダ語:Koplopergroep Circulaire Hotels)」が注目を集めている。

今回Circular Economy Hub編集部は、サーキュラー・ホテルズ・リーダーズ・グループを行政の立場から支援する担当者でアムステルダム市サステナビリティ・アドバイザーのFroukje Anne Karsten(フラウキエ・カーステン)氏に話を聞いた。

アムステルダム市サステナビリティアドバイザーでサーキュラー・ホテルズ・リーダーズ・グループを担当するFroukje Anne Karsten氏/Image via Gemeente Amsterdam

下記Froukjeさんの話:

市内ホテルが手を取り合い循環型の仕組みをめざす

住民約87万人が暮らすアムステルダムには、年間およそ2170万人もの観光客が押し寄せます。多くの訪問者が寝泊まりをし、飲食をするホテルとは、多くの資源が消費されている現場であり、アムステルダム市の循環型経済確立のためには欠かせない拠点です。例えば、市内のホテルでは年間1700万泊もの利用がありますが、それぞれ一泊あたりシャンプーのミニボトルをひとつ使うと年間1700万個ものプラスチックボトルが廃棄される計算です。これは市の循環を考える上で決して無視できる数字ではありません。また、ごみの分別なども宿泊ゲストの協力無しには実現できないでしょう。

※コロナ前、2019年の旅行者数

ホテルはサプライヤー、廃棄物回収業者、ホテルゲスト、地元住民や地元組織らからなるシステムの「つなぎめ」であり、よってこのホテルがサーキュラーエコノミーへと歩みを進めることは市の循環化にとって必要不可欠なのです。

「サーキュラー・ホテル・リーダーズ・グループ(Koplopergroep Circulaire Hotels)」は、アムステルダム市内ですでに持続可能で循環する運営確立に向けた歩みを進めている、20あまりのホテルからなるインタラクティブなプラットフォームです。サーキュラーエコノミーを進むべき社会全体を示すコンパスとして、どのようなホテル運営を行っていくべきか考えます。そのために必要なベストプラクティスを共有し、例えば製品に関しての正しい情報はどこに行けば得られるのだろう?と言った疑問に対して互いに知っていることを共有し合い、実践します。

サーキュラー・ホテルズ・リーダーズ・グループ紹介動画

現在ではQOアムステルダム、ホテル・ジャカルタ、コンシャスホテルなど、独立ホテルブランドや大手ホテルチェーンの系列ホテル、ラグジュアリーホテル、手頃なホテルなどの多様な20あまりのホテル事業者とホテル学校ホテルスクール・ザ・ハーグが参加しています。

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アムステルダム市としてはホテル事業者に対して、コミュニケーションを通じて、サプライチェーン(垂直的アプローチ)やセクター(水平的アプローチ)にいる複数のプレイヤーが協力することを奨励し、可能な限りのサポートを提供しています。食品廃棄物や不要な資源消費を削減するための実践方法を模索し、例えば朝食のビュッフェをアラカルトメニューに変更したり、バスルームでは回収したコーヒーのかすやオレンジの皮から作られた石鹸を使用したりと、様々な工夫が凝らされています。

持続可能な循環型ホテル運営を実現するにしても、数多くの選択肢があり、何が本当に良いのかというのは難しい問題です。例えば、所有とレンタルどちらが良いのかは状況によるとしか言えません。また、もちろん数字や目標を明確に掲げることは間違いなく大切ですが、何よりも、その人たちのビジョンやアイデンティティに何が本当にフィットするのかをきちんと問い、答えを見出すことが非常に重要だと感じています。

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サーキュラー・ホテル・リーダーズ・グループ発足のきっかけとなったのは、2016年に「サステナブル・ホテル・カンファレンス」を開催したところにさかのぼります。それまでも一部のホテル事業者は節エネ・省エネの観点からの再生可能エネルギーの利用、クリーンモビリティなどについては強く関心を持ち、実践していた人たちもいました。

そんな中、オランダとアムステルダム市はそれぞれサーキュラーエコノミー戦略を発表し、国内ではサーキュラーエコノミーがホットトピックになっていました。そこで、市内のすべてのホテル事業者たちを招き、カンファレンスを行ったのです。当時サーキュラーエコノミーは新しい概念だったため、サーキュラーエコノミーとは何かといった話からはじめ、サーキュラーエコノミーへと移行することはホテルにとってどのような意味を持つのか考えてもらうきっかけを作りました。循環型の食のサプライチェーンについて強い関心を持ったホテルも多くいました。

これをきっかけに、特に持続可能なホテル運営に強い関心を寄せ、すでに自分たちなりの施策を始めていた10のホテルを選定してできたのが「サーキュラー・ホテルズ・リーダーズ・グループ」です。グループを結成するとすぐに会合を行いました。とても興味深かったのは、みんなアムステルダムのホテルで働いているという共通点から、すでに顔見知りのメンバーも多くみられたのにも関わらず、お互いにサステナビリティについて相談したり話し合ったことがなかったという点です。多くのホテルが持続可能なホテル運営を目指す上で共通の課題を感じていたのにも関わらず、それぞれが孤軍奮闘していた訳です。横のつながりができたことで、それぞれの課題や知識、経験を共有し合い、さらにはサプライチェーンという縦のつながりをつくり、巻き込むための母体ができたのです。こうした意見や情報交換のための会合を6回ほど繰り返したのちに、そこで得た知見を市内すべてのホテルに共有するためのイベント、「サーキュラー・ホテルズ・カンファレンス」を2018年10月にホテル・ジャカルタ・アムステルダムで開催しました。以降月に一回ほどの会合(コロナ禍ではオンラインに切り替えて実施)を開いており、現在では20あまりの参加ホテルがいます。


image via Gemeente Amsterdam

リネンのサプライチェーンを巻き込み循環化

このグループから、とても良い連携も生まれています。ホテルでは、お客様に快適な滞在を楽しんでもらうために洗いたてのシーツやタオルなどのリネンを多く使います。何度も繰り返し使用・洗濯するとリネンはボロボロになってしまうので使い続けることができません。ところが、これまでこのリネンの原材料であるポリエステルやコットンはリサイクルされていませんでした。

2年ほど前でしょうか、グループの中で、この課題について何かアクションを起こそうということになりました。そこでメンバーたちはリネンを提供している業者、製造業者、回収業者とサプライチェーンに関わる事業者たちをたどり、巻き込み、持続可能なリネンの製造運用について対話ができるまでになりました。

そして今現在、まさにサプライチェーン全体で持続可能なリネンを目指すという同意を取り付けようとしています。この先何年で、何%以上リサイクル素材をつかったリネンを製造・利用するといった具体的目標に落とし込もうとしているのです。これは非常に大きな前進です。ホテルはホテル業界だけに閉じてしまうのではなく、サプライパートナーに正しい質問を投げかけ、変化を起こすための働きかけをしており、その取り組みが実を結ぼうとしています。今年の年末までには良いご報告ができるでしょう。

大手独占型の食の流通から脱却することで見える価値

ホテルの運営によって起きる環境負荷を可視化する/Image via Gemeente Amsterdam

食は、ホテルが深く関わっており、大きな変化を起こせる本当に素晴らしい分野です。実に多くの人・様々な分野とつながっており、しかも食文化はアイデンティティを形作る重要な要素です。私たちはグループの中で地産地消の食プロジェクトチームをつくり、ホテルを起点とした循環する食料のシステムの確立に向けて取り組んでいます。

現在の食料システムの一番の課題は、すべてのホテルがたった数社の大きな食品会社から製品を購入していたことです。これらの大手食品会社はグローバルの流通網を駆使して、ありとあらゆる食材を供給できることを強みとしています。一方で、グローバルな流通網を利用することは、地元の農家から食材を買うことで地域での循環を生み、その地域での生物多様性を回復させようという動きに歯止めをかけてしまうことでもあります。さらにこれらの大手企業は一定量の野菜を調達できれば良いため、どの農家からどのような個性を持った野菜を提供してもらうかといったことには関心がありません。野菜はすべて一緒くたに扱われてしまうため、じゃがいもはただのじゃがいもに過ぎないのです。これでは買い手にとっても、その生産者の育てるじゃがいもの特性を理解しづらいですし、農家にとっても、自分たちが育てたじゃがいもが他の農家のものとごちゃまぜにされてはより良いものを育てるモチベーションが削がれてしまうでしょう。

これを、個々の農家を特定できるようになると、どのような人たちがどのような品質の食材を育てているかを詳しく食べる人に伝えることができますし、地元の農家にとっても特色ある野菜を高付加価値で提供できるといったメリットが生まれます。

コロナ禍で実際では実際に会うことが難しい時期もありましたが、オンラインだからこそ繋がりやすいというポジティブな側面もありました。いつもは農作業で忙しく、なかなか市内中心までこれない農家の方たちとホテル参加者たちとでオンラインミーティングを実施したのです。それは素晴らしい会になりました。農家の方々は美味しい食材をつくることに情熱を燃やしており、ホテルたちは美味しい食事を提供することに情熱を燃やしています。その二者が出会ったことで、より良い食の生産のための素晴らしい対話の場が生まれました。前向きなエネルギー溢れる時間でした。

こうした情熱を持った生産者の食材を、それとわかるようにホテルに流通させるのにはどのようにしたらいいのかというのが次のステップです。(農家の方々は多くの場合野菜を育てることに忙しく、流通の仕組みまで手が回らないという人も多いのです。)

ホテル・オークラ・アムステルダムは繊細かつ大胆な素晴らしい料理を提供するレストランが有名でミシュラン2つ星を獲得しており、国内外から多くの人が食べに訪れるほどですが、この食の循環化プロジェクトを主要メンバーとして推し進めています。こうした取り組みからイノベーションが生まれ、さらなるクオリティと高い価値の食を提供してくれることでしょう。

ミシュラン2つ星を誇るホテル・オークラ・アムステルダム内シグニチャーレストラン「Ciel Bleu」は、市内ホテルや近隣地域の食の生産者ともにと循環する食のシステム構築に向け取り組みを進める/Image via Ceil Bleu – Okura’s Facebook Page

参加メンバーのホテルスクール・デン・ハーグは、教育研究機関という立場を活かし、参加ホテルが使う食材がどこから来るのか、地元地域内の生産者がつくる食材で代替できないかといった研究を進めています。研究にはホテルのシェフも加わり、価値ある食を提供する方法を模索しています。グローバルサプライチェーンを駆使する大手食品会社からではなく、地元農家から食料を購入することは、持続可能なホテル運営を実現する上で重要な手段です。短いサプライチェーンはレジリエンスをもたらしてくれることもありますし、ゲストに伝えるストーリーになりますから。例えば、季節のものを多く買って利用することも地元生産者から購入し、レジリエンス高い運営をするためには重要です。

こうした関係各社と関係性を築き連携することや研究によって状況分析・効果的な施策の割り出しを行うことなどは、短期的ではなく長期的な視点へとシフトし、システムチェンジの実現を大きく後押ししてくれるはずです。

地元コミュニティへの貢献を考えることで高まるレジリエンス

さらに現在、市内の多くのホテルが「地元の人たちのために何ができるだろう」と考えて実践を進めています。この傾向はコロナで観光客が激減した影響でより強くなったと言えるでしょう。国境が閉まってしまったとしても、ここに暮らす住民は快適なホテルステイを楽しんだり、ホテルのレストランでこだわりの料理を堪能したりできるのです。一部のホテルはアムステルダム市民のためのプランを用意したり、住民たちが集まって何かをするときにホテルのイベントスペースを提供したりしてきました。

このように地元コミュニティへの貢献を考えれば考えるほど、レジリエンスは高まり、サーキュラーエコノミー実現へと確実に近づいていけると感じています。

例えば、参加メンバーのホテル・カサアムステルダムは客室の一部を学生用居住空間として提供しています。学生たちは夏の間はどこかに行かなければいけない、という契約です。つまり、繁忙期の夏休み期間は観光客を受け入れ、それ以外の時期は学生にも住まいとして客室を提供する。従来型のホテルの概念では考えづらかった組み合わせですが、こうすることでホテル自身のレジリエンスも上がり、旅行客以外とも接点を生み出すことができます。

グループ参加メンバーのStudent Hotelも一部客室を学生寮として開放するという同じ戦略を取っています。アムステルダムは年間を通して多くの人が訪れる魅力的な都市ですが、コロナがこの先なくなることはないと考えると必然的にこのようなレジリエントな運営が必須となることがわかるはずです。

また、同じく参加メンバーのホステルClinkNOORDは、近くで毎週末開催されているマーケットで売れ残った食材を引き取って宿泊客に提供しています。ホステルにはキッチンがあるため、宿泊客はここで地元のおいしい食材を使って自由に料理して食べることができるのです。

Image via Hotel ClinkNOORD Facebook page

多くのホテルは、住民とつながるための取り組みを広げ、近隣住民や地元住民にとってどのような存在になれるか考えています。その結果新しいアイディアが生まれ、ホテルと住民はより密接に相互作用することができるようになります。このようなつながりによる価値が生まれる現場を目の当たりにすると、サーキュラーエコノミーが作用するのは環境だけに留まらず、社会的にも作用するということを強く実感します。

課題は人手不足と知見不足。しかし実践するからみえることがある

ホテル産業で現在の顕在化しており、最も深刻な課題は人手不足です。昨年から今年初頭にかけての新型コロナ感染予防措置としてのロックダウンなどの影響で、ホテルやレストランは事業継続が難しく、多くの人を解雇せざるを得ませんでした。その後業績が回復したからといって、一度解雇された人が急に戻ってきてくれる訳ではありません。生活があるため、多くの人が別の分野で仕事を見つけてしまっているためです。しかも今後の感染状況や取られ得る予防措置について見通せない以上、多くの事業者は急に多くの人を採用することにも慎重になっています。こうした理由から、サステナブルな運営を進めるためのプロジェクトにまで人員を避けないといった状況が一部で起きています。

人手不足にあえぐホテル産業は人材採用を強化している/Image via Student Hotel Amsterdam’s website

また、もう一つの課題としては、循環化のためのひとつひとつの施策をどのようにつなげれば実際のインパクトにつなげられるのか、多くのことがわかっておらず手探り状態であるということです。多くのホテルが地元のサプライヤーから食材を買い付けるようにしたり、プラスチックをほとんど使わないようにするなど取り組みを進めていますが、アムステルダムでホテル業界を横断する共同体として、経済・社会・環境に大きな影響をもたらすまでにはまだ長い道のりとなるでしょう。しかし、まずはみんなで始めて、実践するからこそ見えてくることがあると信じています。

サーキュラーエコノミーに取り組むことは「再編成」すること

私たちはホテル産業の循環化に向けた旗振りはしていますが、加盟していないホテルに対して積極的に勧誘することはしていません。なぜならば、自ら必要性を感じ、行動に起こしたいというモチベーションの高まりが必要不可欠だと感じるからです。コストに関しても同様で、私たち行政から(必要な研究実施費用などを除いて)資金を提供することもなければ参加ホテルに参加費を徴収することもしていません。私たちがホテルに求めるのは、サーキュラーエコノミーに対して長期的にコミットをすることだけなのです。

短期のプロジェクトに比べて長い目で見る必要があるため、忍耐が必要な場面もあります。もう少し早く進めたいと思うこともあります。大きなホテルチェーンの系列であるホテル事業者などは本社と交渉しなければいけない場面も多く、これにも時間がかかります。しかしそれぞれの参加ホテルが自分たちの立場で考え、実践することが何よりも大きな価値なのです。

すでにアムステルダム市内では市の基準により、ホテルを新規建設・開業する場合サステナブルな建築などの基準を満たさなければ許可が降りません。私個人の意見としては、建物についての基準はもっと厳しくしたほうが良いと感じていますし、その他の運営・調達に関する基準にしても同様だと思っています。気候変動は喫緊の課題であり、私たちにもう時間は残されていないのですから。ただ、市としては事業者らに基準を示し、段階的に基準を引き上げることで、すべての事業者に諦めることなくついてきてほしいと示しています。こうすることで経済全体の持続可能性向上を図っているのです。

これはホテル業界においてだけではありません。オランダは国としても、この先5年以内にすべての商業用の建物はエネルギーの再エネ化などを達成しなければいけないという国内すべての事業者を対象にした規制を実施しています。

問題はオランダ国内の事業者に留まりません。ホテルが深く関わる観光産業では、特に近年オーバーツーリズムが問題となっていますが、これは国外から乗り付けている格安エアラインが大きく影響しています。多くの旅行客はアムステルダムの地元の文化や歴史、暮らしを知り、街とつながりたいと感じています。市内のホテルも同様に街の文化や価値を伝える情報発信をできていると思います。

問題を引き起こしているのは一部の旅行者だけですが、こういった人々のほとんどはホテルには宿泊せず、Airbnbなどの格安バケーションレンタルに泊まり、格安航空券で移動します。街のバランスが崩れてしまっている原因はこうしたところにあるとわかっているのです。解決策として、オランダは鉄道網を強化し、今年からはブリュッセルやパリに加え、ロンドンやウィーンまで高速列車や夜行列車で移動できるようになりました。格安航空券がファストトラベルの象徴だとすると、寝台特急はスロートラベルの象徴だと言えるでしょう。しかし、これだけでは行政としての取り組みはまだまだ足りません。予約システムもまだまだ煩雑ですし、価格についても競争力があるとは言えません。鉄道網だけといった一面的な施策ではなく、ホリスティックなアプローチを加速させる必要があります。

オランダは行政として、本来の環境・社会コストも反映したフェアな価格に誘導するための施策を加速させなければなりませんし、同様に新しい製品よりも再利用・リサイクル製品のほうが安くなるよう、そして地元で小さなループを築く方が価格メリットが生まれるようシステム構築を進めることが求められます。都市と近隣地域に位置する農家が繋がり、相互関係性を高めることは地元住民にとってもより大きな価値を生み出すことになるのです。

フラウキエさん

私は、サーキュラーエコノミーに取り組むこととは「再編成」することであると感じています。サーキュラーエコノミーを目指す中で、新たなパートナーと新たなビジネスモデルを織り成すことです。利益やコストを誰かが独占したり一社だけで負担するのではなく、サプライチェーンの他の企業と分かち合い、産業を超えた広い視野で創造することなのです。

現在アムステルダムではサーキュラリティ観測システム導入に向けて、アムステルダム市統計局と情報室イノベーションチームが連携して開発を進めており、数か月以内に実装する見込みです。これはホリスティックにシステム移行を進める上で大きな追い風となるでしょう。この観測システムの実装により、どのように資源がアムステルダム市に流れ込み、通過し、出ていくのかが可視化され、都市・事業者・住民らの生産と消費に関する情報をもとにLCAなどを用いて環境負荷が明らかになります。今度アムステルダム市がプラネタリーバウンダリーを脅かさない範囲で豊かな住民の暮らしを実現する「ドーナツの円」の上での活動を可能にする、政策の舵切りのための重要な羅針盤となるでしょう。

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編集後記

アムステルダム市の自治体としてのフラウキエさんのイニシアチブと、それに応え自ら手を挙げて参加するホテルらが実際に様々なプロジェクトを始動して現場を変える推進力を目の当たりにすると、ポジティブな対話を繰り返す場の重要性について再認識させられる。野心的な目標を掲げるアムステルダム市だが、そこで活動する事業者を振り落とすのではなく、共に階段を登り、共に変わっていくこと自体に価値があると辛抱強く働きかける姿勢が本質的な変化を呼ぶのだろう。今後サーキュラリティ測定システムの導入によってアムステルダムのサーキュラーエコノミー移行がどのように前進していくか編集部では最新動向を追う。

【参照】アムステルダム市サーキュラー・ホテルズ・リーダーズ・グループウェブサイト