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インタビュー

地域と共に繁栄する。小田急電鉄のコミュニティを大事にするサーキュラーエコノミー 

地域と共に繁栄する。小田急電鉄のコミュニティを大事にするサーキュラーエコノミー

私たちの生活と切っても切り離せない鉄道。大手鉄道会社の事業は、本業となる輸送事業に加え、移動需要を創出するインフラ事業である鉄道ターミナル・商業開発、不動産、娯楽など、さまざまな領域にわたる。それらの事業の繁栄のためには地域の繁栄が不可欠であり、そこで暮らす地域住民と密接に関わる業態である鉄道会社は、沿線地域の環境整備やコミュニティづくりに大きな役割を果たす。

そんな中、近年世界中で急速に広まりつつある「サーキュラーエコノミー(循環型経済)」の概念を事業やまちづくりに取り入れ、地域と密接に関わりながらサステナビリティ活動に取り組んでいるのが、鉄道大手の小田急電鉄株式会社だ。

2020年9月、同社が神奈川県・座間市で展開するホシノタニ団地の「循環型コミュニティの創出」事例が、WCEF(World Circular Economy Forum:世界循環経済フォーラム)の主催機関でもあるフィンランドのサーキュラーエコノミー推進ファンド、 Sitra の「世界を変えるサーキュラーエコノミー・ソリューション」に選定された。今回、世界全体で39の事例が選出されたが、日本企業・団体としては初となる(*株式会社日本環境設計も同時選出)。

今回編集部では、Sitraの選出対象となった座間市のホシノタニ団地に加えて、同社が力を入れている座間市とのサーキュラーエコノミー連携事業について伺った。インタビューに答えていただいたのは、小田急電鉄株式会社経営戦略部課長 サーキュラーエコノミーPJ統括リーダー 正木弾さんと経営戦略部スマートシティPJ/サーキュラーエコノミープロジェクト DX推進マネジャーの米山麗さん。ともに同社のサーキュラーエコノミー事業を推進する立場にある。

小田急電鉄株式会社 経営企画部 米山 麗 さん(左)と正木 弾 さん(右)

小田急沿線は日本の縮図

まず、正木さんより小田急沿線地域が抱える課題からご紹介いただいた。小田急電鉄の総距離は120km。沿線地域の人口は約520万人。新宿、箱根、世田谷、厚木など、都心や観光地、住宅地や工業地帯など多様な顔を持つ。そのぶん多摩ニュータウン地区などの高齢化、山林地帯での獣害被害、新宿の高層ビルの老朽化など、課題も一様ではないという。

小田急路線図(提供:小田急電鉄) 

「当社の沿線地域は、(多様な地域があるため)まさに日本の縮図とも呼べるかもしれません。そのため、各課題を解決し、先進地域となることで、日本全体にもノウハウを共有できるのではないかと考えています」と正木さんは話す。

同社は多様な課題を一つ一つ紐解きながら活動を行っている。例えば、傘の忘れ物対策として、駅にシェリング傘サービス「アイカサ」のスポットを設置し、さらにはONE(オーネ)という同社のサービスプラットフォームと連携するなどの仕組みを導入。また、小田急グループが運営する店舗から出る食品ロスに対しては、廃棄抑制施策のうえなお残る食品残渣を、提携する日本フードエコロジーセンターへと運び、豚の飼料にする。その飼料で育った豚を、同社グループで販売している。

小田急沿線 (提供:小田急電鉄)

これらは同社が進める循環型まちづくりの取り組みの一例だが、同社の認識ではまだまだ解決すべき環境課題が山積みだという。そのなかでも特に廃棄物を巡る課題は深刻だ。小田急の商業施設から排出されるリサイクル率は47%となっており、大きく改善の余地があると同社は捉えている。

加えて、同社独自の経堂・世田谷・下北沢エリアでの聞き取り調査では、事業系一般廃棄物の回収費用の高騰が確認されているという。これは、中国や東南アジア諸国の廃プラ輸入受け入れ拒否や収集事業者の人手不足などが主因だと推測され、そもそも収集事業者を見つけることができないケースも増えてきているそうだ。

収集事業者の「人手不足による在籍社員の負担増」、幾度となく聞くこの課題の本質は何なのか。正木さん含むチームメンバーは、実際にパッカー車に乗って、ごみ収集業務を体験し調査した。そのときの経験を正木さんはこう話す。

「排出側の分別ルールが多様であることや、マニフェストの記入を含めた事務作業の煩雑さなど、ごみ収集業務には多くの課題を抱えていることを肌で感じました。また、リサイクル率を上げたいと収集事業者にお願いしても、同じ素材を多く集めることは難しいのです。リサイクル業者にとっても施設をつくりたい思いはあるものの、効率よく安定的に素材を集めるにはハードルが高いといったことも分かりました」

人手不足により分別回収ができないと、資源循環を推進するどころか後退してしまう懸念もある。インフラ事業も担う同社としても、「動脈産業側と同じくらい静脈産業も重要視し、何か当社が貢献できることがあるのではないかと考え、取り組みをスタートさせました。その軸となるのがサーキュラーエコノミーなのです」(正木さん)と、サーキュラーエコノミーを同社の事業の柱として位置づけた。

座間市の事例:ルビコン社との提携による廃棄物収集のDX

小田急は2019年6月、かねてより資源循環に取り組む座間市と「サーキュラー・エコノミー推進に係る連携と協力に関する協定」を結んだ。その活動の一つが、デジタル技術を活用したごみ収集業務のスマート化実証実験だ。

サーキュラー・エコノミー推進に係る連携と協力に関する協定締結式の様子(提供:小田急電鉄)

これに先駆けて同社は2019年3月、廃棄物処理テック新興企業の米ルビコン・グローバル社(以下、ルビコン社)と基本合意書を締結し、連携関係を構築。人手不足に悩む座間市で、ルビコン社のテクノロジーを生かし、「収集」に焦点を当てることになった。(ちなみに、ルビコン社も、Sitraの「世界を変えるサーキュラーエコノミー・ソリューション」に選出されている。)

デジタル技術を活用したごみ収集業務のスマート化実証実験の概要

同実証実験は2020年8月18日から開始した。目的は、収集状況のリアルタイムモニタリングによる業務の効率化、収集車両を活用した市域内インフラの効率的なチェック、そしてそれらを活用した新たな市民サービスの可能性の検討の3つだ。

ルビコン社が開発したデジタル技術を、座間市の廃棄物収集の現状に合わせて最適化した。今回、「ルート・サポート」「ワーク・サポート」「ドライブ・サポート」「スマートシティ」という4つの機能を検証する予定だ。

 

実証実験の概要が解説された動画(小田急電鉄公式チャンネル「OdakyuMovie」より)

ルート・サポート

集積場を登録することで、ルート案内や急な収集体制の変更、リアルタイムの収集状況を加味して、ルート変更をサポート。ドライバーの負荷軽減を支援。

ワーク・サポート

収集状況管理。車両の位置や収集状況をマップ上でモニタリングできる。計量表をスマホで撮影して送信可能に。自動的に集計し、業務管理の効率化をサポート。

ドライブ・サポート

速度、急発進、急ハンドルなど運転の記録ができる。さらに、車両の点検情報を管理して車両を管理。

車両を写真で撮影する様子(提供:小田急電鉄)

スマートシティ

道路インフラの劣化や不法投棄などをドライバーが発見した場合、管理者に写真を送信することができる。市民サービスの向上にもつながる仕組みだ。

導入による効果と期待

今回の実証実験では、幾重もの効果が確認されたという。その例を下記に挙げる。

  • 中間処理場で受け取った計量表を事務所に持ち帰って入力保管していたが、スマホで収集量を入力するだけよい。
  • 市民から収集状況の問い合わせがあった際に、収集状況をリアルタイムで把握できるので、すぐに対応できるようになった。
  • (今後は)パッカー車の位置も公開していくことで、市民が収集のタイミングに合わせてごみを出せるようにすることも検討している。結果、カラスなどによる被害を減らす可能性も期待できる。
  • ドライバーと整備担当がリアルタイムにやり取りできることで、スムーズに不具合を発見できる。
  • 不法投棄やインフラ不具合状況の写真送付など、廃棄物収集の業務を超えたさまざまな街の情報収集に資する社会的な役割も果たせるようになる。

収集員との「つながり」が、住民の意識変化につながる

環境の観点から見ると、リサイクルするうえで要となる収集の効率化はもちろんのこと、例えばルートの最適化によるCO2排出削減や、タイムリーな修理による無駄な資源浪費の防止なども期待することができる。小田急は、こういったインフラ基盤構築をサポートする役目を果たしていきたい考えだ。

また、ルビコン社の技術を採用するまでは、収集員の担当エリアを定期的にローテーションさせることで仮に欠員が出ても対応できるようにしておく必要があったが、ルビコン社のアプリの導入により、誰でもスマートフォンを見れば最適なルートが分かるようになることで、意外な効果も期待できるという。

正木さんは、「同じ場所だけを回るようにすることで収集員と住民とのつながりが強くなり、結果として住民がよりきれいにごみを捨ててくれるようになります。そういった積み重ねで、人と人とのつながりもつくりたいと考えています」と話す。

ホシノタニ団地の事例:リノベーションを通じた循環型コミュニティの創出

ホシノタニ団地(提供:小田急電鉄)写真はホシノタニマーケット時に撮影 

座間市での取り組みのなかでも、もう一つ大きなものがある。Sitraの「世界を変えるサーキュラーエコノミー・ソリューション」に選出されたホシノタニ団地である。リノベーションを通じた循環型コミュニティの創出が選出理由だ。

小田急がとった選択肢。ホシノタニ団地のリノベーション事業の概要

座間駅は、小田急沿線のちょうど真ん中あたりにある乗降客数約3万人の各駅停車駅だ。この3万という数は決して大きくなく、不動産マーケットとしても沿線の中で最も価格が低い水準にある。そのような課題を抱える座間駅の周辺でどのように土地を活性化していくかが課題となっていた。

4棟からなるホシノタニ団地は、小田急の社宅として使われてきた。最も新しい棟でも建てられたのは1970年。すでに築50年が経過し、老朽化対策が必須となった。

「住居としては効率よく設計されていましたが、棟間の敷地が有効活用されていませんでした。駅のホームから見える場所にあるため、閉ざされた空間ではありません。開けたスペースにしていくことが、駅周辺の賑わい創出にも寄与していくと考えました」と担当の米山さんは話す。

駅周辺の活性化と聞くと、「再開発」という言葉が頭をよぎる。しかし、小田急がとった選択肢は別だった。決定過程について、米山さんは次のように説明した。

「社内でいくつかの選択肢を検討しました。そのなかでも、建て替えによる賃貸や分譲住宅、土地自体の売却という選択肢がありましたが、不動産マーケットの観点から採用にはハードルがありました。駐輪・駐車場への転換利用は、本来の目的である駅周辺の活性化には寄与せず、最終手段として捉えました。

「最終的にとった選択肢はリノベーションです。既存の構造を生かしながら賃貸住宅を開発していこうという方針に決定しました。少額投資による付加価値の創出が目的です。また、新規沿線住民の流入が見込まれ、周辺エリアの価値向上が期待できると考えたこともその理由です。」

ホシノタニ団地の俯瞰図(提供:小田急電鉄)

リノベーションにあたっては、目指すべき団地像を定めたうえで設計が行われた。「古き良き時代に賑わっていた頃の団地の原風景を、現代風にアレンジすることを意図しました。人が中心にいる本当の駅前広場。団地と駅前の未来は、鉄道会社でなければできないと当社は考えました。コンセプトを、『人と自然、人とまち、人と人がつながる住まい』と定めています。」

リノベーションは、シンプルなライフスタイルを追求する層に人気の高い、建築設計事務所ブルースタジオが担当。スタイリッシュな内装へのリノベーションとともに、喫茶ランドリーやイベントなどが実施できるユーティリティスペース、居住者以外にも解放している子育て支援センターも設置。団地内にはシェア菜園という市民に開けた菜園もあり、コミュニティづくりが最優先に意図されている。

ホシノタニ団地 Garden Planの一室 (提供:小田急電鉄)

環境の観点から

環境へのアプローチの観点では、まずは新築と比べ、リノベーションによる資源利用量の抑制ができることはいうまでもないだろう。他にも、建材として国産の無垢材を床材として利用している。

経済の観点から

リノベーションの結果、55室中54室の入居という驚異の入居率となった。30〜40代の単身世帯や夫婦世帯が7割を占めている。さらに、入居者のうちの2割は、都心から転居してきた。通常のこの地域の特性を考えると、珍しいことだという。

実はリノベーション後、この地域の賃貸相場と比較して1割から2割ほど高い賃料が設定された。「ホシノタニ団地の世界観を付加価値として、賃料に反映させました」と米山さんは話す。高い入居率と付加価値を反映させた賃料は、コミュニティづくりや環境貢献に加えて、事業として経済性を担保していることがわかる。

団地の様子(提供:小田急電鉄)

社会の観点から

最初は小田急側がイベントを企画・主催していたが、今では住民が主体となって行われているようだ。また、団地外の親子が通う子育て支援センターや、ホシノタニマーケットという多様な出店者が集うマーケットも開催されている。このマーケットは地域に開放され、1回あたり最高で2,500名もの来場者数を記録したという。地域内外問わず、コミュニティが創出されている。

ホシノタニ団地内 子育て支援センター (提供:小田急電鉄)

サーキュラーエコノミーの視点から

今回伺った小田急の取り組みについて、サーキュラーエコノミーの視点から3点考えてみたい。

1. 今ある資源を生かす

ごみ収集業務スマート化実証実験やホシノタニ団地のリノベーションは、「今ある資源」が生かされている。

座間市の実証実験では、新たに大勢の人を雇ったり、パッカー車を増やしたりするなど、新たなものをつくって何かを増やすことはせずに、今ある資源を生かして、いかに効率化していくかという点に重きが置かれている。そのツールとして、ルビコン社のデジタル技術に白羽の矢を立てたということだ。

ホシノタニ団地も、地域特性にあわせた結果、団地を取り壊して新しく建てることはせずに、今ある資源を生かした取り組みだといえる。その効果的な方法が、ブルースタジオとの連携であり、コミュニティづくりの創出だった。

サーキュラーエコノミーはいかにモノを循環させるかという視点になりがちだが、今ある資源を生かすことが最も優先されることであり、環境負荷としては最も低い。両事例がまさにその重要性を示している。

2. 経済性の担保

ホシノタニ団地のほぼ100%の入居率や賃料を平均よりも1割〜2割高く設定したことは、米山さんが述べた通りだ。環境への影響を抑えるだけではなく、事業性も十分に担保しているのだ。正木さんは、「サーキュラーエコノミーの活動は、環境活動ではありません。続けていくためにビジネスとして成り立たせたいと考えています」と強調した。

米山さんも、「環境に配慮しながらビジネスを続けることは可能だと考えています。例えば、価格が1割高くても、その1割分を付加価値として消費者に提供し、評価をいただけるような事業の推進やコミュニケーションをしていかなければならないと思っています。既存の事業をいかに環境配慮型にしていくか、そしてそれを価値として評価していただけるような発信をしていきたいと考えています」と語る。

3. 人と人のつながりを生み出す

ホシノタニ団地 喫茶ランドリーの様子(提供:小田急電鉄)

両事例ともコミュニティの創出が意識された。座間市の実証実験では、行政や収集業者と住民の結びつきを強くすることが目的であり、ホシノタニ団地の事例がSitraの「世界を変えるサーキュラーエコノミー・ソリューション」に選出されたのも、循環性に加えてコミュニティ創出によるところが大きい。孤立しがちな単身世帯がホシノタニ団地では7割を占めるが、実際には住民主体のつながりが生まれている。

環境面での追求だけではなく、それぞれの入居者や地域の目に見えないつながりを創出することで、それぞれの充足感が高まるように意図されている。

最後に

地域とともに歩みながら循環型コミュニティづくりに励む小田急電鉄。地に足のついた活動によって、課題を細かく捉え、他者を巻き込んで課題解決を図る。その際には当然のことながら、事業としての持続可能性が重要となる。 利益を確保しながら環境とコミュニティづくりにもアプローチしていく。今後の同社の地域密着型の取り組みが、日本や世界に発信されていく姿を追っていきたい。

【関連記事】「世界を変えるサーキュラー・エコノミーソリューション」に小田急電鉄の取り組みが選出。日本企業で初
【参照ページ】小田急電鉄株式会社 公式ホームページ
【参照記事】Refurbishing old buildings into sustainable living residences with circular lifestyles
【参照ページ】ONE・アイカサ
【参照ページ】日本フードエコロジーセンター
【参照プレスリリース】サーキュラー・エコノミー推進に係る連携と協力に関する協定
【参照ページ】ホシノタニ団地
【参照ページ】ブルースタジオ

※本記事は、ハーチ株式会社が運営する「IDEAS FOR GOOD」からの転載記事です。

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