2019年までオランダ・アムステルダムは、ヨーロッパで面積あたりの観光客数が最も多い街だった。その後新型コロナウイルス感染症が大流行し、地元経済は打撃を受ける一方で、これまで観光客で溢れ地元住民たちが寄り付かなくなっていた街中心部が住民たちのものになったと歓迎する声も多い。コロナ収束とともに街を再び観光客に向けて開くアムステルダムが目指すのは、「訪れるのにも暮らすのにも良い」街だ。

赤線地帯から緑線地帯への移行を掲げる「グリーン・ライト・ディストリクト」/Image via Green Light District Facebook page

街中心から締め出される住民たち

2019年、アムステルダムは過去最多の来訪者数を記録。人口約87万人の都市アムステルダムを訪れた人は、過去最高の2,170万人にも上った。(なお、この数字は留学生・通勤するサラリーマン・家族親戚を訪問する人は含まない)来訪者数が増える一方で、街にもたらされる負の影響も拡大し、アムステルダムはイタリアのベネチア、スペインのバルセロナと並んでオーバーツーリズムに悩まされることとなった。

街は酔っ払った観光客で溢れ、公共の場での立ち小便が増えた。街や住民への尊敬や配慮のかけらもない点からも、衛生面からも、地元住民たちは頭を悩ませた。さらには売春合法の赤線地帯では、「飾り窓」に立つ女性たちを見に行くための毎晩ツアーが実施され、「客」になるでもなくスマホで売春婦の女性たちの姿を撮影した写真がソーシャルメディア上に数多く投稿されることとなった。アムステルダム市副市長Victor Everhardt氏は、「性労働従事者を観光アトラクションとして扱うのはその人々に対する軽蔑であり、これを目玉としたツアーは許容できない」と発言している。

売春合法の赤線地域で「飾り窓」を取り囲む観光客ら/Image via Unsplash

そして街の中心に並ぶ店は観光客向けの土産物屋や飲食店ばかりになり、地元で生活を営む人には縁のない街になった。家々は生活者に貸すよりも収益になる観光客向けに、Airbnbなどのバケーションレンタルを通じて貸し出されるようになり、家の価格は高騰。地元住民には手が届かないほど高額になった。

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