廃プラスチックが引き起こす環境汚染は、生物多様性への悪影響や大気・水汚染がもたらす人体への悪影響を及ぼしており、世界的な懸念事項となっていることは言うまでもない。こうした状況を受け、近年国連・EUをはじめとする世界各国で政策・規制レベルにおける取り組みが見られるが、その一つに廃プラスチック輸送の規制強化がある。

廃プラスチック輸送をめぐる規制強化の背景には、主に欧米などの高所得国で大量消費された廃プラスチックが、厳しい処理基準やコストなどの理由から地元で処理しきれず、より安価な方法として環境基準の緩い国々へ流れはじめた経緯がある。

なかでも中国は、主に欧米や日本で発生した廃プラスチックの主要輸入国であった。しかし、2017年に国内での環境汚染などを理由とし、同国政府は廃プラスチックの輸入規制を開始した。そのため、突然行き場を失った廃プラスチックは、東南アジア諸国へと方向を変えることになる。国際刑事警察機構の資料によると、中国の輸入禁止措置により、2018年の米国によるマレーシアへの輸出は330%上昇している。行き先を変えた廃プラスチックは、その先々でも環境汚染を引き起こしていることが指摘されるようになる。そのため「輸入国は欧米諸国のごみ捨て場になっている」として、マレーシアをはじめとする東南アジア諸国政府も中国に続き輸入規制を敷き始めた。

こうした国際状況を受け、国家間の有害廃棄物輸送を規制する国際条約であるバーゼル条約の改正(1989年に締結)が、2019年5月に採択された(第14回バーゼル条約締結会議)。

この決議により、プラスチック廃棄物を新たにバーゼル条約の対象に追加する条約附属書が改正された。その概要は、有害廃棄物の国内処理を原則とし越境移動を最小化することを目的とするもので、廃プラスチック輸出の際に事前通告及び同意取得(以下PIC)が義務付けられた。また移動開始から処分までの必要書類の携帯義務や、不法取引が行われた際には輸出者の国内引き取り義務も課せられることになった。バーゼル条約改正以前は廃プラスチックにおける世界貿易はほとんど規制管理の対象となっておらず、事実上廃プラスチックは自由に取引されていた。そのためバーゼル条約の改正は、廃プラスチックの取引市場に突然大きな影響をもたらすことになる。

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