「廃棄物を出さない服を作りたい。」そう語ったのは、先日インタビューに応じていただいたland down under代表の池上慶行さん。land down underは、製品のライフサイクル全てに循環性をベースに置くことを目指すサーキュラー型ジーンズを提供しています。基準以上の「キズ」が見つかったB反・C反と呼ばれる、生産段階においてすでに廃棄が運命付けられている生地を使ってつくられています。素材へのアプローチだけではなく、長期間利用でき、リサイクルを容易にさせる設計方法も採用。今後は、修理やPaaSモデル、再生材含有率の向上など、ライフサイクル全てにアプローチしていくとしています。

このように、land down underは、エレン・マッカーサー財団のバタフライダイアグラムが示す「小さな円を優先すること」「製品のライフサイクル各段階で価値の最大化を図ること」「そのための最適なビジネスモデルの選択」にチャレンジしています。(インタビュー記事は近日中に公開予定)

そのビジョンや方法、コミュニケーションスタイルが共感を呼び、クラウドファンディング実施期間を2週間残して目標を達成。次のゴールに向けてのキャンペーンを開始しました。

land down under、サーキュラーエコノミーへのアプローチ(出典:READYFOR クラウドファンディングページ

ライフサイクル全体を見わたすサーキュラリティ測定

land down underのように、サーキュラーエコノミー型モデルを生み出す方法は多く存在します。(ワークショップを通じたアイデア創出方法の例はこちら

ポイントは、「廃棄物(という概念)をなくす」仕組みになっているかを、ライフサイクル全体で見わたすことです。この視点の欠如は、こちらの記事の2つ目の課題で取り上げたように、いわゆる「サーキュラーウォッシング」(見せかけのサーキュラーエコノミー)につながるリスクを生み出します。せっかくサーキュラー型モデルを通じて、環境や社会に対して良いインパクトを起こそうとしているのに、「見せかけ」だと判断されて、逆効果になってしまうことは非常にもったいないことです。

そこで、大切になってくるのは、サーキュラー型モデルを生み出す際にセットで考えておくべき「サーキュラリティ(循環性)」測定です。サーキュラリティ測定とは、サーキュラーエコノミーがどの程度製品ライフサイクル内で浸透し、どのくらい事業や製品がループに留められ続けるか測定する方法のことを指します。

真にサーキュラーエコノミーに向かっているかどうかを判断する軸になると同時に、成果(アウトカム)を客観的に示すことで、投資家や消費者から評価されることになるでしょう。他にも下記のようなメリットがあります。

  • 数値化による現在の立ち位置の明確化
  • 今後の進む方向性の提示
  • 経年変化を確認し改善点を提示
  • アウトプット(結果)とアウトカム(成果)を適切に評価するきっかけになる
  • 組織内部、特にトップマネジメント層への訴求
  • 人事考課の一部に統合することが可能
  • (公開をすれば)外部への透明性を確保

脱炭素に向けた取り組みを評価する指標と違って、サーキュラリティを定義づける範囲は広く、業界によって注力分野が異なるため、測定の難易度は高いといえます。しかし、ESG投資に向けたフレームワークが発展してきたように、サーキュラリティについても投資家や企業による需要の高まりをみせています。

海外では代表的なものでCirculytics(エレン・マッカーサー財団)、MCI(エレン・マッカーサー財団とGranta Design)、Circular Transition Indicators(WBSCD)、Circularity Assessment Tool(CIRCUIT Nord)、Circle Economy のCircle City Scan Tool、ルクセンブルク政府主導のPCDS(Product Circulality Data Sheet)、各ESG投資評価フレームワークのうちのサーキュラーエコノミーに関わる項目があります。また、国内では21年1月に政府より公表された「サーキュラー・エコノミーに係るサステナブル・ファイナンス促進のための開示・対話ガイダンス」などがあります。さらに、サーキュラリティ測定も中心的テーマとなるサーキュラーエコノミーのISO規格化への動きもすでに2018年から始まっています。

そして、1969年にその歴史が始まり、国内企業でも広く採用されているLCA(ライフサイクルアセスメント)が、上記の比較的新しく開発されたツールと組み合わされることも有益です。

ここでは、サーキュラリティに関連する下記の項目について考えていきます。

  1. ビジョンや価値観/目的/目標/戦略
  2. サーキュラリティ測定
    • ・組織のサーキュラーエコノミー移行が加速されるような定性評価
    • ・具体的なものさしとなる定量評価
  3. 外部への透明性

1. ビジョンや価値観/目的/目標/戦略

サーキュラーエコノミーに限ったことではなく、測定や評価はあくまでPDCAでいうところのC(Check)の部分であり、P(Plan)の計画やビジョンが基盤となることはいうまでもありません。これらを策定し組織内に浸透させていくことで、サーキュラーエコノミーがすべての事業の根幹に位置付けられるからです。また、一部の製品にのみサーキュラーエコノミーが取り入れられるといったことなどを避けることができます。

「サーキュラー・エコノミーに係るサステナブル・ファイナンス促進のための開示・対話ガイダンス」(経済産業省・環境省)にも「価値観」という項目があります。

「①数ある社会課題の中からサーキュラー・エコノミーに関する課題を自社が事業活動を通じて取り組むべきマテリアリティとして特定した理由、及び、②サーキュラー・エコノミーに係る取組を企業価値向上につなげるための基本的な方向性について、企業理念やビジョン等の全社的な上位方針に統合的に位置付けられていることを示すことが重要である」

サーキュラーエコノミーの文脈においては、一つの製品の循環性に目が行きがちではありますが、このように、事業活動全体においてサーキュラーエコノミーが柱に据えられなければならず、ここにビジョンや価値観が大きな役割を果たすといえます。

2. サーキュラリティ測定

上述の現在公表されているサーキュラリティ測定のいくつかを紐解くと、社会的インパクト評価や各フレームワークなどと同様、定性評価と定量評価の2つに分かれます。

組織のサーキュラーエコノミー移行が加速されるような定性評価

組織内のサーキュラーエコノミー移行体制を強化し、内外に示すこともできる定性評価はサーキュラリティにおいて重要です。

例えば、エレン・マッカーサー財団のCirculyticsにはこのような問いがあります。

  • CEOは、どの程度サーキュラーエコノミーを中心的施策として位置付けているか
  • その組織やメンバーの戦略はサーキュラーエコノミーを促進するものかどうか
  • サーキュラーエコノミーを促進するターゲットがあるかどうか
  • サーキュラーエコノミーに関する研修の機会があるかどうか

出典:Circulytics Indicator List (エレン・マッカーサー財団)より翻訳 

これらの設問は、サーキュラーエコノミー移行へのコミットメントのレベルを測定し、組織のなかで中核に位置付けられているかを問うものです。同時に、そうすることを促すような問いでもあります。トップマネジメントが発信するメッセージのなかにサーキュラーエコノミーに言及する頻度が多ければ、当然組織全体でのサーキュラーエコノミーに意識が向いていくでしょう。

後述する再生材含有率やリサイクル率などの定量評価も重要ですが、組織全体の循環性を推し量ることと、そうするように仕向けるという意味で考えておくべき観点です。

「環境」「経済」「社会」の観点に立ち返る

「環境関連プロジェクトが発足した。このプロジェクト発足にあたり、メンバーの士気を高めるために、共通のノベルティをつくることが検討された。しかし、環境関連プロジェクトなのにノベルティをつくることによる副産物(環境負荷)が新たに創出されないかという異論がメンバーから出され、議論が交わされた・・・。」

似たようなことは、よく起こりうることではないでしょうか。

「環境」の観点からは、(ノベルティの性質にもよりますが)当然ノベルティをつくることによる環境負荷がかかってきます。

「経済」の観点からは、単純にノベルティの金銭的コストが発生します。

「社会」の観点からは、ノベルティをつくることで、プロジェクトの帰属感が高まることにより士気が上がり、プロジェクトに期待以上の成果が生み出されるかもしれません。あるいは、外部とのコミュケーションにプラスのインパクトを与えるかもしれません。ノベルティをつくらなかった場合に比べて、結果的に環境負荷が低減される可能性もあります。ただ、これは結果論でもあり、その時点で評価したり、それが影響したかどうかを測るのは容易ではありません。

ここでの論点は、ノベルティの良し悪しではなく、たった一つのものさしでのみ(例えば社会の観点のみ)で追求していけば、当然他の2点は見えにくくなるため、環境・経済・社会の観点を組み込まなければならないということです。

このようなことにおいては、メンバー各自の価値観は違うため、感情面でのぶつかり合いになりがちです。だからこそ、上述したビジョンや定性評価軸、そして「環境」「経済」「社会」を目盛りとしたものさしが必要です。加えて、このような議論が行われること自体が、組織内のサーキュラーエコノミー移行に向けた基盤強化へつながるきっかけとなることは明らかです。ものさしの一例として、環境や社会の側面において豊かさを実現し、繁栄することを同時に目指すドーナツ経済学という方法論も注目されています。

具体的なものさしとなる定量評価

定量評価については、さまざまな評価軸や指標が開発・採用されています。ここではわかりやすい例として、WBCSD(持続可能な開発のための世界経済人会議)のCTI(Circular Transition Indicators)を見ていきます。このツールは、できるだけシンプルに評価できるように作成されています。下記は同ツールで軸となる考え方です。

①ループを閉じるための指標

  • 資源投入における循環性(インプット)
  • 再生可能な廃棄物の循環性(アウトプット)
  • 水の循環性
  • 再生可能エネルギー利用率

②ループを最適化する(ループ自体の資源効率を測る)

  • クリティカルマテリアルの使用率
  • 資源の回復率(資源が循環されループに再投入された割合)
  • 現場での水の循環性

③ループを評価する(生産性・利益の観点)

  • 循環される原材料の生産性(売上/リニア型資源投入量)
  • 循環利益(製品:循環型資源投入率と循環型資源アウトプット率を2で割り、利益でかける(A)、企業全体:それぞれの製品のAを求め、すべてを足す)

出典:Circular Transition Indicators v2.0 – Metrics for business, by business (P16):WBCSDより

この考え方では、①でインプット・アウトプット双方を見ることで、資源循環性を測定することができます。②では、バージン材のうちレアアースなどのクリティカルマテリアルの利用率を追っていくことで、クリティカルマテリアル調達に対する将来のリスク回避にも目が向きます。また、資源が再びループに再投入されているかを見る「ループ」自体の効率性・健全性も判断することができます。③では、資源毎の利益率も評価することで資源利用と利益がどの程度「分離」しているのかを判断する材料として活用することができます。①②は、「サーキュラー」の部分に、③では「エコノミー」の部分に焦点が当てられています。特に③の部分は、企業や投資家がサーキュラーエコノミーをメインストリーム化させ、投資拡大を図るためのサーキュラーエコノミーならではの軸です。

実際に同ツールを利用したオランダの化学大手DSMは、これまで収集していなかった製品のリサイクル性などのデータを集めることに課題があったものの、同社内やサプライチェーン内の取引企業同士で循環性に対する新しい見方ができるようになったと振り返っています。

また、同じく同ツールを活用したスイス建設用化学品大手シーカによると、同ツールは耐久性については考慮されていないものの、製品ライフサイクルの下流段階において改善点を見出せるツールとして活用ができるとのコメントを出しています。さらに、今後の製品におけるバージン材の環境に与えるインパクトも評価していく予定だと言及しました。

少し細かく見ていくと、各製品のライフサイクルの環境指標を追っていくことも上記の①②③に近づく手段になります。下図は、国内外の大手企業中心に採用されている指標と、今後のシェアリングやPaaSなど比較的新しいモデルでも考えられると予想される測定軸の例をまとめたものです。

各循環性指標や各企業レポートから参照または追記により筆者作成(2020年12月)

ここで重要な点は、自組織にとって重要度が高い指標を各ライフサイクルでできるだけ多くピックアップすることで、サーキュラリティの客観性のレベルが高まるということです。しかし、すべてのライフサイクルは自社で完結できないため、やはりサプライチェーンにおける連携が必要になります。先述のDSM社の例では、評価をすることで自ずと必要となるサプライヤーとのコミュニケーションを強化することにつながったようです。

また、それぞれの指標には重要性や環境インパクトが異なるため、ピックアップしたものに対して自社にとって重要度が高い指標を重み付けする必要がありますが、業界で使われている基準やフレームワーク、優先順位等があれば参考にし、存在しない場合はどの指標が循環性に大きなインパクトを与えるかを検討のうえ、設定します。また、これらのアウトプット(結果)に対して、ビジョンや目的に近づけているかというアウトカム(成果)についても適切に把握される必要があります。

データ収集には多大な作業がかかるという実際の声も聞かれます。ただ、せっかく掲げたビジョンが「見せかけ」でないようにするためにはどうしても欠かせない観点であり、外部へのコミュニケーションという観点でも有益となるはずです。最近海外では、Circular IQのように「製品パスポート」による製品情報の可視化ツールやブロックチェーン技術を使ったトレーサビリティ確保を容易にするツールなども生まれており、今後の進展が期待されます。

3. 外部への透明性

自然環境が一気に変化し後戻りのできなティッピングポイント(臨界点)が視野に入るなか、環境課題を好転させるため、脱炭素やサーキュラーエコノミーへの取り組みの加速は待ったなしの状態です。一方で、評価する側や評価を参考にする側も、企業の移行に対する姿勢を寛容に見ていく視点も合わせて必要であるといえます。

例えば、これまで全くサーキュラーエコノミーの取り組みをしていなかった企業が、0から1へ(満点:100)前進したとします。これに対して、残りの達成できていない99をクローズアップし、バッシングやキャンペーンを実施することも可能でしょう。しかし、ここ最近の事例でも見られるように、残りの99がまだ達成できていないことを自ら認識し、どのように99を達成していくのかの期限を切った具体的計画を示している場合は、まずは前進できたことに焦点を当てなければなりません。

そのためには公表する企業側も、改善余地があるという認識や進捗度を透明性を持って公表することが望ましく、多くの例ではこのようなコミュニケーションの方法によって、共感が得られ、消費者からの信頼獲得や他社との協働の呼び水になっているようです。

例えば冒頭ご紹介したland down underは、現段階ではバージン素材を使っていることに対して、今後半年から1年後を目処にリサイクルコットンを使い、その比率を上げていくことや、さらに縫製素材も含めたリサイクル性を高める設計をすることなどにチャレンジをしていくと公表しています。このような「循環に向けて未だ道半ばだが、さらに改善していく。そのプランは・・・」という姿勢がユーザーの好感を得て、クラウドファンディングの結果にも表れています。

多くの大手企業でも、現状を認識し循環性を高めていく長期的ロードマップを描いています。例えば、エレン・マッカーサー財団のプラスチックの循環化に向けたイニシアチブ「New Plastics Economy Global Commitment」に署名したグローバル企業のうち約120社が公表する年次レポートでは、「かつてないほどの透明性」(同財団コメント)で、例えば製品の再生プラ含有率などの進捗が公開されています。

このようなコミュニケーションを図ることにも役に立つのが、今回のテーマであるサーキュラリティです。100のうち、1の達成部分と99に対する道筋を客観的に示すツールとして機能させることができます。

サーキュラーエコノミーへの移行はサーキュラリティとセットで考える

今後、サーキュラーエコノミーへの取り組みが進めば進むほど、サーキュラリティを客観的に判断できる測定ツールが求められていくでしょう。ビジョンや取り組みとセットで考えられるべきサーキュラリティ測定が真の移行を後押しするものになるはずです。

【参考】Circular Economy Hub Learning #3 (動画「Dame Ellen MacArthur: food, health and the circular economy」よりバタフライダイアグラムの解説
【参考】land down under READYFOR クラウドファンディングページ
【関連記事】Circular Economy Hub ワークショップ紹介
【関連記事】
サーキュラーエコノミーの実現に向けて理解しておきたい10の課題
【参考】ISO/WD 59020 Circular economy — Measuring circularity framework
【参考】Circulytics Indicator List
【参考記事】
【3/5オンライン開催】Tokyo Meets Doughnut 〜ドーナツ経済学で東京の未来を考えるワークショップ〜
【参考】Circular Transition Indicators v2.0 – Metrics for business, by business
【関連記事】
製品のサーキュラリティを可視化するアムステルダムのスタートアップ「Circular IQ」