第1回の記事ではLCAはサステナビリティの実現に必要な「コンパス」であることを、第2回の記事ではLCAによる定量化でディフェンス的要素である「unintentional-Washing:結果的なウォッシュ」を回避できる点をお伝えした。
今回第3回では、LCAをはじめとする定量化によるもう一つの大きな効果、オフェンス的な要素を考えていく。定量化した数字を公表する、さらには共有して同じゴール設定をすることで、コミュニケーションを促し、サーキュラーエコノミーという求めている方向性に創造的に向かうことができる。いわば、LCAは「unintentional-Washing:結果的なウォッシュ」を回避するだけでなく、「ステークホルダー間の共通言語」となりサーキュラーエコノミーを推進する力になるのである(図1参照)。
図1:LCAを用いる2つの効果(筆者作成)
しかし、このオフェンスの要素を有効に発揮するためには、従来のLCAだけでは不十分である。なぜなら、LCAはこれまでもお伝えしたように基本的には「一つの製品やサービス」を対象としているからだ。サーキュラーエコノミーの実践や脱炭素といった地域やグローバルレベルでの協力が必要とされる今、LCA(またはライフサイクル思考)をベースにした新たな評価指標づくりが必要とされている。そしてそれは、研究者だけでもできなければ、企業だけでもできず、国や自治体だけでもできない。すべてのステークホルダーが協調する必要性がある。そこで本記事では、
―共通言語として、サーキュラー・エコノミーを推進するために求められることは?
を主題に、それを3つの点から解説していく。
求められるもの①:「Holistic(全体)」でとらえる評価の仕組み
サーキュラーエコノミーを実現するためには、社会全体でのサステナビリティを評価する必要がある。
青木志保子
専門は環境学。環境負荷の定量化(LCA)と次世代のライフタイルを創造するWholeness Lab主宰。大手企業やスタートアップのサステイナビリティ事業創造のアドバイスほか、NPOでの講演を複数実施。東京大学新領域創成科学研究科環境システム学修士課程修了(環境学修士)。その他国際大学GLOCOM主任研究員等。
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