前回の記事では、LCAがサーキュラー・エコノミーという方向性の「地図」に対する「コンパス」の役割を担っていることをお伝えした。コンパスを用いることで、真のサステナビリティに向かって、今どこにいてどこに向かえばいいのか「迷わない」ようにできる。しかし、現状はどうだろうか。2021年11月にはCOP26も開催されたところではあるが、日本の評価は残念ながらあまり優れない。
筆者はこの状況を次のようにみている。つまり、「Unintentional-Washing:結果的なウォッシュ」状態であるということだ。昨今「フェイクニュース」が社会の一つの大きな課題になっているが、EUでの定義では、正しくない情報を「mal-information(悪意の情報)」「dis-information(偽情報)」と「mis-information(誤情報)」の3つに分けている。そのうえで、それらが生じる要因として「有害なもの。悪意など意図して作成したもの(Harmful)」と、「一般的な誤情報。意図はしていなかったかもしれないが結果的に間違ってしまったものを含む(False)」とを挙げている。これと同様の構造で、環境問題の現場においても「Intentional-Washing:意図したウォッシュ」と、思わぬ負荷の発生や全体構造の理解不足等が引き起こす「Unintentional-Washing:結果的なウォッシュ」に分類できると考察している(表1参照)。
表1: フェイクニュースとウォッシュの構造比較(筆者作成)
この「Unintentional-Washing:結果的なウォッシュ」を引き起こしてしまうリスクは、環境問題に誰もが取り組む必要のある現代において他人事ではない。だからこそ、私たちは今まさに真のサステナブル社会の創造に向けて、新たな具体策が必要とされている。そこで本記事では、
―私たちは真のサステナブルに向かって、どう歩み、何に気を付ければいいか。
を主題に、LCAと関連の深い3つのキーワード「LCT(ライフサイクル思考)」「scope3」「XaaS(X as a Service)」を用いて、サーキュラー・エコノミーをはじめとする真のサステナブル社会の実現に向けた具体的な3つのステップを紹介していく。
Step①:サステナブルリテラシーを上げる:「LCT(ライフサイクル思考)」
LCAはツールであり「ライフサイクル思考(LCT:Life Cycle Thinking)」に基づく評価手法である。LCAを行うには専門的知識はもちろん、調査やデータ収集など多くの労力を要する。しかし、そのベースとなっている「考え方」であればだれでも取り入れることができる。「ライフサイクル思考:LCI」とは、今目の前の製品やサービス(点)だけで評価するのではなく、その資源採掘から廃棄されるまで全体(線および面)で考えることである。
この記事は、Circular Economy Hub 会員専用記事となります。