Subscribe Now

* You will receive the latest news and updates on your favorite celebrities!

Trending News

Blog Post

インタビュー

サーキュラーエコノミーは、システミック・チェンジ。英国エレン・マッカーサー財団 

2010年の設立以降、「サーキュラーエコノミーへの移行を加速させる」というシンプルかつ明確なビジョンを掲げ、世界中の企業や政府、教育機関などと連携しながらサーキュラーエコノミーを推進してきた、英国のエレン・マッカーサー財団

サーキュラーエコノミーについて学んだことがある方であれば、一度はこの名前を耳にしたことがあるだろう。SDGsやパリ協定が採択される5年前に活動を開始したエレン・マッカーサー財団は、サーキュラーエコノミーを推進するグローバルネットワーク「CE100」、産業構造レベルでの変革を目指す「New Plastics Economy」や「Make Fashion Circular」などのイニシアチブ、情報発信や学習コンテンツの提供にいたるまで、あらゆるアプローチで世界全体の経済モデルを「リニア(直線型)」から「サーキュラー(循環型)」へ移行しようと取り組んできた。

今回IDEAS FOR GOOD編集部では、エレン・マッカーサー財団の「New Plastics Economy」でプログラムマネジャーを務めるGerald Naber氏にお会いする機会(2019年11月)をいただき、改めてサーキュラーエコノミーの本質やサーキュラーエコノミーへの移行を加速させるうえで重要な視点について伺ってきた。

「サステナビリティ」という言葉は信じていない

「正直に告白します。私は『サステナビリティ』という言葉を信じていません。」

Geraldさんの話は、こんな驚きの一言から始まった。

エレン・マッカーサー財団のGerald Naber氏

「私は、資源の利用や汚染、排出、消費を減らすといった企業の取り組みを信じてはいません。しかし、私たちは製品をどのようにつくり、消費し、廃棄するかを再考できると信じています。また、私たちがどのように働き、協働し、考えるか、世界に対する眼差しを再設計(リデザイン)し、再考できる能力を持っていると信じています。それこそが、私がエレン・マッカーサー財団で働いている理由です。私たちの仕事は、いかに私たちのシステムを再考できるかを示すことにあります。」

「現在の『リニアエコノミー(直線型の経済)』と言われていますが、それはとても多くの無駄を生み出します。例えば、私たちは車のような素晴らしい製品を生み出すことができましたが、欧州の平均的な車の使用状況を見てみると、実際の稼働時間は8%しかありません。そして、車が利用されるときでさえ、シートのうち3分の1しか使っていないのです。これは、資産のうち2、3%しか稼働していないことを意味しています。これは資源のとても非効率な利用方法だと言えます。」

企業はサステナビリティと称してCO2排出や廃棄物の削減など様々なプログラムに取り組んでいるが、従来のリニア型経済モデルの中で生まれる負の外部性をいくら減らそうとしても、それだけでは決して真の意味でのサステナビリティは実現できない。

問題を解決するためには、製品の作り方から廃棄まで、システム全体をもう一度再考し、作り直す必要がある。それがGeraldさんの考えだ。そして、その目指すべきシステムこそが「サーキュラーエコノミー(循環型の経済)」なのだ。

サーキュラーエコノミーの3原則

エレン・マッカーサー財団を説明するうえで欠かせないのが、同団体が定義するサーキュラーエコノミーの3原則だ。

「エレン・マッカーサー財団のミッションは、『サーキュラーエコノミーへの移行を加速すること』です。このコンセプトはとてもシンプルです。そして、サーキュラーエコノミーを実現するためには3つの原則に従う必要があり、私たちは常にこれらの原則を適用しています。」

その3原則とは、「自然のシステムを再生する」「製品と原材料を捨てずに使い続ける」、そして「廃棄と汚染を出さない設計」というものだ。

  • Regenerate natural systems(自然のシステムを再生する):有限な資源ストックを制御し、再生可能な資源フローの中で収支を合わせることにより、自然資本を保存・増加させる。
  • Keep products and materials in use(製品と原材料を捨てずに使い続ける):技術面、生物面の両方において製品や部品、素材を常に最大限に利用可能な範囲で循環させることで資源からの生産を最適化する。
  • Design out waste and pollution(廃棄と汚染を出さない設計):負の外部性を明らかにし、排除する設計にすることによってシステムの効率性を高める

Gelard氏は、この3原則の中でも特に3つ目の「廃棄と汚染を出さない設計」がとても重要だと語る。

「デザインは、サーキュラーエコノミーに移行する初期段階における原則です。ここでいうデザインとは、何も製品の色のことだけを指すのではありません。素材の選択から、製品の使用後、誰と協働するか、製品を標準化できるか、使用済み製品に対するどのような規制があるかなど、システム全体のデザインを意味しています。だからこそ、私たちはいつもデザインを最初の段階で考える必要があると話しています。」

環境負荷の大きさや、リユースやリペア、リサイクルがしやすいかどうかなど、サーキュラーエコノミーをどこまで実現できるかは初期の製品設計の段階で決まってしまう。逆に、ひとたび廃棄や汚染が生まれてしまっては、その後にできることは限られる。その意味で、そもそも最初から「廃棄と汚染を出さない設計」をすることが、残り2つの原則を実現するためにも不可欠なのだ。

また、2つ目の「製品と原材料を捨てずに使い続ける」は、パソコンや自動車などの工業製品をイメージすると分かりやすい。金属や石油由来プラスチックなど地下資源を採掘して製品をつくった以上、それらが廃棄されて自然界に流出し、環境を破壊しないように、リユース、リペア、再製造、リサイクルなどを通じて経済の中でできるかぎり何度も繰り返し使用し続ける必要があるということだ。

そして1つ目の「自然のシステムを再生する」は、自然への負荷(マイナス)を減らすのではなく、自然にとってプラスになる仕組みをつくるという意味だ。そもそも自然界には「ごみ」は存在せず、全ての生物が死後は何かの栄養分となり、循環し続けている。その意味で、自然界は究極のサーキュラーエコノミーだと言えるが、自然界のように経済の仕組みがリジェネラティブ(再生的)なシステムになっているかどうかが重要となる。

アクセンチュアが定義する5つのビジネスモデルとの違い

上記の3原則の話を聞くと、少しサーキュラーエコノミーについて学んだことがある方であれば、アクセンチュア社が2015年8月に著書「Waste to Wealth(無駄を富に変える)」の中で提唱した下記の有名なサーキュラーエコノミーの5つのビジネスモデルとの違いや関連性について気になる方もいるかもしれない。

  1. 再生型サプライ:再生可能な原材料利用による調達コスト削減や安定調達の実現
  2. 回収とリサイクル:廃棄予定の設備や製品の再利用による生産・廃棄コストの削減
  3. 製品寿命の延長:修理やアップグレード、再販売による使用可能な製品を活用
  4. シェアリング・プラットフォーム:不稼働資産となっている所有物の共有による需要への対応
  5. サービスとしての製品:製品を所有せず利用に応じて料金を支払うビジネスモデル

Gelard氏はその点についても分かりやすく説明してくれた。

「アクセンチュア社のモデルは、物理的な廃棄物だけではなく経済的な浪費も含め、無駄を取り除き、経済価値を生み出すために現在取りうるビジネスモデルを5つの方法で示したものとなります。そのため、私たちはそれらのビジネスモデルを3原則と結びつけて考える必要があります。例えば、シェアリング・プラットフォームがあったとしても、そこで交換される製品は、コンピューターであれ、車であれ、3原則に沿って製造されている必要があります。」

たとえビジネスモデルがシェアリング・プラットフォームであったとしても、そこで交換され、提供される製品がエレン・マッカーサー財団の提唱する3原則を満たしておらず、循環型システムに沿った形で設計されていなければ、サーキュラーエコノミーとは言えないということだ。

サーキュラーエコノミーを概念化したバタフライ・ダイアグラム

上記で説明した3原則をベースに、エレン・マッカーサー財団がサーキュラーエコノミーのモデルを概念図として示したのが、下記のダイアグラム、通称「バタフライ・ダイアグラム」だ。

一番左側には先ほどの3原則が示されている。ダイアグラムは金属などの有限なストック資源を制御し、再生可能なフロー資源の収支を合わせることで自然資本を保全・強化していく一段目。一段目からインプットした資源をできるかぎりループの中で循環させ、長く使用し続ける二段目。そして、二段目から出る汚染や廃棄といった負の外部性を特定し、排除する設計により、システムの効率性を高めることを求める三段目から構成されている。

また、ダイアグラムは蝶の羽のように左と右に大きく分かれている。左は食品などのバイオ由来サイクル、右はパソコンや自動車などの技術サイクルを示している。この図の重要なポイントをGelard氏はこう説明する。

「この図にはいくつかの重要なポイントがあります。一つ目は、ループは内側から外側に行けば行くほど、その価値を失うということです。たとえば、コンピューターから原材料を取り出すよりも、それを修理して使い続けるほうがより多くの価値を保持できます。」

右側のループの中でもっとも小さいものが、ユーザー同士のシェアだ。同じものをユーザー同士が使い回し続ける限り、価値は維持されている。その後にリペアや再利用、再製造などのループがあり、最も外側にあるループがリサイクルだ。

リサイクルによっても廃棄を防ぐことはできるが、製品を回収し、リサイクルのために製品を分解して原材料まで戻してしまうと、最初の製品づくりに投入されたエネルギーや人件費などあらゆる資源が無駄になってしまう。また、リサイクル自体にも新たなエネルギーやコストがかかる。

つまり、サーキュラーエコノミーにとってリサイクルは最後の手段であり、その手前の段階でいかに価値を保持しながら小さくループを回せるかが重要だということだ。これが、「サーキュラーエコノミー=リサイクルビジネス」という考えが大きな誤解だと言われる所以だ。

「また、もう一つ大事な点は、システム全体が再生可能なエネルギーや、化石燃料由来ではないもので動いているという点です。私たちは長期的に真の意味で持続可能なシステムを実現するためには、有限な資源の採掘を手放し、より再生可能な方法へと移行する必要があるのです。」

エレン・マッカーサー財団の本拠がある英国ワイト島

プラスチックを取り巻くシステムの変革を目指す「New Plastics Economy」

上記の3原則とダイアグラムに基づき、世界中で海洋汚染が深刻化しているプラスチックのサーキュラーエコノミーシフトに取り組んでいるのが、Gelard氏がプログラムマネジャーを務める「New Plastics Economy」というイニシアチブだ。

2016年に始まった同イニシアチブは、プラスチックが決して廃棄されない形でサーキュラーエコノミーを実現するというビジョンのもと、「Eliminate(不要なプラスチックを取り除く)」「Innovate(再利用可能、リサイクル可能、堆肥化可能なプラスチックにする)」「Circulate(全てのプラスチック製品が経済の中にとどめ続け、環境に排出しない)」という3つのアクションをベースに、コカ・コーラやユニリーバ、ダノン、ネスレらグローバル消費財メーカーらとも協働しながらプラスチックを取り巻くシステム全体の変革を進めている。

「私たちはNew Plastics Economyをシステミック・イニシアチブと呼んでおり、まずは現在のシステムで何が起こっているのかを調査するところから始めました。そして、プラスチックを取り巻くシステムは明らかに『壊れた』直線型のシステムであることが分かりました。製造されたプラスチックの3分の1が海洋へと流出し、半分以上が埋め立てか焼却されています。そしてリサイクルのために回収されているのは約14%で、実際にプラスチックパッケージとして戻ってくるのは全体の2%しかないのです。」

「プラスチックの量は膨大で、これはリサイクルだけで解決できる問題ではありません。だからこそ、私たちはより上流に立ち戻るべき、つまりデザインから考え直すべきだと話しています。どのようなプラスチックパッケージを製造し、どのように使用し、どのように回収して資源に戻していくか。これが私たちの挑戦の核となる部分です。」

問題を把握し、その解決に向けたアクションも定めたところで、New Plastic Economyは2018年、UNEP(国連環境計画)との協働により新たなビジョンとなる「Global Commitment」を公表した。

これは、エレン・マッカーサー財団が主に民間セクターに対し、UNEPが政府セクターに対して働きかける形で、各組織や各自治体にプラスチックへのサーキュラーエコノミーへの移行をコミットメントしてもらうというものだ。

Global Commitmentには450以上の署名が集まっており、署名企業だけで世界のプラスチックパッケージ製造の20%を占めている。ロレアル、マース、ネスレ、ペプシ、コカ・コーラ、ユニリーバといった大手消費財メーカーに加え、世界最大の小売企業ウォルマートや、パッケージメーカーのアムコア、ベリーグローバルなども名を連ねる。また、20以上の政府、運用総額にして約4兆米ドルを誇る機関投資家らも署名している。

署名した団体は、「問題のある、または不要なプラスチック包装を取り除く」「使い捨てプラスチックからリユースモデルに移行する」「プラスチックパッケージを100%再利用可能、リサイクル可能、コンポスト可能にする」「全てのプラスチックパッケージについて、消費者利用後のリサイクル率に関する野心的な目標を掲げる」という4つのテーマについて、2025年までの明確な目標設定と行動を示すことが求められる。

さらに、目標を立てるだけではなくその進捗状況を毎年報告する必要があり、さらにその内容はエレン・マッカーサー財団のサイト上で公表される仕組みとなっている。2019年の最初の進捗レポートはすでに公開されており、誰でも閲覧可能だ。

各社のプラスチックに対する取り組みに対する進捗状況が公開されている。

Gelard氏は、複数の企業や団体が同じフォーマットで目標を掲げ、進捗状況を公開することの意義をこう説明する。

「業界全体が同じアプローチをとることで、システム全体を発展させるのに役立てることができるのです。例えば、もし私たちがコカ・コーラは全素材の何%、ユニリーバは全素材の何%、といった具合にリサイクル素材に対する全ての需要データを収集することができれば、それは政府やリサイクル会社にとってとても重要なシグナルとなります。彼らがどれだけリサイクルに投資すべきかがどうかが分かるからです。」

「また、各社のコミットメントやリサイクル素材に対する需要など、あらゆるプレイヤーのデータをレポートに示すことで、投資家や銀行にとってもとても興味深いデータとなります。なぜなら、彼らは企業がよりよいパッケージングへと移行しているかどうかを見ることで投資の意思決定をすることができるからです。」

New Plastic EconomyのGlobal Commitmentは、プラスチックパッケージを使用するメーカーに対してはサーキュラーエコノミーへの移行を促し、自治体やリサイクル企業に対しては必要な設備投資の見込みを伝え、投資家に対しては意思決定の参考となるデータを提供することで、プラスチックを取り巻くシステム全体を変革するためのツールとして機能している。

また、New Plastic Economyは企業や自治体単位ではなく国単位でプラスチックへのサーキュラーエコノミーを移行するための地域ネットワーク「Plastics Pact」も展開しており、イギリスやフランス、ポルトガル、オランダ、チリ、南アフリカなどでネットワークが広がっている。

「協働」と「標準化」という二つのアプローチ

New Plastic Economyにはあらゆる企業が署名しているが、サーキュラーエコノミーの実現にはバリューチェーンや業界全体での取り組みが求められ、各社がいくら独自に目標を設定したとしても、自社だけでそれを達成することは難しい。そこで必要となるのが企業同士の「協働」だが、その点についてGelard氏はどのように考えているのだろうか。

「協働は、私たちが他の組織と非常に多く議論を重ねているトピックです。パッケージのデザインと製造を例にとってみましょう。色やサイズ、素材、複層にするかどうかなど、全てはメーカーの選択に委ねられています。メーカーが何でパッケージをつくるかを制御し、それらがシステムに入ります。そして、パッケージが使用された後に実際にそれらを集めるシステムは、政府やリサイクル会社、回収会社などが決めています。だからこそ、この両者の協働はとても重要となります。ここで用意されるのがガイドラインで、リサイクル会社はメーカーに対して『このガイドラインに従ってください。そうすれば、私たちがリサイクルできます』と伝えるのです。」

「一方、ガイドラインだけではなく、標準化という方法もあります。私たちは、メーカーらが製品をシステムに投入する場所にも行く必要があるでしょう。彼らはあまりにも多くの異なる種類のパッケージを作っています。我々はこれらをメインとなる特定のタイプに絞り込む必要があります。そうでなければ、システムはそれらすべてにうまく対処することができません。」

パッケージを使用した消費者は、ブランドごとにゴミを分けて捨ててくれるわけではないし、例えそうしたとしてもブランドごとに回収システムが用意されているわけでもない。そのため、各社がリサイクル率を上げるためには、パッケージの素材や色についてなど、業界全体として一定の標準をつくるほうが効率的なのだ。

例えば同じ「赤色」をプラスチックのパッケージに使うとしても、リサイクル時に異なるメーカーが使用した異なる種類の赤色が混ざってしまうと、再びリサイクル・パッケージで同じ色を再現することが難しくなる。それであれば、最初から赤の場合はこの色を使用するといった標準化のための色彩パレットを作り、各起用が同じ赤色を使うことで、リサイクル可能性を高めるというイメージだ。

しかし、上述のように業界全体として標準化を進めていくことについては、難しい点もあるとGelard氏は話す。

「そこには一種の『緊張』が存在しています。たとえば、私は今日はとあるコーヒーメーカーと議論を交わしていました。彼らはパッケージをよりよいものへと変えたいと考えており、コーヒーカプセルなどあらゆる種類のLCA(ライフサイクルアセスメント)を実施しました。そして、結果としてもっともベストだったのが、リサイクル可能ではないフレキシブルなパッケージだったのです。リサイクルを重視するのか、CO2排出量を重視するのか、こうしたバランスはいつも取れるわけではないのです。」

企業にとってのサステナビリティの最適解が、業界やシステム全体にとってのサステナビリティの最適解とは限らない。だからこそ、サーキュラーエコノミーは自社だけではなく他社ともしっかりと対話を重ねながら進めていく必要があるのだ。

サーキュラーエコノミーにおける消費者の役割は?

これまでは企業の立場からサーキュラーエコノミーについての話をしてきたが、逆に消費者の立場からどのようにサーキュラーエコノミーを推進することができるだろうか。Gelard氏はこう話す。

「消費者にも果たすべき役割があります。しかし、個人が全てをリサイクルできるわけではありませんし、ごみも出しています。個人としては政府や製品を通じて作られているシステムのなかで行動するしかないのです。だからこそ、私はそのシステムを作りだしている政府や企業といったアクターと働くことを選択しました。」

「一方で、私は多くの消費者が正しいことをしたいと望んでいると考えています。しかし、それらはいつもできるわけではないですし、どうすればよいかが分からないこともあります。そのため、より多くの教育が必要かもしれません。また、インセンティブを提供することも重要です。企業やマーケッターは何を買ってもらうかという点で消費者の行動に変化をもたらすエキスパートなのですから、廃棄するパッケージをどのように扱うかという点でも同じことをすべきです。」

いくら消費者個人が循環型のライフスタイルを実現しようと思っても、システム全体がリニアに設計されていると、そのなかで廃棄をゼロにするのはなかなか難しいのが現状だ。だからこそ、システム全体の変革にアプローチし、企業は消費者の心を動かすマーケティングといった能力を、モノを買わせるためではなく廃棄をなくすために活用することが大事なのだ。

グローバルに協働を。日本へのメッセージ

最後に、Gelard氏からこれからサーキュラーエコノミーを推進していきたい日本企業に向けたメッセージをいただいた。

「日本や日本企業はグローバル経済の一部であり、自分たちだけで問題を解決することはできません。私からのメッセージは、もしあなたが永続的な解決策を望むのであれば、自らの市場や国を超えて他の組織と協働する必要があるということです。そして、Global Commitmentはその手段であり、あらゆる市場を超えてコレクティブに解決に取り組む手段を提供していると認識してもらえると嬉しいですね。」

取材後記

Gelard氏のお話の中で一貫していたのは、サーキュラーエコノミーの実現には経済のシステム全体を直線型から循環型に移行していく必要があるという点だ。システム全体を変革すると言われると、非常に難易度が高い目標のように聞こえるが、エレン・マッカーサー財団では、New Plastic Economyのようなシステミック・イニシアチブ、そしてGlobal Commitmentといった具体的なツールを使うことで、あらゆるプレイヤーを巻き込んでその実現に取り組んでいる。

そこで鍵を握るのが、企業や業界、国といった垣根を超えたコレクティブな取り組みだ。最後にGelard氏が話してくれたように、ぜひ日本の企業や消費者もその輪に加わり、グローバルなシステムを構成する一員として世界全体のサーキュラーエコノミーへの移行に寄与していきたいと感じた。

【参照サイト】エレン・マッカーサー財団

※本記事は、ハーチ株式会社が運営する「IDEAS FOR GOOD」編集部が2019年11月に実施したインタビュー記事です。

Related posts