イギリスに本拠を置く自動車製造大手ジャガー・ランドローバーはこのほど、使用済自動車や空き缶などの家庭用品からのアルミ廃棄物を高級自動車のアルミニウムにアップサイクルする方法を発表した。

加工性や耐食性に優れ、重量が鉄の3分の1と軽量であるアルミニウムは、繰り返し再生できることから、世界で最も広くリサイクルされている原材料の1つだ。再生アルミは、飲料缶やアルミ箔容器などの日用品や自動車のエンジン部品などに利用されているが、車のボディパーツへの適用は高級車やSUV(スポーツ用多目的車)が中心となっている。これはボディパーツには高い品質が要求されるため、一次アルミニウム(鉱石からつくるバージンアルミニウム)が使用されることが多いが、その製造にコストがかかることなどによる。

今回ジャガー・ランドローバーは、使用済自動車や家庭用品からリサイクルしたアルミニウムを少量の一次アルミニウムと混ぜてプロトタイプを生成し、品質基準を満たしたことを公表した。これは、自動車製造における一次アルミニウムの必要性を減らし、原材料の使用と製造を循環させるクローズド・ループで環境への影響を減らすのに役立つ。また、現在の自動車製造での合金生産におけるCO2排出量を最大26%削減できる可能性を持つ。

このプロジェクトは「REALITY Project」と名付けられ、ジャガー・ランドローバーが掲げる「Destination Zero」ミッションの一環だ。Destination Zero はCO2排出量を削減し、イノベーションを通じて社会をより安全でクリーンな環境をつくることを目標としている。REALITY Projectの予算は200万ポンド(約2億8千万円)で、イノベーション産業を助成する英国政府機関「イノベートUK」が共同出資している。ジャガー・ランドローバーは、英ブルネル大学と共同でアルミニウムのクローズド・ループとリサイクル促進を目指している。

ジャガー・ランドローバー アルミ循環の仕組み (ジャガー・ランドローバープレスリリースより)

2007年以降ジャガー・ランドローバーは、車一台あたりのCO2排出量を50.7%削減しており、脱炭素化に継続的に取り組んでいる。また、2013年9月から2020年3月までに全車種からの約36万トンのスクラップを再生アルミとして使用。2014年には、世界で初めてボディパネルの75%に高強度アルミニウム合金「RC5754」を使用した「ジャガーXE」を開発した実績を持つ。

資源循環を促進し、CO2排出量を削減するこの技術が、自動車産業全体のサーキュラーエコノミー推進に寄与していくことに期待したい。

【プレスリリース】JAGUAR LAND ROVER UPCYCLES ALUMINIUM TO CUT CARBON EMISSIONS BY A QUARTER