新型コロナウイルス流行の影響が続いた2021年。サステナビリティを重視した経済復興策「グリーンリカバリー」と並行して、2050年を目標とした脱炭素化を見据えた気候変動対策としてのサーキュラーエコノミーへの注目度はさらに高まりました。

2021年、皆さんに関心を持って読んでいただいた記事ランキングを通して振り返ります(アクセス数は2021年12月15日現在まで)。記事と一緒にぜひご覧ください。

第3位:循環型ショッピングプラットフォーム「Loop」の日本版ウェブサイトがオープン。事前登録を開始

Loopは、日用品や食品などの容器を回収、洗浄し再利用するショッピングプラットフォーム。2019年にサービス開始し、現在世界約200社と提携してサービスを展開する。日本では2021年に5月に小売り大手イオンの店舗で本格的に取り扱われるようになり、店頭での回収もスタートしました。

Circular Economy Hub 編集長の那須清和さんも早速Loopのサービスを利用してみたようです。「再利用のための手間をできるだけ省くためのUXに配慮されていて、利用者にとって使いやすく設計されていると実感。今後、商品点数の拡大やさらに利用しやすい価格幅の多様化に期待し、新たな文化が定着していくかに注目したい」と感想を話してくれました。

容器包装でのプラスチック削減は、これから大きな潮流として進む脱プラスチックのカギを握ります。Loopのようなプラットフォームをはじめ、容器包装の削減につながる取り組みやサービスがどう広がるかは2022年以降の大きな注目点です。

第2位:サーキュラーエコノミーの実現に向けて理解しておきたい10の課題 

2020年にかけてサーキュラーエコノミーへの注目度が高まり始めたところで、2021年には具体的に各企業のビジネスにどのように組み込んでいくか模索する動きが広がったことで、多くの皆さんに読んでいただけたのではないかと思われます。

筆者のハーチ株式会社代表取締役の加藤佑さんは「リニア型の経済システムの中で、サーキュラーエコノミーにどのようにして競争優位性を持たせられるかは大きな課題。また、『PaaS (Product as a Service)とユーザビリティ』のところでも言及しましたが、実際にサービスを展開しようとすると現場の実務面でさまざまな難しい点が出てくるため、大きな壁になっています」と指摘します。

サーキュラーエコノミーの実装に向けた具体的な動きが出てきたからこそ浮き彫りになった課題をどのように解決に近づけていけるか――。2022年の大きなテーマでもあります。

そして、栄えある2021年の第1位は…

第1位:プラスチック新法案が2022年4月に施行へ。ライフサイクル全般でプラ資源循環促進を目指す

プラスチックごみの削減と再生利用の拡大を目的としたプラスチック資源循環促進法(いわゆる「プラ新法」)。自治体に対して分別回収の努力義務を課すとともに、事業者にはプラ製品の削減が求められます。政府は2022年4月、飲食店や小売店などに対してプラ製スプーンなど12種類の有料化や再利用などの対策を義務づける方針です。

企業でサーキュラーエコノミーに業務上関わる人たちだけでなく、文字通りすべての人の行動に関わることだけに、プラ新法を入り口にサーキュラーエコノミーの必要性と重要性への理解が広がるか注目です。

このほか、2021年の最後に行った編集会議の番外編として、Circular Economy Hub 編集部メンバーが集まって2021年のサーキュラーエコノミー界隈の話題をPodcast「循環対話」で振り返りましたので、ぜひ聞いてみてください。

【音声メディア】Circular Economy Hub Podcast 「循環対話」

さあ、そしていよいよ2022年へ。サーキュラーエコノミーは日本で、世界で、どのように展開するのでしょうか。注目点を5つ、挙げてみました。

2022年のサーキュラーエコノミー5つの注目点とは?

1)サーキュラーエコノミー×脱炭素

気候変動対策としての脱炭素化が世界的に進行する中で、いくつかの国が自国のNDC(国が決定する貢献)達成を含めた国としての気候変動対策にサーキュラーエコノミーの推進を組み込み始めています。2022年にはこうした動きが、他の国々にもさらに広がる可能性があります。

また、気候変動対策として再生可能エネルギーが一段と拡大するにつれて、太陽光発電パネルや風力発電タービンといった再エネ発電機器のサーキュラー化への動きも顕著になってきました。再エネ推進は脱炭素化のカギを握りますが、発電時のCO2排出削減だけではなく、ライフサイクル全体での削減につながっているか注目すべきでしょう。

2)サーキュラーエコノミー×生物多様性

サーキュラーエコノミーの実現が生物多様性の再生にもつながる可能性が論じられ、自然環境を現場とする農林水産業などを中心としたさまざまな取り組みが企業の間で広がった2021年。さらに、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)の自然資本版ともいえるTNFD(自然関連財務情報開示タスクフォース)の枠組み設定に向けた議論も加速していることを一例として、生物多様性におけるグローバルな取り組みも加速。今後こうした動きがさらに広がるのか、 サーキュラーエコノミーがネイチャーポジティブ(生物多様性の保全に留まらず、2030年までに回復軌道に乗せることを重視する考え方)にどのように貢献できるのか――。2022年の新たな注目テーマです。

3)サーキュラーエコノミー×プラスチック

2021年記事ランキングにも登場したプラスチック新法。プラスチックの製造から再利用までのライフサイクルにおける費用負担の問題(誰が、どの主体が、どの部分で発生するコストをどう負担するのか)をはじめ、具体的な運用が始まるとともに生じるであろう課題にどのように対応していくべきか、すべてのステークホルダーによる知恵と協働が試されます。

4)サーキュラーエコノミー×デジタル

サーキュラーエコノミーが経済システムを変革する可能性のある存在として注目されるようになったのは、デジタル化の発展なくしてはありえなかったと考えられます。AIやデジタルツイン、3Dプリンターなど新たなデジタル技術をどうサーキュラーエコノミーに融合していくか。この成否がサーキュラーエコノミーに移行できるかどうかの鍵を握ります。サーキュラーエコノミーの要諦でもある資源利用量の削減や組織の垣根を超えた共創の実現に寄与するツールとして、注目度も重要度もさらに高まることでしょう。

5)サーキュラーエコノミ―×SDGs

SDGsが日本社会に浸透するにつれて、SDGsへの貢献とうたう取り組みが果たして本当にSDGsの解決につながっているのか問い直す機運が高まっています。同じことがサーキュラーエコノミ―についても言えるため、いわゆる「サーキュラーウォッシュ」ではない本質的なサーキュラーエコノミーのあり方であるかどうかが、企業にも地域にも問われるのではないかと思われます。

いかがでしたか?2022年、サーキュラーエコノミーはその概念を知ろうとするWHATのフェーズから、 どのように具体的に社会の中で実装していくかというHOW のフェーズに移行していくと私たちは捉えています。

Circular Economy Hubでは、2022年も国内外のサーキュラーエコノミー関連情報をお届けするとともに、海外を含めた最新動向を皆さんとともに学べる機会を提供していきます。新たにスタートしたPodcast「循環対話」は「サーキュラーエコノミーって何?」というWHATにお応えする場として、さらに読者会員・コミュニティ会員の皆さんにはHOWにお応えする情報や交流の機会をさらに充実させていきますので、ぜひアクセス、ご参加ください。

  • Podcast「循環対話」の最新番組はこちらから
  • Circular Economy Hub 読者会員・コミュニティ会員へのご参加はこちらから