日本経済団体連合会(以下、経団連)はこのほど、「サーキュラー・エコノミーの実現に向けた提言」を発表した。

同提言において、経団連は目指すべき方向性と取り組むべき課題を示すとともに、同提言の公表に至った背景として以下を挙げた。

近年、資源需要が拡大している一方で、資源供給の不安定化への懸念が高まっていること。カーボンニュートラルへの取り組みが進められるなか、資源循環推進の必要性が指摘されていること。EUは2015年に「サーキュラーエコノミーパッケージ」を打ち出し、サーキュラーエコノミーを産業政策として位置付けるなど、海外での動向が活発化していること。環境省は「循環経済工程表」を取りまとめ、経産省は「資源自律経済戦略」策定に向けて検討を開始するなど、日本政府もサーキュラーエコノミーに関する議論を加速させていることなどである。

目指すべき方向性と取り組むべき課題は、下記のとおり。

目指すべき方向性

  1. 資源制約の克服:資源確保を図り、資源制約を克服し、経済安全保障を強化するべき
  2. 環境制約の克服:カーボンニュートラルへの貢献と廃棄物の発生抑制などに加え、資源循環を通じたカーボンニュートラル実現にも取り組むべき
  3. 経済成長と産業競争力の強化:資源循環への取り組みを経済成長や産業競争力強化につなげていくべき

取り組むべき課題

  1. 環境配慮設計の促進:各業種の自主的設計ガイドライン策定に向けた議論を促進する。減量化と耐久性など設計上のトレードオフ解消に向けた新素材・新技術の研究開発を支援する
  2. 再生材の活用・部品リユースの普及促進:再生材を用いた製品の積極的な公共調達などを実施する。再生材の品質に関する規格・基準のあり方を検討する。部品リユース促進に向けたリマニュファクチャリングを支援する
  3. 利用型ビジネスモデルの普及促進:シェアリングなどの利用型ビジネスモデルの環境価値に関する社会的認識を向上させる。行政は、利用型ビジネスモデルのサービスに関する公共調達を促進する
  4. 消費者の行動変容促進:環境価値に対する消費者の啓発と環境教育を促進する。環境価値の評価方法・認証制度・表示制度の検討と環境価値の見える化を促進する
  5. 循環資源の効率的な収集・再資源化の拡大:広域認定制度および再生利用認定制度の周知と、活用促進に向けた制度のあり方を検討する。廃棄物処理法に関する許可・認定の審査を効率化する
  6. 海外における資源循環体制の構築への協力:環境負荷低減の観点から、技術・知見の移転と仕組みづくりへの貢献を通じ、途上国の資源循環体制構築に協力する
  7. 情報流通プラットフォームの構築:動静脈間などでの資源循環関連情報の共有を推進するプラットフォームを構築する
  8. 企業の循環度(サーキュラリティ)などの評価:ISOやEUなどにおける国際的議論と整合性をとり、企業のサーキュラリティやリサイクルおよび熱回収による温室効果ガス削減効果の評価方法を検討する
  9. 企業と投資家・金融機関の建設的対話:政府のサーキュラー・エコノミーに係るサステナブル・ファイナンス促進のための開示・対話ガイダンスの国内普及による、企業と投資家・金融機関の協創関係構築を促進する。ベストプラクティスを国内外に共有・発信する

経団連は、国民各界各層がサーキュラーエコノミー実現の重要性を理解し、行動変容につなげることが重要であるとし、企業はサーキュラーエコノミー移行を持続可能な成長のための機会として積極的に取り組むべきであると強調。サプライチェーンおよびバリューチェーン全体に着目した動静脈産業間・動脈産業の連携強化と官民連携が不可欠であるとして、政府は施策の道筋を早期に示すべきだとの見解を示した。

これまでも、経団連は国内企業を含めた幅広い関係者におけるサーキュラーエコノミーへの理解醸成と取り組みの促進、および官民連携の強化を目指し、環境省や経済産業省などと取り組みを進めてきた。循環経済パートナーシップの創設や注目事例集の公開などが取り組み例として挙げられる。

【参照サイト】サーキュラー・エコノミーの実現に向けた提言
【参照サイト】サーキュラー・エコノミーの実現に向けた提言【概要】
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