環境省・経済産業省・日本経済団体連合会(以下、経団連)は4月19日、「循環経済パートナーシップ(J4CE)2021年度活動報告」を取りまとめた。

2021年3月、環境省・経済産業省・経団連は国内企業を含めた幅広い関係者の循環経済へのさらなる理解醸成と取り組み促進、および官民連携の強化を目的として、J4CEを立ち上げた。2022年4月1日時点で、140社・団体がメンバーとして参加している。

J4CEは2021年9月、「注目事例集発刊・ウェブサイト開設発表式」を開催し、2021年10月から2022年3月まで「官民対話」を実施して、循環経済実現における課題を整理した。J4CEの2021年度活動報告の概要は、以下のとおり。

参加企業の取り組み事例(140件)の概要

  • 3Rなど循環型の取り組みの分類別では、リサイクルの事例が最多
  • 製品ライフサイクル段階別では、廃棄や生産の段階の事例が多数
  • 取り組み対象となる製品・素材別では、プラスチックの事例が最多
  • 連携の対象者別では、異業種間連携の事例が最多

官民対話

循環経済(CE)促進に向けた課題整理を目的として、官民が抱える課題をさまざまな切り口で整理し、認識を共有している

参加企業における循環経済の認識

  • 90%以上の企業が循環経済の促進が社会的要請であると認識し、70%以上の企業が市場拡大や競争力強化につながると認識している
  • 約50%の企業が自社グループまたはサプライチェーンで循環型事業モデルを導入済み。約20%が導入検討中
  • 回答した全企業が、循環経済促進には何らかの課題があると感じている。コスト・制度・技術の3項目について、50%以上の企業が課題ありと回答した
  • コストがかかっている分野
    リサイクル:リサイクル材を使えない理由がある、リサイクル材使用のための技術開発・設備投資・設計変更、リサイクル材の成分や品質の管理が困難、良質なリサイクル材の入手競争・安定供給についての課題、廃棄・焼却の方が安価
    回収:自治体の分別収集とリサイクル業者の不適合、回収輸送コスト、圧縮・梱包設備、デジタル技術の導入(トレーサビリティの確保など)、回収のしくみ作り、消費者が分別しにくい
    その他:法規制対応へのコスト、新事業モデルのためのコスト、デザイン性・機能性優先によるリサイクル性の低下、保存性向上による包装素材の複雑化

循環経済実現にあたっての課題

官民対話における議論や事前アンケートから、J4CE参加企業が「循環経済を実現するにあたっての課題」として捉えている事項を整理した。

制度と規制
  • 課題:動静脈間での規制調和、規制の明確化や環境整備、CEの定義の明確化、資源循環にかかるCO2排出量算定、環境配慮設計の促進策、分別回収・リサイクルの仕組みの変更・構築、リサイクル品の基準・規制の整備、国際規制との調和や簡素化
  • J4CEにおける対応案:【意見交換】CEの意義や目標、アプローチの整理・提案、CE型事業構築に求められる規則や基準の議論、【情報提供・情報交換】国内外企業のCE関連の取り組み事例や目標の共有、先進的取り組みを実施している日本企業とのパネルディスカッション
コスト・投資
  • 課題:将来像の提示、投資や助成を受けるための評価の仕組み、情報開示への意識向上、人材育成、気候変動や生物多様性とCEの関係整理、コスト負担の考え方の整理・インセンティブ、再生材・代替材・回収のコスト負担、回収スキーム構築に向けたインセンティブ、静脈産業の強化・育成
  • J4CEにおける対応案:【意見交換】開示・投資ガイダンスに基づく投資家や企業の対話の場の設定、【情報提供】CE・カーボンニュートラル、生物多様性保全への貢献や人権尊重も組み合わせた情報開示・価値訴求の事例や考え方、【情報発信】カーボンニュートラルに貢献する日本企業のCE取り組み事例の収集・海外発信、政府による設備補助・実証・技術開発支援・人材育成の紹介
消費者・普及啓発、事業モデル・技術
  • 課題:企業や製品の評価やブランド化、CEや資源循環の意義共有、製品・サービスの環境価値の訴求方法、分別への消費者意識の機運醸成、事業モデルのインキュベーション・確立、関係者間の連携推進、DX推進、再生材市場の整備、生産工程や技術開発における取り組み、環境配慮設計、再生材の活用、効率的な回収スキーム構築・連携先の確保、リサイクル技術、設計・回収・選別を組み合わせたリサイクルの高度化
  • J4CEにおける対応案:【情報交換・情報発信】CEに関する消費者向けの情報開示の事例紹介・広報資料の作成、企業からの連携・課題解決事例の紹介、ビジネスマッチングを目的としたネットワーキング、【意見交換】CEについて消費者や自治体も交えた意見交換、【情報提供】政府による補助事業・実証・技術開発支援の紹介、J4CEサイトでの官民補助・支援事業の紹介ページ作成・更新

2022年度も官民連携のもと、J4CEは「ビジネス・マッチングを目的としたイベント」「テーマ別の講演やディスカッション」「取り組み事例の収集と国内外への情報発信」などの活動を継続していく意向だ。こうした活動を通じて、企業が自社の事業戦略として資源循環に取り組む動きを加速させると同時に、日本企業の循環経済に関する技術や取り組みを世界に発信していきたいとしている。参加企業の140件の取り組み事例を詳細にまとめた同活動報告が、循環経済へのさらなる理解醸成と取り組みを促進し、官民連携強化に貢献していくことが期待される。

【プレスリリース】「循環経済パートナーシップ(J4CE(ジェイフォース))2021年度活動報告」を取りまとめました
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