環境省と経済産業省、農林水産省と文部科学省は2021年1月、持続可能なバイオプラスチックの導入を目指した「バイオプラスチック導入ロードマップ」を合同で策定した。

2019年5月に策定された「プラスチック資源循環戦略※」に基づいて作成された同ロードマップは、バイオプラスチックに関係する幅広い主体(バイオプラスチック製造事業者、製品メーカー・ブランドオーナーなどの利用事業者、小売り・サービス事業者など)に向けて、持続可能なバイオプラスチックの導入方針と導入に向けた国の施策を示している。同ロードマップの目標および提示項目は、以下のとおりだ。

目標

「プラスチック資源循環戦略」の実現に向け、”3R+Renewable”の基本原則に基づき、より持続可能性が高いバイオプラスチックに転換する

提示項目

  • バイオプラスチック導入に関わる主体に向けた、導入の基本方針プラスチック製品領域ごとの導入に適したバイオプラスチック
  • 関係主体のバイオプラスチック導入に向けた取り組みを強力に後押しすることを目的とした、政府の施策

提示項目で掲げられた「導入の基本方針」「プラスチック製品領域ごとの導入に適したバイオプラスチック」「政府の施策」は、下記である。

導入の基本方針

原料、供給、コスト、使用時の機能、使用後の流れ環境・社会的側面についての基本方針が示された。

  • 原料:原料の多様化を図るため、国内バイオマス(資源作物、廃食用油、パルプなどのセルロース系の糖など)の原料利用の幅を拡大する(食料競合などの持続可能性に配慮)
  • 供給:国内外からの供給拡大を進めていくが、供給増に向けて国内企業による製造も拡大する
  • コスト:関係主体の連携・協働によりコストの最適化を目指す。また、環境価値に関する購買意欲を利用者に働きかけるなど、環境価値を加味した利用を促進する
  • 使用時の機能:汎用性の高いバイオプラスチックや耐久性、靱性などに優れた高機能バイオプラスチックの開発・導入を目指しつつ、製品側の性能を柔軟に検討し、幅広い製品群への対応を促進する
  • 使用後の流れ:使用後の流れ(リサイクル、堆肥化・バイオガス化に伴う分解、熱回収など)との調和性が高いバイオプラスチックを導入する
  • 環境・社会的側面:ライフサイクル全体で持続可能性(温室効果ガス、土地利用変化、生物多様性、労働、ガバナンス、食料競合など)が確認されているものを使用する

プラスチック製品領域ごとの導入に適したバイオプラスチック

使用後の環境への影響や温室効果ガス排出抑制効果といった観点に基づいて、製品領域ごとに導入に適したバイオプラスチックを3種類に分け、留意事項とともに提示した。

製品領域は、以下の12項目が示された。「」内は分類、()内は細目を示す。
「容器包装など/コンテナ類」(プラスチック製買物袋)、「電気・電子機器/電線・ケーブル/機械など」、「家庭・オフィスなどで使用される日用品/衣類履物/家具/玩具など」(可燃ごみ用収集袋、堆肥化・バイオガス化などに用いる生ごみ用収集袋)、「建材」、「輸送」、「農林・水産」(農業用マルチフィルム、肥料に用いる被覆材、漁具など水産用生産資材)

導入に適したバイオプラスチックの種類は、下記のとおりだ。上記12項目に適した類型を提示している。

  • 類型1:バイオマスプラスチック(非生分解性)のうち、リサイクルに悪影響がない以下①② のいずれかに該当するもの。 ①バイオマス由来の汎用プラスチック(バイオPE、バイオPET、バイオPPなど)②高機能プラスチックなどを代替する同種のバイオマスプラスチック(PA→バイオPAなど)
  • 類型2:バイオマスプラスチック(非生分解性)
  • 類型3:生分解性プラスチック

政府の施策

導入の基本方針を踏まえ、関係主体と協調・協働しつつ、国は以下の施策を展開する。施策は、「利用促進」「消費者への訴求など」「研究開発など」「フォローアップなど」の4項目に分類された。

利用促進

  • バイオプラ導入目標集などの策定、ビジネスマッチングの促進(CLOMA、プラスチック・スマート)
  • グリーン購入法特定調達品目における判断基準など、バイオ由来製品に関する需要喚起策の検討、地方公共団体による率先調達の推進
  • 公正・公平なリサイクルの仕組みの検討
  • 海洋生分解性機能の評価手法の国際標準化に向けた検討

消費者への訴求など

  • 持続可能性を考慮した認証・表示の仕組みの検討
  • バイオプラ製品の率先利用および正しい理解の訴求

研究開発など

  • 高機能化、低コスト化、原料の多様化などに向けた研究・開発・実証事業への支援
  • 製造設備導入への支援
  • ESG金融を通じた企業の研究開発や製造設備導入に関する資金調達円滑化の支援

フォローアップなど

  • バイオプラスチック導入量(用途・素材別)、国際動向、技術動向の調査・フォローアップ

同ロードマップ策定に伴い、「バイオプラスチック導入目標集」と「バイオプラスチック導入事例集」も発表された。「バイオプラスチック導入目標集」には、同ロードマップの方針に基づいた、企業60社以上のバイオプラスチック導入に関する目標が掲載された。「バイオプラスチック導入事例集」では、容器包装(日用品と食品)・プラスチック製買物袋・農業用マルチフィルムに関する5事例が紹介されている。

今後、環境省・経済産業省・農林水産省・文部科学省は、同ロードマップを国内外に発信していくとともに、導入に向けた取り組みを積極的に展開し、気候変動問題と海洋プラスチックごみ問題の解決や、プラスチック資源循環の実現を目指していく。

※:「プラスチック資源循環戦略」は、プラスチックの資源循環を総合的に推進するための重点戦略の一つとして策定された。このなかで、環境・エシカル的側面、生分解性プラスチックの分解機能の評価を通じた適切な発揮場面(堆肥化やバイオガス化など)やリサイクル調和性などを整理し、用途や素材などにきめ細かく対応した「バイオプラスチック導入ロードマップ」を策定することが示された。2030年までにバイオマスプラスチックを約200万トン導入することが目標として掲げられている。

【プレスリリース】バイオプラスチック導入ロードマップ
【参照サイト】バイオプラスチック導入ロードマップ
【参照サイト】「プラスチック資源循環戦略」の策定について
【参照サイト】 バイオプラスチック導入目標集
【参照サイト】 バイオプラスチック導入事例集