サトーホールディングス株式会社(サトーHD)と株式会社ナカダイホールディングス(ナカダイHD)はこのほど、資源循環を目的としたトレーサビリティシステム構築および実用化に向けて協業を開始した。

廃棄物の回収から処理、再生材生産までの一連の工程を可視化し、高度な廃棄物処理・リサイクルにつなげ、国産資源としての再生材の安定供給と品質確保を目指す。

協業を開始した背景は、多くの廃棄物処理現場で廃棄物が出る時期・量が不安定かつ不定量で、効率的な回収や処理の計画が立てにくいという課題があることだ。供給と品質両面の不安が、企業や社会のサーキュラーエコノミー移行を阻む要因となっていると両社はみている。

第一弾として、2023年8月下旬から11月末まで、ナカダイHD傘下の株式会社ナカダイが廃棄物処理事業を展開するリサイクル工場などで2つのシステムの有効性検証を実施する。2つの検証事項は、「廃棄物回収・保管などのスマート化」と「ナカダイのリサイクル工場における処理~再生材生産までの工程可視化」だ。

廃棄物回収・保管などのスマート化では、ナカダイに廃棄物処理を委託する企業の廃棄物置き場にカメラを設置し、AIを使用して集積状況を可視化することで、最適な配車・回収計画での活用を目指す。ナカダイのリサイクル工場における処理~再生材生産までの工程可視化では、回収した廃棄物にIDを付与し、ナカダイが所有するリサイクル工場への入荷から処理、再生材生産までの各工程とひも付けて記録。処理・生産工程のトレーサビリティに必要な情報を収集することを目指す。

検証では、リサイクル率や廃棄物処理の工程で発生する温室効果ガス排出量などの情報も可視化し、関係者に共有する。リサイクルしやすい製品開発や企業のESG情報、デジタルプロダクトパスポートなどの情報開示において貢献したい考えだ。

資源循環のフロー(出典:サトーホールディングス株式会社、株式会社ナカダイホールディングス)

両社は今後、ナカダイHDが九州電力株式会社と共同設立したサーキュラーパーク九州株式会社でも検証を実施する。サーキュラーパーク九州では、資源の調達から廃棄までのすべての情報と工程の可視化、システム化を確立していく計画だ。

廃棄物処理の専業事業者ナカダイHDは、10年以上リサイクル率99%を達成し、循環事業促進に向けて取り組みを進めている。サトーHDは今回の協働において、バーコードやRFIDなどの自動認識技術を用いたソリューションにより、食品や医薬品のトレーサビリティ構築支援における経験を廃棄物処理の分野に活用する。両社は互いの専門性を組み合わせ、廃棄物の処理・循環における業界の課題を解決する仕組みを共同で創出していきたいとしている。

ナカダイHD 代表取締役 中台澄之氏は、2023年10月に総理大臣官邸で開催されたサーキュラーエコノミーに関する車座対話に出席し、「いま使っているものは、すべて将来の資源である」と強調。わたしたちは計画的にものを捨てることはないとし、「廃棄物を安定的かつ定量的にリサイクル材として販売し続けなくては、リサイクル産業は成り立たない。資源循環を国内で高めていくには、品質も求められる。一定の品質があれば、日本の高い技術で国産資源として再生できる。廃棄物処理業が資源循環業に移行していくことが大切だ」との考えを示した。今回の両社の協働をはじめとする「国内の資源循環促進」に向けた取り組みが、今後活発化していくことが期待される。

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