豪ロイヤルメルボルン工科大学はこのほど、使用済み食用油と農業廃棄物をバイオディーゼルに安価にリサイクルするスポンジを開発した。
食用油を由来とするバイオディーゼル燃料は現在、日本でもバスやごみ収集車などに広く利用されている。しかし、従来の食用油のディーゼルへの転換技術はエネルギーを大量に消費する場合が多く、使用される触媒にカリウムなどの金属が含まれるため、焼却炉の損傷が懸念されることもある。
今回、同大学が開発した新触媒はこれらの課題を解決する可能性がある。さまざまな活性成分を含むミクロンサイズのセラミックスポンジで構成され、厚さがヒトの髪の毛の100分の1という極薄の同触媒は、以下のように機能する。まず、原料の分子が大きな細孔を通ってスポンジに入り、そこで最初の化学反応を起こす。次に分子は小さな細孔に入って、2回目の反応を起こす。同触媒は、一つの触媒の粒子内で複数の化学反応を順番に実行できることが大きな特徴で、ヒトの細胞内の酵素が複雑な化学反応を調整する方法を模して設計された。
ロイヤルメルボルン工科大学が開発した新触媒(出典:ロイヤルメルボルン工科大学)
希少金属を使用しない同触媒は安価に製造でき、バイオディーゼル燃料製造にあたって、同触媒と大きな容器、緩やかな加熱と攪拌のみを必要とすることから、低技術と低コストを実現する。また、同触媒は非常に効率的で、最大50%の汚染物質を含む原料からバイオディーゼルを製造できる。さらに、食品廃棄物やマイクロプラスチック、古いタイヤなどのごみを、医薬品や肥料、および生分解性容器包装といった多くの製品を製造する際に使用される高価値の前駆物質(ある物質が生成する前の段階の物質)に変換する製造プロセスの生産性を倍増させる。
研究者らは、特に発展途上国などにおいて同触媒が重要になるとみている。発展途上国ではディーゼルが家庭用発電機に電力を供給するための主要燃料であり、農家が農業廃棄物から直接バイオディーゼルを生産できるようになれば、エネルギー不足と炭素排出という問題に対処できるようになるためだ。
同触媒はバイオディーゼル生産にいますぐ使用できるが、さらに開発を進めると、農林業廃棄物や古いゴムタイヤおよび藻類からジェット燃料を生産する際にも使用できる。研究チームの次のステップは、触媒の製造規模を拡大して3Dプリント技術を使って商品化を加速することだ。また、化学反応の範囲を拡大して、人工光合成や燃料電池などの最先端技術のための光と電気の活性化も行っていきたいとしている。
【プレスリリース】Making biodiesel from dirty old cooking oil just got way easier
【参照サイト】バイオディーゼル燃料の製造方法と利用の現状