H&M Foundationはこのほど、2022年度Global Change Award受賞アイデアを発表した。

Global Change AwardはH&M Foundationが2015年に開始したイノベーション・アワードで、ファッション業界のSDGs達成とプラネット・ポジティブへの変革を目的としている。同アワードは、グローバル・コモンズ(地球規模で人類が共有する資産)である土地・水・海・気候・生物多様性の一つまたは複数に対する解決策となる革新的アイデアを発掘し、支援することを目指している。

2022年度の受賞アイデアと概要について、H&Mは以下のように発表した。

  • BioPuff® by saltyco(英国):植物から作られたプラネット・ポジティブなグースダウンの代替素材。環境再生型農法を採用し、損傷した土地を修復する在来植物を再び植えることで、CO2を再度地中に閉じ込める。これらの植物を使用したBioPuff®は、合成繊維や動物由来のものと同様の特性を持つ
  • BIORESTORE(スウェーデン):古着や使用済み衣類を新品同様に復元する特許申請中の洗濯方法。酵素とミネラルを使用する同方法は、水とセルロース繊維に反応し、生化学的なプロセスを実現する。衣類の長寿命化に寄与し、古着の寄付やリサイクルよりも優れた選択肢である
  • CottonAce by Wadhwani AI(インド):小規模綿花農家のためのAI搭載アプリ。農薬使用量の削減・収穫量の増加により、農家の収入を増加させる。綿花農家が害虫捕獲の仕掛けを設置し、捕獲の様子を写真に撮ってアプリにアップロードすると、AIが写真を解析して使用するべき農薬の種類と時期を即座に指示する。実証実験において、農薬使用量の約25%削減・農薬使用に対する農家の意識向上・農家の収入増加を実現した
  • Re:elastan(中国):耐久性が懸念されているエラスタンとポリエステルの混紡繊維をリサイクルする工程。リサイクル工程において水を一切使用せず、バージンエラスタンの生産量を削減できる
  • Rubi(米国):温室効果ガスから作られたプラネット・ポジティブなレーヨンとリヨセル。大気中の炭素をバイオリアクターに閉じ込め、安定化した酵素が炭素を微小なポリマーに変化させる。同ポリマーは、木材パルプから製造するセルロース系繊維に使われているものとまったく同じ原料で、木を伐採せずに製造できる

H&M Foundationは、毎年5組の受賞アイデアを選定して100万ユーロ(約1億2000万円)の助成金を授与し、1年間のGCAインパクト・アクセレレーター・プログラムに招待しており、上記5組の受賞アイデアも同様の待遇を受ける。

同プログラムは、H&M Foundation・アクセンチュア・スウェーデン王立工科大学(KTH)・The Mills(※)が提供している。同プログラムの目的は、事業・技術・投資家・イノベーションの準備・業界へのアクセスを通じて、受賞アイデアの迅速な産業レベルへの拡大支援を目的としている。H&M FoundationとH&Mグループは受賞アイデアに対して特許を取得せず、受賞者は希望する企業やブランドと提携できる。今回の受賞アイデアが、賞金および研修プログラムを通して取り組みを進め、ファッション業界のサステナビリティ向上とサーキュラーエコノミー移行に貢献していくことが期待される。

※ The Mills:香港に本拠を置く不動産開発事業のナンフォングループが展開するプロジェクト

【プレスリリース】第6回Global Change Award受賞アイデア発表!H&M Foundation、サステナブルなファッション業界に向けた5つのイノベーションに、総額1億2,000万円相当の助成金を授与
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*冒頭の画像は、第6回Global Change Awardの受賞アイデア(出典:H&M)